知的財産ニュース (具滋烈国家知識財産委員会共同委員長寄稿)知的財産、揺れない国家に向かって進むための大黒柱

2019年9月1日
出所: 電子新聞

日本による輸出規制に関するニュースが連日話題となっている。表面的には「韓国に対する厳格な輸出管理」を主張しつつ、半導体工程に使われる主要素材3つに対する輸出を統制することに加え、戦略物資の輸出時に手続きを簡素化するホワイト国家(ホワイトリスト)から韓国を除外することを決定した。

この決定の基底には、規制対象であるフォトレジスト、 ポリイミドフィルム、フッ化水素の主な特許と技術を、日本が先取りしているというプライドがあるという意見がある。最近の報道によると、韓国、米国、日本、欧州で各素材に関して出願された特許のうち、フォトレジストは65.1%、ポリイミドフィルムは55.3%、フッ化水素は33%を日本が保有している。一方、韓国はそれぞれ、9.1%、38.4%、5%に過ぎないが、こんな状況を日本がすでに把握していたということである。韓国経済で大きな割合を占めている半導体産業においても、中核技術および特許などの知的財産の確保を怠けていたという骨身にしみる反省とともに、今後の国の発展戦略に関しての悩みが必要な時点である。

国家知識財産委員会をはじめとする様々な関係機関の努力のおかげで、知的財産の重要性への認識は広がっている。過去4年間、国家知識財産委員会の民間委員長を務めて最も強く思ったものの1つは、今まで韓国での知的財産に対する認識と実行には乖離があり、政府の政策推進にも知的財産に対する考慮が欠けているということだ。

知的財産が重要だというのは漠然と分かっているが、韓国では今も「後に罰金が課せられるといっても一旦模倣するのが得」という慣行も残っている。知的財産の価値および保護に対する認識をさらに向上させ、現場に定着させるための努力が必要である。また、技術開発(R&D)に多く投資しているだけに、単純に定量の成果を出すのではなく、知的財産とR&Dの連係による戦略的なアプローチも必要な状況である。

上述した日本の半導体素材に対する対韓輸出規制と、最近の米中貿易紛争などの事例をみると、知的財産は特定の個人と企業を超え国家間の競争をめぐる、重要なアジェンダとして浮上していることが分かる。急変するグローバル的条件と保護貿易主義が広がる中、知的財産は通商兵器となっており、今後もこのような流れは人工知能(AI)など、次世代の中核技術関連の知的財産の先取りをめぐってさらに強くなると見込まれる。

これから韓国は主要R&D事業を進める際に、特許情報分析を基盤に効果的成果を生み出し、未来の重要源泉技術と知的財産を競争国より先取りするために努力しなければならない。また、産業・経済全般にわたり、知的財産保護を強化するための制度の見直しとともに、研究者、企業、一般国民を対象に知的財産への認識向上および現場拡散のための政府の役割を強化する必要がある。このように、政府部処、企業などの多様な主体が政策と事業を進める時、知的財産の創出・活用・保護の観点から戦略的なアプローチが必要と思われる。

丁度9月4日は「第2回 知識財産の日」である。この日は、現存最古の金属活字印刷本である「直指心体要節」がユネスコの世界記録遺産に登録されたことを記念し、2018年に法定記念日として指定された。今は、直指心体要節に含まれている先祖の精神と、1970年~1980年代以後、産業化を成し遂げた挑戦精神を見習い、英知を集め「知的財産強国」としての韓国の未来を開いていく時である。困難な状況を克服して前に進む韓国にとって、知的財産は重要な役割を担っている。

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