知的財産ニュース 特許庁、2019年下半期特許技術賞授賞式開催

2019年12月19日
出所: 韓国特許庁

大洲電子材料株式会社「リチウムイオン二次電池用負極材料に関する発明」で特許技術賞の世宗大王賞受賞

特許庁が発明者および創作者の士気高揚と全国的な発明雰囲気の拡散に向けて毎年開催している「特許技術賞(※)授賞式」が、12月19日(木曜)午前11時、ソウルのSCコンベンションで開催された。

今回の授賞式では7部門の受賞作のなかで、4部門の受賞作が素材・部品・設備に関する発明であり、2部門の受賞作が第四次産業革命に関する発明だったため注目を集めた。

※特許技術賞は、世宗大王賞、忠武公賞、池錫永賞(2点)、洪大容賞(2点)、丁若鏞賞(デザイン)で構成される

世宗大王賞には、大洲電子材料株式会社の専務理事らが発明した「リチウムイオン二次電池用負極材料用のシリコン複合酸化物および製造方法」が選定された。

該当特許は、リチウムイオン二次電池用のシリコン負極材に関するもので、シリコン素材は現在主に使われているグラファイト素材より容量が大きく、次世代リチウムイオン二次電池用負極材料として有望である。

シリコン素材を二次電池用負極材料にする場合、体積変化が大きいという特性により、電池の容量維持率が著しく減少する問題があったが、該当特許を通じてその問題を解決し、初期充電・放電効率を向上させるなど、高容量のリチウムイオン二次電池を確保することが可能になっている。

大洲電子材料株式会社は該当特許を通じて、2018年に世界ではじめてシリコン系の負極材料を電気自動車用パウチセルに適用し、電気自動車の市場が持続的に成長していることを考えると、該当特許の活用および市場シェアが拡大すると予想される。

忠武公賞には韓国電子通信研究院の研究員らが発明した「無線通信システムにおけるパワーセービング方法」が選定された。

該当特許は、Wi-Fiネットワークでのチャンネルの使用効率性、電力消費効率性、速度向上に向けた通信方法および制御措置に関するもので、2013年に国際標準特許(IEEE 802.11ac(※))に採択され、Wi-Fi認証が必要な製品においては、他の技術で代替できないくらいの中核特許であると言える。

※IEEE 802.11ac : 5 GHz 帯で、VHT(Very High Throughput)転送を行う無線LANを提供するために、米国電気電子学会(IEEE)が策定した標準規格

池錫永賞には、Material Science株式会社の代表らが発明した「有機化合物およびそれを含む有機発光ダイオード」が選定された。

ディスプレイ産業の中核素材であるOLED材料に関する発明として、当該特許における有機化合物は低結晶性、高耐熱性、優秀な化学的安定性を持ち、有機発光ダイオードは駆動電圧が低く、発光効率に優れている。

最近、中国のローカル企業と年間50億ウォン規模のライセンス契約を締結し、現在は韓国の大手企業との共同研究を進めており、韓国製OLED素材のシェア拡大にも大きく貢献すると展望している。

もう一つの池錫永賞には、国立科学捜査研究院のデジタル分析課長らが発明した「顔比較による個人識別方法」が選定された。

該当特許は、出入統制装置やスマートフォンなどで活用している人工知能基盤の顔認識技術に関するもので、瞳孔領域(視線)のピクセル変化量を計算し、写真や仮面などの出力物または造形物について判別できなかった従来の個人識別システムの問題を解決し、顔識別結果も99.63%で、高い精度を誇るグーグルのFaceNetと同等な精度を出した。

該当特許の優秀な機能と国有特許(※)という利点を活用すれば、現在韓国の顔認識市場シェアの大半を占めている日本、中国などの海外技術を短時間で代替できると展望している。

※国有特許:国家公務員が職務過程の際、開発した発明で国有特許の実施を希望する者は、比較的に低廉な特許使用料(または、無償)で利用可能

洪大容賞には、株式会社Hitemsの研究所長らが発明した「省エネ型高音用の無粉塵断熱材および製造方法」が選定された。

該当特許は韓国のコア産業である半導体やディスプレイの熱処理工程設備に活用可能な断熱材に関するもので、高温に粉塵が発生しないため作業者の安全を確保し、製作が容易で単価が低いという特徴がある。

もう一つの洪大容賞は、DS GLOBAL株式会社の代表が発明した「フォトプリンター用エンジン」が選定された。

該当特許は、モバイルフォトプリンター用のエンジンに関するもので、エンジンの厚さを12.9mm以下(競合他社18.9mm程度)にするなど、世界最高レベルの超スリムエンジンで競争力が強く、印刷品質も高いため日本企業が独占しているプリンター市場を韓国産製品に代えられると見通している。

デザイン分野の丁若鏞賞には、国立樹木園の研究官らがデザインした「気象観測機器」が選定された。 当デザインは、どんぐりをモチーフにした自然に優しいイメージを強調し、温度や湿度はもちろん、浮遊粒子状物質(SPM: 10μm以下の粒子)、微小粒子状物質(PM2.5)、二酸化炭素など、気候および気象データを蓄積でき、空気浄化、物質循環などに関する研究にも活用価値が高いと予想される。

当日、特許技術賞授賞式に参加した特許庁次長は「今回の特許技術賞授賞式は韓国の対日輸入依存度の高い素材・部品・設備と第四次産業革命分野で、特許に基づいた韓国強小企業の技術力とイノベーションにおける能力を確認できる場となった」と述べた。

さらに、「特許庁は中小企業が知財権分析に基づき、素材・部品・設備分野の主要品目に対する自社技術を開発し、強力な特許を創出できるよう集中支援していく方針である」と明らかにした。

2019年下半期特許技術賞は7月から10月まで計145件が出品され、平均21対1という高い競争率となった。

特許技術賞の受賞者には賞金が与えられ、受賞した発明には特許庁の発明奨励事業(※)支援と中小ベンチャー企業部が主管する創業カスタマイズ型事業化支援事業を選定する際、優遇される。また、受賞した発明の事業化、マーケティングもサポートするため、特許技術賞の受賞マークを提供する予定である。

※発明奨励事業:特許技術評価支援、知的財産活用戦略支援、特許技術取引コンサルティング、優秀製品の優先購買推奨など

ジェトロ・ソウル事務所知的財産チーム

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