知的財産ニュース 特許信頼性の向上に向けて、韓国・欧州・日本・中国の特許審判院長が一堂に

2019年6月3日
出所: 韓国特許庁

「第1回韓国・欧州・日本・中国の特許審判院長会議」開催

特許庁は、6月4日(火曜)、「第1回韓国・欧州・日本・中国の特許審判院長会議」を開催する。翌日の6月5日(水曜)には、参加国の審判制度について、一般人が参加可能な「特許審判国際セミナー」も開催される。

※(韓国)バク・ソンジュン特許審判院長、(欧州)Carl Josefsson欧州特許審判院長、(日本)Reeko Imamura特許庁審判部長、(中国)Ge Shu専利覆審無効審判部長

今回の特許審判院長会議は、「特許信頼性の向上」に向けた先進4ヵ国の特許審判院の審判政策を共有する場であり、韓国の特許審判院においては、イノベーション課題および今後の展望について模索する機会になると期待される。

会議に出席する主要国は、審理の充実化および審判処理期間の短縮(審判人材増員)など、特許信頼性の向上に向けて取り組んでいる。

日本は、審理において、当事者の意見提示機会の拡大および無効審判の審決の充実化など、審理の充実化に向けて取り組んでおり、中国は、特許再審査および無効審判における各手続きのモニタリングおよび管理の強化を通じて、外部顧客のフィードバックに注目するなど、審判品質の改善に取り組んでいる。

欧州は、審判待機物量を減らすための5ヵ年計画(※)を策定し、2019年まで23人の増員、2020年までさらに16人の技術職審判人材の増員を推進している。また、審理手続きの改善および事件管理の強化を通じて効率性の向上に取り組んでいる。

※2023年まで待機物量を、7,000件以下に減らすことを目標に掲げている。

特許を保有するベンチャー・スタートアップが、技術イノベーション能力を基盤にし、金融支援の投資などを受けて成長基盤を確保するためには、特許信頼性の向上が必須であるため、今回の会議は、国際基準(Global Standard)に見合う、特許信頼性の向上につながる契機になると期待される。

特許審判は、年間で約1万件を処理する知財権専門の行政審判であり、口述審理、証拠調査、当事者尋問など、司法的手続きを準用して実質的な1審の役割を担っている。

しかし、現在韓国は、特許審判長に対する審判官の割合が1:10と、欧州、日本・米国などの大半が1:2であることに比べて高くなっており、実質的な3人合意制審判を運営することが難しく、大量の事件処理のため口述審理など、審理の充実化の確保に悩んでいる。

※特許審判官1人あたりの処理件数(2017年):(韓国)72件、(日本)33件、(米国)48件、(欧州)16件

※※(2018年)特実無効審判の審決件数対比、口述審理開催率は約27%

また、韓国における特許無効率は、45.6%(2018年)であり、主要国に比べて高く、特許信頼性に対する懸念もある。

※(特許無効率)米国:25.2%(2018年)、日本:21%(2017年)

このような状況を受けて、韓国は、今回の会議で、特許無効率の現状および無効事由を克服するための請求項の訂正制度の改善などについて発表を行う予定である。

特許審判院は、この他にも特許性の判断の客観性・予測可能性の向上に向けた判断基準の確立および、より充実した合意制の具現に向けて、審判部の組織構成についても変化を模索している。

一方、米国、日本などにおいては、特許性の判断基準の変化により、無効率が変化した事例があるため、確認が必要であり、韓国においても特許環境が先進国並みに大きく変化(※)しており、現状に合った特許性の判断基準について、主要国と共有して、比較および研究を行う必要がある。

※(1970年代半ば~1980年代)外国人の特許出願の占有率70%以上、特許制度の近代化 → (現在)内国人の特許出願の占有率70%以上、特許創出・保護環境の構築および強化

今回の「第1回韓国・欧州・日本・中国の特許審判院長会議」は、韓国の特許審判の未来のために、非常に意味深いといえる。

特許審判院長は、「特許信頼性の向上は、短期間の達成は難しいが、イノベーション成長のためには、必ず達成しなければならない課題である。世界的な特許政策の流れに歩調を合わせて、審理の充実化を図るとともに、審判処理期間を短縮することで特許信頼性の向上に向けて引き続き取り組んでいく」と述べた。

ジェトロ・ソウル事務所知的財産チーム

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