知的財産ニュース 標準特許の競争力強化策を発表

2019年12月19日
出所: 韓国特許庁

標準特許能力を強化し、標準技術基盤の未来市場を確保する

・「標準技術開発」と「標準特許戦略」に3年以上かけて一括支援を実施、第四次産業革命における中核技術の標準特許の早期確保を支援
・標準特許専門担当の特許審査チーム運営、標準特許ライセンスのガイドライン作成
・産業界に標準特許の情報提供を拡大、産・学・研・官の標準特許に対する協力体系構築

政府は12月13日(金曜)16時、ソウルのザ・プラザホテルで「第25回国家知識財産委員会(主宰:民間委員長)」を開催し、「標準特許の競争力強化策」を審議・確定した。

最近、日本の対韓輸出規制や米-中貿易紛争など、知的財産権を武器とした技術覇権戦争により、韓国産業の高い海外依存度を改善するための戦略確立が必要となっている。

なお、超連結(hyper-connected)を特徴とする第四次産業革命が到来し、互換性の確保に向けた標準技術の適用範囲が通信・放送・メディアなどICT産業から全産業分野へ拡大することにより、標準特許の影響力が強くなっている。

そのため、標準特許使用(※)による知財権貿易収支の赤字を克服し、未来産業・市場を確保するための標準特許能力の強化が急がれている。

※韓国企業は海外移動通信の標準特許でのリーディングカンパニーの3社だけで、年間20億ドル以上のロイヤルティーを支払っている。

【IoT技術の発達による移動通信の標準技術の拡散】 1

※スマートフォン市場(年間で約500兆ウォン)→ IoT市場(2022年で約1,400兆ウォン展望)に拡散

政府はこうした保護貿易強化と標準技術の拡散が同時に行われるという転換期を迎え、技術の海外依存度を改善する一方、標準技術基盤の未来市場を確保するため、同案を設けた。

「標準特許能力の強化策」の細部内容は次のとおりである。

1.標準特許創出への支援戦略を高度化する

標準特許の専門企業を育成するため、標準特許創出の有望機関※にR&D、標準化活動、標準特許の戦略を一括的に3年以上かけて集中的に支援する共同事業を新規で推進する。

※(案)標準特許または、標準専門家(議長団または標準活動5年以上の経験)保有

まず2020年には、韓国の科学技術情報通信部・産業通商資源部(国家技術標準院)など、関係部処と協業し、5件前後の新規課題を共同で支援する計画である。

【標準特許の有望機関に対する部処共同事業支援体系(案)】 2

標準技術関連の特許に投資する標準特許投資ファンドを造成※し、証券会社、インテレクチュアルディスカバリー(ID)社のような投資機関を対象に標準特許投資説明会を開催し、標準特許の有望機関に対する投資を強化する。

※IP出願支援ファンド(40億ウォン)、海外IP 収益化ファンド(80億ウォン)を活用し造成

新産業分野の中核になる標準特許を確保するため、標準特許確保の有望技術を見出す戦略マップを構築(※)し、R&D企画に活用させ、市場支配力の強い主要事実標準化機構(3GPP、IEEE(※※))で議論している第四次産業革命の中核技術(次世代通信、IoT、自立走行など)を選別し優遇することで、それに対する支援を強化する。

※(2018)IoTなど2件 → (2019)ロボットなど2件 → (2022)10件の分野まで累積構築
※※3GPP:移動通信(LTE、5G)標準制定機構、IEEE:電気電子(Wi-Fiなど)標準制定機構

なお、論文や研究ノートなどの非定型(Free-type)文書を提出しても出願日が認められるよう、明細書の 形式的要件に対する規制を緩和し、韓国企業が標準特許の出願日を早期に確保できるよう支援する。

2.標準特許紛争への対応能力を向上させる

標準特許に対する正確な権利を付与するため、標準技術の専担特許チーム※を運営し、標準化機構に届出された特許を審査する際、標準文献検索の義務化、協議・共同審査の実施により審査品質を向上させる。

※複数の特許チームに分散されている標準特許の多数出願技術を6の専担特許チームに統合

標準特許の低い透明性によるコスト上昇を解消するため、標準化機構に届出された特許が標準規格に合致する標準特許であるかを評価する制度の導入に関する研究も推進する。

※ 標準化機構は届出された特許を標準特許にするが、当該の標準特許が標準規格に合致するかどうかに対する判断がなされてはいない。

標準技術を使う韓国企業の交渉力を向上させるため、標準特許ライセンス交渉に関するガイドライン(※)を設けて配布し、紛争情報ポータルを改善し、標準特許紛争の情報提供とともに標準特許の特性を考慮したカスタマイズ型紛争対応支援(※※)を推進する。

※標準特許の不当な行使の防止、交渉方法、適正なロイヤルティーの水準などライセンス交渉過程で知っておくべき情報を含む
※※ FRAND違反確認、標準特許必須性の検証、類似の標準特許ロイヤルティーの水準に対する調査など

3.標準特許のインフラを強化する

産業界を対象に、韓国中小企業の進出が活発な分野において、標準特許プールのライセンシング情報、標準化機構に届出された特許の状態情報(登録・拒絶・存続期限)などの標準特許情報を拡大して提供し、標準化と標準特許に関心のある企業・機関を含む産・学・研・官の標準特許の協力体系を構築し、標準特許確保戦略の拡散および専門人材の養成を推進する。

標準技術R&Dと標準特許確保戦略との連携を強化するための制度改善(※)(国家標準基本法第7条改正)を進める一方、情報通信技術協会と連携し、標準専門家をマッチングさせ、標準能力が不足している期間と標準専門家が協力することができるよう、支援していく計画である。

※国家標準基本計画に標準特許確保に関する事項を追加するよう規定

特許庁長は、「知的財産を武器として繰り広げられる未来技術の覇権戦争の危機を乗り越えるためには、特許視点からの地道な対応戦略の確立が非常に重要である」と強調し、「この案が滞りなく履行され、中核の標準特許を戦略的に創出し、標準特許紛争の対応能力を向上させ、知的財産の貿易収支における黒字国として位置づけられるよう努力する」と述べた。

ジェトロ・ソウル事務所知的財産チーム

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