知的財産ニュース 特許庁、BJC社の技術を奪取した現代自動車に是正勧告

2018年12月20日
出所: 韓国特許庁

アイデア奪取禁止法改正の適用、第1号事件

韓国特許庁は微生物を利用した悪臭除去専門業者であるBJC社の微生物に関するアイデアを奪取した現代自動車に不正競争防止および営業秘密保護に関する法律(以下、不正競争防止法)に基づき、「BJCの被害を賠償し、BJCの微生物剤と実験結果を盗用して開発した微生物剤の生産・使用中止および廃棄」を勧告したと12月20日に発表した。

*微生物剤:微生物を使用する目的に合わせて配合し、加工して作るもの

現代自動車はBJCの微生物剤および悪臭低減実験の結果をBJCの同意なしに慶北大学に伝達して新しい微生物剤を開発させ、特許庁はそれを現代自動車と慶北大学の共同特許として登録した行為および開発された新しい微生物剤を塗装ブースで使う行為について、アイデア奪取に当たると判断した。 

特許庁は、悪臭低減実験に使われたBJCの微生物剤について、BJCが現代自動車の工場に適合するように注文して製造した製品(OE++、FM++)で、市中で販売される製品(OE,FM)とは微生物の構成や用途が全く違うもので、BJCがこれら製品を再び薄めて培養し、現代自動車の塗装工場の循環水環境での適合性実験を経た後、現代自動車に供給したものであるため、BJCの悪臭低減に関する経験やノウハウが培われた成果だと判断した。

BJCは、現代自動車の塗装工場で悪臭が漂う原因は、揮発性有機化合物(VOC)だけでなく、他の物質にもあるということを実験で証明した。しかし、現代自動車はこの実験結果をBJCの許可を得ず、慶北大学に渡すことで、現代自動車と慶北大学は悪臭の原因特定にかかる時間や費用を軽減し、試行錯誤を減らすことができた。

また、慶北大学が開発した微生物剤を構成する8種のVOC分解微生物には現代自動車が無断で慶北大学に渡したBJCの微生物5種が含まれており、産学研究報告書にはBJCの微生物のうち、分解性能が良い微生物を追加して微生物剤を製造するという内容も盛り込まれているため、慶北大学がBJCの微生物を利用して開発したことが確認できた。

現代自動車は産学研究により、新しい微生物剤が開発されたことを受け、2004年からBJCと結んできた微生物剤に関する取引関係を2015年5月に打ち切った。また、同事案をめぐり、BJCが問題を提起して紛争を始めると、BJCが納品した化学製品に関する契約も2017年6月に解除した。  

この過程を経て開発された微生物剤はBJCが供給した微生物剤を代替し、現代自動車との納品契約終了の決め手となった。現代自動車はBJCの微生物剤をBJCの利益を損ねる方式で用いた。

この事件は、改正不正競争防止法の施行後、技術・アイデア奪取に対して特許庁が専門性を活用して結論を出した最初の是正勧告で、優越的な地位を利用した技術・アイデア奪取の慣行に警鐘を鳴らし、類似事例の再発防止にも寄与すると見込まれる。

特許庁は企業間の健全な取引関係まで萎縮することを防止するために、「アイデア奪取を防止するためのガイドライン」を発刊・配布し、アイデア奪取の申告件数と業界の状況を踏まえて調査人数も拡大する予定である。

特許庁長は、「技術力を備えた強小企業を保護し育成するために、特許庁が専門性を発揮して技術・アイデア奪取に対して法執行をより一層強化していきたい」と述べた。

アイデア奪取、店舗の内装などの外観混同、製品デザインの盗用などの不正競争行為による被害を受けた場合は、特許庁産業財産調査課(042-481-8527)、又は韓国知識財産保護院不正競争調査チーム(02-2183-5837)までお問い合わせを。

ジェトロ・ソウル事務所知的財産チーム

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