知的財産ニュース 日韓素材部品設備の戦争、「特許」が勝敗を分ける

2019年8月30日
出所: 電子新聞

日韓素材・部品・設備戦争で、特許戦略が勝敗を分ける重要変数として浮上した。主力産業におけるコア技術の自立化の過程で、特許戦略なしには特許紛争に巻き込まれ、投資成果を上げにくいという分析である。企業の生涯周期別の特許対応策を立て、大胆に投資すべきだという指摘である。

特許庁、電子新聞が8月30日ソウルCOEXで開催した「再来した特許戦争:グローバル貿易紛争時代、知財保護戦略」カンファレンスに参加した専門家は、特許観点の技術開発システムの定着を強調した。

特許観点のR&D・事業化に主力

韓国技術取引社会首席副会長は特別講演で、韓国を対象にした日本の輸出規制品目であるフッ化水素を例に挙げて、特許観点の研究開発(R&D)、事業化戦略の構築を訴えた。

副会長によると、日本は1989年以後30年間、年平均で約180件のフッ化水素関連特許を出願した。累積特許出願件数は約40万件で、韓国を遥かに上回る。フッ化水素の精製、フッ素系化合物関連技術における日本の出願件数も韓国の約2倍である。出願人別にみても、日本人が世界の46%を占めている一方、韓国は8%である。

副会長は「日本のフッ化水素の特許に関する技術障壁が高い」としつつ「日本は主要国家でのパテントファミリーも十分確保していると判断されており、他の国での生産も難しい」と診断した。

彼は「世界のフッ化水素の特許のうち、韓国のシェアは10%程度である。韓国が保有している特許技術を基盤に自主のR&D投資を確保したり、米国など海外の先頭企業との特許技術ライセンスを通じて、日本の技術を代替するのが効果的である」と分析した。

また、「特許戦略と技術開発事業の連携活用のために、技術開発特許LAPコンサルティングを事前、過程、事後に適用しなければならない。政府出損研究機関など技術開発機関と政府技術・研究管理機関は、このような役割を遂行できる強力なシステムを整えるべきだ」と主張した。

これを後押しするためには、段階別対応システムの構築が求められる。弁理士などの専門家が課題の企画段階から研究範囲、技術完成度、需要成熟度、競争環境などの分析に参加しなければならない。研究遂行段階では、技術分析、性能実験、耐久性、レシピ、保護範囲などに対する諮問、対応が必要である。課題終了段階では、研究成果の分析、権利保護および設定諮問、請求項設定とPCT出願戦略といった権利保護諮問が連携しなければならない。

特許劣勢の克服対策の構築

WIPSの専門委員は、日本の輸出規制品目のもう一つであるフォトレジストに関する日韓両国の特許競争力を分析した。分析結果によると、韓国に登録されている日本の関連特許は4,028件でシェアは61%に上る一方、日本内の韓国出願登録件数は468件に過ぎない。

同専門委員は「素材自立化の過程で特許回避、紛争の発生可能性が高いため相当期間は対応に困難があるかもしれない。特許劣勢の状況を克服するためには代替輸入源の発掘、買収合併(M&A)、優秀技術の特許権者の迎え入れなどの対応策を多角化し、ギャップを縮める必要がある」と述べた。

基調講演者のTOP ENGINEERING常務は支社の特許紛争の対応事例を紹介し、中堅企業における特許戦略構築の必要性を強調した。

同常務は「2002年にディスペンサー設備の国産化に成功したが、日本企業から数回、特許侵害警告状を受けた。当時は会社に特許専担組織や戦略が整えられていなかった。国内営業が萎縮し一部の海外事業を諦めることになった。当時の特許紛争が初期の会社の成長を阻害する要因となった」と特許の重要性を強調した。

そして「その後、特許専担組織、戦略構築などを強化して組織文化を変えた。2010年ガラスカッティングシステムを国産化する時、日本企業から特許侵害警告を受けたが、事前に立てていたシナリオのとおり対応して紛争を解決した」と紹介した。

「事前に紛争の可能性を予想した結果に応じて、問題を解決することができた。経験によると、特許対応文化が定着するには10年以上がかかるため、長い期間をかけて投資して対応する必要がある」とアドバイスした。

イベントを共同主催した特許庁産業財産保護協力局長は「韓国企業の知財権紛争リスクが拡大しているのが、海外の事例で確認されている。権利保護に向けた企業の紛争対応能力を強化するために努力しなければならない」と述べた。

  • 本記事は、電子新聞インターネット社からの許諾を得て翻訳・掲載しています。

ジェトロ・ソウル事務所知的財産チーム

ジェトロ・ソウル事務所 知的財産チームは、韓国の知的財産に関する各種研究、情報の収集・分析・提供、関係者に対する助言や相談、広報啓発活動、取り締まりの支援などを行っています。各種問い合わせ、相談、訪問をご希望の方はご連絡ください。
担当者:大塚、柳(ユ)、李(イ)、半田
E-mail:kos-jetroipr@jetro.go.jp
Tel :+82-2-3210-0195