知的財産ニュース 微細粉塵(ミセモンジ)問題は、微細粉塵測定から!

2019年4月24日
出所: 韓国特許庁

微細粉塵測定技術関連特許出願、10年間で12倍増加!

2019年3月、微細粉塵(注1)を社会的災害に指定する「災難及び安全管理基本法」改正案が国会で可決するほど、微細粉塵の危険性は日増しに大きくなっており、微細粉塵に対する国民の関心と懸念も高まっている。こうした状況の中で時空間的制限なく微細粉塵を測定できる微細粉塵測定技術関連特許出願が大幅に増加している。

特許庁によると、微細粉塵測定技術関連特許出願(注2)の件数は、2009年の10件から2018年は129件と、10年間で約1,200%増加したことが判明した。特許庁に出願された同じ期間の特許出願件数が年間で平均約17万件程度に維持されている点や、外国企業の微細粉塵測定技術関連国内出願が計7件(注3)であることを勘案すれば、微細粉塵に対する国民と国内業界の関心の変化を十分うかがうことができる。

微細粉塵測定技術関連特許出願の大幅な増加は、国民の関心と懸念、政府の微細粉塵関連政策と市場の拡大に起因しているとみられる。2013年10月、世界保健機関(WHO)による微細粉塵の1級発がん物質指定に伴い、微細粉塵予報が本格的に実施されている。また、2014年1月には、中国北京の微細粉塵濃度が993㎍/㎥を記録(注4)するとともに、韓国でも200㎍/㎥に近い測定値を記録し、天気予報のように微細粉塵濃度を確認することが国民の間で日常となっている。こうした状況から、微細粉塵測定技術関連特許出願が大きく増加したとみられる。

冒頭で説明した微細粉塵の危険性と時空間的といった微細粉塵濃度の大きな変動性などにより、微細粉塵測定技術関連特許出願は幾つの特徴的な傾向をみせる。

第一に、微細粉塵測定技術関連特許出願のうち、小型化関連出願は2013年まで年間で平均4件程度に過ぎなかったが、2014年を起点に2015年からは年間で平均20件以上に増加した。これは携帯用の微細粉塵測定器の市場が拡大し、多様な製品に応用するためのモジュール化の必要性が大きくなっていることに起因する。微細粉塵測定方式は、(1)光散乱方式、(2)β線吸収方式(注5)、(3)重量濃度測定方式などに区分されるが、ここ5年間の微細粉塵測定方式別出願の割合をみてみると、光散乱方式の出願割合が50%と、β線吸収方式(8%)と重量濃度方式(2%)に比べて圧倒的であった。

光散乱方式は、浮遊粒子に光源を照射した後、散乱光を検出して粒子の直径および個数を測定する方式であり、フィルタ捕集による重量濃度およびβ線吸収方式に比べて正確度は落ちるが、別途の質量測定またはフィルタ交換が必要ではないため、リアルタイムでの測定および小型化に有利というメリットがある。

第二に、微細粉塵測定技術を他の技術分野または多様な製品に適用した微細粉塵測定-応用技術の特許出願が10年前は年間で5件程度であったが、2018年に76件と、大幅に増加した。例えば、最近一般的に使用されている空気清浄機とエアコン、窓および空調設備制御などに微細粉塵測定技術が必須になりつつあり、温室管理(暖房および光量制御)、衣服ケアのホームクリーニング機(空気噴射制御)、スマートマスク(マスク各部の作動制御)、生物学的実験装置(微細粉塵露出実験装置制御)、スマート街路灯(情報および光量制御)など、多様な分野に拡大・適用されている。

第三に、出願人別にみると、2014年には中小企業、個人、学校、出損研究所が10件程度とほぼ変わらない水準であったが、2018年は中小企業と個人の特許出願がそれぞれ54件と37件であり顕著な増加ぶり(全体で70%を占める)をみせた。中でも個人の出願が2017年の14件から2018年は38件と約3倍増加し、微細粉塵に対する一般国民の関心が高まっていることがうかがえる。

特許庁計測分析審査チーム長は、「政府の微細粉塵関連政策推進と関連市場の拡大により、微細粉塵測定技術に対する特許出願は持続的に増加すると見込まれ、これまでは測定の正確度向上と小型化技術に対する特許出願が主であったが、これからは医療、バイオ、農食品、家電などに特化した微細粉塵測定技術出願が急増すると予想される」と述べた。

一方、特許庁では、政府革新の一環として産業界の研究開発戦略の策定と産業技術発展の支援に向け、国内外の特許出願動向および登録動向を定期的に分析・提供している。

(注1)産業活動(工場、発電、運送、建設、家庭など)から誘発される有害化学物質(硫酸塩、硝酸塩、炭素および金属化合物など)を含む直径10㎛以下(PM10)の粒子。特に直径2.5㎛以下の粒子は、別称、微小粒子状物質(PM2.5)という。発生源と成分、大きさで一般の埃や黄砂とは区別される。

(注2)単純な埃(花粉・煙)、一般的な粒子測定は除外。微細粉塵測定技術関連特許は、微細粉塵測定技術が主な特許(主分類がG01N)と、副の特許(副分類がG01N)に区分される。以降、主な特許(主分類がG01N)は別称「微細粉塵測定」といい、副の特許(副分類がG01N)は別称「微細粉塵測定‐応用」という。

(注3)外国企業の国内出願件数が僅かであるため、統計資料の統計値に反映されていない。

(注4)世界保健機関(WHO)の勧告基準25㎍/㎥の約40倍に達する数値である。

(注5)重量濃度およびβ線吸収方式は、インパクターやサイクロンを利用して10㎛以上の粒子を先に分離した後、10㎛以下のPM2.5をフィルタで捕集し、重量変化またはβ線変化を測定し微細粉塵濃度を算出する方式

ジェトロ・ソウル事務所知的財産チーム

ジェトロ・ソウル事務所 知的財産チームは、韓国の知的財産に関する各種研究、情報の収集・分析・提供、関係者に対する助言や相談、広報啓発活動、取り締まりの支援などを行っています。各種問い合わせ、相談、訪問をご希望の方はご連絡ください。
担当者:大塚、柳(ユ)、李(イ)、半田
E-mail:kos-jetroipr@jetro.go.jp
Tel :+82-2-3210-0195