知的財産ニュース 高くもっと高く!半導体メモリに吹く高層化ブーム

2019年6月7日
出所: 韓国特許庁

3次元(3D)半導体メモリ技術関連の特許出願が活発

最近、半導体メモリの価格下落と、米中の貿易摩擦激化により、半導体産業の不確実性が増大する中、この状況を打開するための方策として、3Dメモリ関連の技術開発が活発に行われており、関連する特許出願も増加している。

特許庁によると、3Dメモリ関連の出願は、2013年以前には、年間150件以下に過ぎなかったが、2014年を起点に急激に増加し、毎年約300件の出願が行われている。

3Dメモリ技術は、半導体の素子を複数の層に積層することで、単位面積あたりにメモリ容量を最大化させる半導体の製造工法であり、代表的な製品には、不揮発性メモリ分野での3D NAND型フラッシュメモリ、揮発性メモリ分野での広帯域幅メモリ(HBM(注1))がある。

3D NAND型フラッシュメモリは、既存の2D半導体の製造で脚光を浴びた微細加工技術が限界を迎えると、これを克服するために2次元に配列された半導体の素子を垂直に積層した半導体メモリであり、現在96層の3D NAND型フラッシュメモリが量産されている。

このような3D NAND型フラッシュメモリは、大容量・高速処理が求められる人工知能(AI)、仮想現実、ビッグデータ分野で広く使用されているため市場規模が急速に拡大しており、グローバル市場の規模は、2016年の371億ドルから2021年には500億ドル以上に、急激に成長すると見込まれる。

直近5年間の出願人別の出願動向をみると、内国人の出願が78.6%、外国人の出願が21.4%を占めているが、これはサムスン電子とSKハイニックスが半導体メモリ分野で、後発企業との技術の超格差を維持するために、関連技術の開発を持続してきた結果と分析される。

広帯域幅メモリは、DRAMを複数の層に積層した後、シリコン(Si)貫通電極(TSV(注2))を利用して相互連結した多層の半導体メモリであり、電力の消耗が低く、データ処理容量が高い他、GPUなどのシステム半導体との連結が容易であるというメリットから、次世代の半導体技術として注目を集めている。

3D NAND型フラッシュメモリと同様に、広帯域幅メモリ分野においても韓国企業が特許出願を主導しているが、直近5年間で広帯域幅メモリの出願の113件のうち、81.4%(92件)をサムスン電子とSKハイニックスで出願しており、外国の出願企業には、TSMC、インテル、マイクロン・テクノロジなどがある。

特許庁電子部品審査チーム長は、「半導体メモリの需要減少に伴う価格下落により、半導体危機論が台頭しているが、今後、第四次産業革命が本格化すれば、人工知能(AI)、ビッグデータ、IoT(モノのインターネット)などに必要な高性能メモリの需要増加は、必然的であると予想される」とし、「競争国の猛烈な追撃を追い返し、半導体メモリの世界1位を堅持するためには、3D半導体などの研究開発を持続していく必要がある」と述べた。

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