知的財産ニュース 知的財産市場を活性化させ、イノベーション成長を主導する!

2019年1月29日
出所: 韓国特許庁

韓国特許庁は1月29日(火曜)、知的財産(IP)市場を活性化させることで、イノベーション成長を主導する「2019年業務計画」を発表した。

今回の業務計画は、最近の知的財産政策環境に対する診断に基づき、今年の主要政策の推進戦略と実行計画を提示している。

知的財産政策環境と推進方向

最近、知的財産をめぐる米中貿易紛争などにより、知的財産が市場支配力とグローバルバリューチェーンを掌握すると話題になっている。

主要先進国は自国の知的財産の保護を徹底し、これを武器に世界市場を先取りするために総力を挙げている。米国は、知的財産権保護が本質である米中貿易紛争により、世界技術の覇権を掌握するために注力しており、中国の習近平主席は2018年に知的財産権保護制度が一帯一路の共同建設推進の要だと強調した。日本は2018年、未来の環境変化に対応し、「価値デザイン社会」を目指す「知的財産戦略ビジョン」を発表した。

一方、韓国は量を中心とする特許戦略とR&Dへの投資増加に伴い、世界4位の特許出願大国を維持しているが、源泉・標準特許が不足して知的財産権の貿易赤字が続くなど、知的財産が生む経済的価値の創出が不十分であるのが現状である。

また、中小企業は優秀な特許を保有していても事業化する資金調達が難しい上、技術奪取も頻繁に行われるため、特許ベースの成長が難しい。

知的財産は韓国市場でその価値を認められず、韓国企業がグローバル市場で創造的なアイデアを知的財産として確保・保護する戦略の基盤が弱い。  

韓国は「輸出主導型国」にもかかわらず、世界市場を先取りする要である海外特許の出願件数は、貿易規模に比べて少ないのが現状である。特に、中小企業は海外特許の競争力が弱い。

すでに活性化している先進国市場と急成長する新興国市場に対応する、差別化されて体系的な知的財産戦略が必要な時点である。

このような診断に基づき、2019年業務計画は「知的財産市場を活性化させ、イノベーション成長を主導する」というビジョンのもとに、強い知的財産の創出に伴う産業イノベーションの主導、知的財産が適正な価格で活用される市場づくり、海外知的財産の先取りに伴うグローバル市場の開拓、未来に備えた知的財産基盤づくりの4つの分野で12の課題を重点的に推進する。

重点的な推進課題

戦略1 強い知的財産の創出に伴う産業イノベーションを主導する

  1. 特許を基盤とする産業競争力の強化支援

    約4億件に達する特許ビッグデータに対する深層分析を行うことで予測できる未来の産業トレンドと、特許庁の技術専門性を活用し、次世代のディスプレイ・バッテリーなど、浮上する産業に関する「特許ビッグデータベースの産業別イノベーション戦略」を立てる。

    中小企業と大学・公共研の優秀な特許創出力を強化するために、特許に関連付けた研究開発戦略(IP-R&D)の支援を拡大する。

    • 中小企業に共通する中核技術に対するIP-R&Dを新規推進(25の課題)
    • 有望な中小企業にIP-R&DとR&Dを共同支援(2018年22の課題→2019年80の課題)
    • 企業の需要に基づく大学・公共研のIP-R&Dを支援(2018年8の課題→2019年20の課題)
    • 実験室の創業技術に対するIP-R&Dを新規推進(10の課題)
  2. 高品質の審査・審判サービスの提供

    第四次産業革命の分野で、迅速な特許確保を支援するために、専門審査組織の新設を推進し、優先審査を拡大する。同時に超融合的技術の特性を反映した3人協議審査も実施する。

    知財権紛争を早期解決する審判‐調停連携制度の導入、人材増員・審判手続の効率化などを推進するとともに、2019年7月から特許審判の国選代理人制度を施行し、社会的・経済的弱者も支援する。

    ※審判事件を産業財産権紛争調停委員会に付託し、3カ月以内に処理

  3. 知的財産を基盤とする起業・成長の支援

    起業準備者のアイデアを事業化につなげるために、アイデアの具体化・権利化、事業アイテムの導出までを支援(IP礎(ティディムドル)事業930件)し、スタートアップが知的財産競争力を備えて安定的に成長できるよう、コンサルティング(IP翼(ナレ)事業453社)と特許バウチャー事業(101社)も実施する。

    IPサービス企業を育成するために、「IP収益化プロジェクト」の母胎ファンド(fund of funds)への投資を持続的に拡大する。

戦略2 知的財産が適正な価格で活用される市場を造成する

  1. 公正な知的財産市場を確立するための保護システムの先進化

    知的財産が市場でその価値を認められる環境を整えるために、今年7月から施行される特許・営業秘密侵害に対する懲罰的損害賠償制度を定着させ、これを商標法・デザイン保護法などへ拡大する。

    これとともに、特許侵害に対する損害賠償額が現実化できるよう、侵害者が得た利益の全額を権利者に返還するようにし、立証責任を侵害者が負う制度も推進する。

    特許・デザイン、営業秘密分野の特別司法警察を発足(2019年3月)させることで、捜査人材・専門組織の確保を推進し、検察・警察の協力を得て捜査の専門性を高める。

  2. 知的財産金融・取引の活性化

    革新的企業の金融へのアクセスを高めるために、IP担保貸出を取り扱う銀行を拡大し、さまざまな優遇商品の発売を支援する。

    債券、知財権、その他の動産など、有無形資産を包括的担保として活用する一括担保制度の導入を金融委員会とともに推進し、それに伴うIP担保と価値評価のインフラを革新する。

