知的財産ニュース 日本の素材・部品企業、韓国で「特許分割」で権利を強化

2019年9月29日
出所: 電子新聞

韓国企業は「IP R&D 」の対応が必要

日本の素材・部品企業が韓国市場において、「特許分割」の戦略を駆使するなど、権利行使の極大化を図っていることが分かった。素材部品の自立化を進めている韓国企業は、知的財産研究開発(IP R&D)の観点で、対応を強化しなければならないと指摘している。

9月29日、大韓弁理士会によると、日本の素材・部品企業が韓国において、分割、審査請求の遅延などの出願戦略を駆使し、産業主導権を強化していることが分かった。

このような結果は、弁理士会が8月に発足した、「素材部品基盤技術の国産化に向けた源泉特許対策特別委員会」の分析で明らかになった。特別委員会は、日本の輸出規制品である「フッ化ポリイミド」、「フォトレジスト」、「フッ化水素」に対する両国主要企業の特許を分析した。

ポリイミド製造会社の旭化成は2011年以降、日韓両国で特許を出願した。この期間における韓国出願件数は19件で、日本出願件数の15件より多かった。日本特許の1件を複数に分割して出願した。日本では組成物として特許を登録している一方、韓国では出願の範囲に「ポリイミドフィルムを含むディスプレイ」などを明示するなど、権利範囲も細分化した。

韓国企業が、他の組成物を使い特許侵害を回避しようとしても、前駆体を利用したポリイミド製造方法、ディスプレイ装置に付着されているポリイミドフィルムを剥離する方法などを細分化し、出願、侵害の余地を残している。

源泉技術を保有している三菱は、2011年以後、自国と同様に、韓国での特許出願を大幅に増やした。2000年代には3件に過ぎなかった関連特許の出願件数が、2011年以後には17件に増加した。同じ期間、日本では26件を出願していた。組成物を先に登録して、用途・製品別特許を追加的に出願した。

特別委員会は、三菱が韓国での審査請求を最大限に遅延し、請求範囲を慎重に選択していると把握している。

フォトレジスト部門では、信越が2015年以後に、日本と同じ水準の60件余りの特許を韓国に出願した。フォトレジストの組成物に含まれている様々な構造、構成が対象である。フォトレジストに添加する安定剤物質の置換基を変更したり、下層膜の構成材料を添加した。

JSRも2015年から3年間、約10件の特許を出願した。

特別委員会は、日本企業のEUVフォトレジストの特許出願が、他の品目に比べて活発に行われていないのは、ノウハウ、営業秘密の目的が強いためだと診断した。

ステラケミファなど、フッ化水素製造業者の登録特許は、大半が存続満了で消滅していることが分かった。残っている特許は、組成物、工法に関する特許がほとんどである。特許による技術制約、紛争の可能性が最も低い分野で、韓国企業の独自生産、販売が最も容易な分野でもある。

ただ、高純度フッ化水素を含む組成物、半導体工程の適用においては、特許権が存在しているため、特許回避が必要だと指摘した。

特許出願件数においても、韓国は劣っている。フッ化ポリイミドの場合、自国出願に対比する海外出願の割合が、韓国は40%にとどまっている一方、日本は53%と集計された。海外出願国家の数も韓国は2.4ヵ国で、日本は3.6ヵ国である。

韓国化学研究院(38件)、KAIST(12件)、延世大産学研(11件)など、韓国内の出損研究所などが保有しているフッ化ポリイミドに関する特許112件の中、日本で登録されている技術は1件もなかった。

これは、技術の水準が高くないか、または海外出願に対する認識が欠けていることを意味する。

フォトレジストの韓国特許は日本が64%を占めている反面、韓国は27%に過ぎない。

素材部品の自立化に先立ち、IP R&D戦略の樹立が緊急であると指摘している。

フッ化ポリイミド分野においては、韓国企業が組成物の特許を回避できたとしても、最終生産過程で用途・製品特許を侵害する恐れがある。R&Dと実際の適用段階における、需要企業と素材部品企業間の協力による回避戦略の樹立が必要である。

EUV用フォトレジストは、開発の段階から日本企業の特許を分析し、置換基、添加剤の候補を減らしていくのが効果的である。

特別委員会小委員長は「日本の輸出規制品目においては、日本特許の競争力が韓国より優位にあるのは事実である」としつつ、「日本は様々な出願戦略で、特許を武器に韓国企業の侵入を防ぐと予想している」と述べた。

小委員長は「先進企業の源泉技術の空白を把握し、改良技術を権利化すると同時に、海外出願件数も増やさなければならない」とし、「源泉はもちろん、周辺特許を考慮した侵害分析回避の設計など、IP R&Dの観点からアプローチする必要がある」と強調した。

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