知的財産ニュース 懲罰的損害賠償制度の導入など、知的財産保護の強化に向けた制度の整備

2018年12月10日
出所: 韓国特許庁

不正競争防止法および特許法一部改正案が国会を通過

2019年6月頃から他人の特許権および営業秘密を故意に侵害する場合、損害額の最大3倍まで賠償責任を負う懲罰的損害賠償制度が導入される。韓国特許庁は、特許・営業秘密侵害に対する懲罰的損害賠償制度、罰則強化など、知的財産保護の強化を主な内容とする「特許法」および「不正競争防止及び営業秘密保護に関する法律」の一部改正案が12月7日(金曜)、国会本会議を通過したと発表した。

特許庁で分析した資料によると、韓国の特許侵害訴訟における損害賠償額の中間値(注1)は6,000万ウォン(1997~2017)と、米国の損害賠償額の中間値(注2)65.7億ウォン(1997~2016)に比べて、はるかに少ないことが分かった。この数値は、両国の経済規模を考慮しても9分の1に過ぎず、これまで特許侵害による被害を受けた企業への十分な補償が行われなかったことを裏付ける。   

市場では知的財産について正当な価格を支払うより、侵害して利益を上げ、いざ侵害が摘発されれば、賠償額を支払う方が良いという認識が広がっている。被害企業も訴訟で勝っても、損害賠償額が十分でないため、裁判をあきらめるケースが増える等、知的財産権侵害の悪循環が繰り返される状況であった。

これを受け、第20代国会ではこのような歪んだ市場の秩序を正し、知的財産の保護基盤を強化するために、特許権・専用実施権や営業秘密の侵害行為が故意である場合、損害として認められた金額の3倍以内で賠償額を定められる「懲罰的損害賠償制度」を導入することにした。

今年9月に中小企業中央会が行った調査結果によると、回答者の約45%は中小企業の技術奪取防止策として懲罰的賠償が必要だと答えた。今回の法改正はこのような市場の声を踏まえ、知的財産権の侵害問題の深刻さを認識し、知的財産権の侵害を根絶するという立法府と行政府の強い意志を示している。

今回の改正案では懲罰的賠償のほか、特許訴訟で特許権者などの立証責任を軽減するための「具体的な行為態様の提示義務」、「営業秘密の認定要件緩和」、「営業秘密侵害行為の類型の拡大」、「罰則強化および予備・陰謀をした者に対する厳罰化」など、知的財産保護制度が見直された。

特許庁長は、「今回の法改正により、知的財産保護が強化されるとともに、社会問題化した中小企業の技術奪取行為の根絶につながるだろう」とし、「ひいては革新的な成長および公正な経済の実現に貢献することを期待している」と述べた。

ジェトロ・ソウル事務所知的財産チーム

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