    IP担保貸出の利用後、返済を行わない場合、担保IPを買い取って収益化する回収支援システム(政府・銀行の共同出損)を導入することで、金融業界の回収リスクを減らし、IP担保貸出への参加を拡大する。

    優秀な知的財産の創出・活用のために、金融委員会と共同で2022年までの4年間、5,000億ウォン規模のIP投資ファンドを造成する。

  3. 大学・公共研の保有特許の活用促進

    大学・公共研が自ら技術移転・事業化の財源を持続的に拡充できるように、特許ポートフォリオ支援事業を資金回収‐再投資方式の「ギャップファンド型」に発展させる。

    高品質の特許創出のために、お粗末な特許明細書作成の主な原因である低い代理人費用問題を解決できるように、適正な代理人費用のガイドラインを普及する。

戦略3 海外知的財産を先取りすることで、グローバル市場を開拓する

  1. 韓国企業に友好的な環境づくりに向けた国際協力の推進

    今年6月、韓国で開催される五庁(IP5、Intellectual Property 5)特許庁長官会合を機に、AI技術の特許行政への適用、先行技術の提出簡素化などのグローバル懸案について主要国と議論する。

    現地に輸出する企業に友好的な知的財産保護環境を造成するために、今年の下半期に韓国で開催される韓国‐アセアン特許庁長官会合と連携して知的財産分野の新南方政策を展開する。

    有力新興国とされるインド・ブラジルと特許審査協力を推進し、サウジアラビア・UAEには韓国型特許行政システムの輸出を拡大して知的財産行政の韓流を拡散する。

    サウジアラビアにはUAEに続き、今年中に韓国特許庁の専門家を多数派遣して特許審査行政システムと情報システムを構築し、知的財産法体系を整備するなど、過去最大規模で行政韓流を輸出する予定である。一方、途上国には「審査ODA」と無償コンサルティング支援を行う。

    南北経済協力に関しても、知的財産権分野で韓国企業の需要をいち早く政策に反映できるように、政策研究、専門家フォーラムなどをはじめ、南北の知財権交流を行い、協力インフラを整える。

  2. 優秀な技術の海外特許競争力の確保

    中小・ベンチャー企業の海外特許の確保を支援するために、IP出願支援ファンドとIP創出・保護ファンドを造成する。

    知的財産力を備えた有望な輸出中小企業のうち、「グローバルIPスター企業」を選定し、3年間知的財産総合サービスを支援する。
    ※グローバルIPスター企業数:(2018年)510社→(2019年)570社

  3. 輸出企業の知的財産の保護・支援の拡大

    中国、ASEANなどの海外で韓流に便乗する外資系流通企業などが増えており、これによる被害を韓国の輸出企業が受けている。この被害防止のために、現地で実態調査、コンサルティングを行い、取り締まりを要請するなどして、K-ブランドの保護基盤を固める。

    また、模倣品の輸出関門である香港に海外知識財産センター(IP-DESK)を設置し、輸出企業の海外知的財産紛争への支援を拡大する。

戦略4 未来に備え、知的財産基盤を造成する

  1. 創造・融合型人材育成インフラの拡充

    第四次産業革命時代に応える次世代革新家を育成するために、体験・深化型の発明教育を担当する「発明体験教育館」を今年慶北地域に設置し、2022年までに全国へ拡大する。

    弁理士の業務領域を第四次産業革命など新たな分野へと拡大し、大韓弁理士会の自律性と責任を強化するために、民間の専門家、弁理士会などと共に「弁理士制度の発展方策」を講じる。

  2. 第四次産業革命に備えた知的財産法制度の改善

    ビッグデータ・3Dプリンティングなど、第四次産業革命の新技術を知的財産として適切に保護するために、「第四次産業革命に備えた特許の保護強化策」を設け、特許要件判断基準の保護システムも整備する。

    国民の目線に合わせた商標制度を運営するために、商標権の保護範囲を絵文字やアイコンなどのデジタル商品までに拡大する。

  3. 国民が体感できる特許行政サービスの提供

    人工知能など最新の知能情報技術を特許行政に導入するために、今年から次世代の特許情報システムの構築に着手し、AIベースの機械翻訳、商標のイメージ検索、チャットボットによる相談支援システムを優先的に適用する。

    特許顧客サービスの利便性を向上させるために、国民向けの電子出願サービスをウェブベースのユーザーフレンドリー型システムに再構築する。

期待効果

知的財産市場を活性化させるための政策を展開すると、強い知的財産を創出・活用することで、赤字が続く知的財産権の貿易収支が2022年には黒字に転じる。

知的財産ベースの資金調達市場が活性化し、IP金融の規模が2022年までに2兆ウォンに拡大する。

韓国企業がグローバル市場を先取りするための要である海外特許の出願は、2022年に10万件までに増加すると見込まれる。

特許庁長は、「知的財産に対する国民の関心がこれまで以上に高まった今、知的財産が適正価格で評価される時代を切り開き、知的財産エコシステムが好循環する構造を定着させるべきだ」とし、「今年を『大韓民国の知的財産市場に花を咲かせる初年度』にし、これまで韓国が構築してきた知的財産インフラを基に、実効性のある知的財産市場を大韓民国に形成し、知的財産強国としての競争力を強める」と強調した。

ジェトロ・ソウル事務所知的財産チーム

ジェトロ・ソウル事務所 知的財産チームは、韓国の知的財産に関する各種研究、情報の収集・分析・提供、関係者に対する助言や相談、広報啓発活動、取り締まりの支援などを行っています。各種問い合わせ、相談、訪問をご希望の方はご連絡ください。
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