知的財産ニュース アルツハイマー型認知症、早期診断で克服しよう

2018年10月16日
出所: 韓国特許庁

アルツハイマー診断用の造影剤(contrast media)に関する韓国国内の特許出願件数が10年間で12倍に増加

現代医学でアルツハイマー病治療薬に対する持続的な研究開発が進んでいるにもかかわらず、病状の進行を遅らせるだけで、根本的な治療剤はないのが現状である。アルツハイマー病は、症状が非常にゆっくりと進行するため、発症後の治療よりは早期診断による予防が重要である。アルツハイマー病を早期に診断する産業が非常に脚光を浴びる理由はここにある。

造影剤とは、X線、コンピュータ断層撮影(CT)、磁気共鳴画像(MRI)、陽電子放出断層撮影(PET)などの画像診断を行う前、特定の組織や血管がよく見えるように投与する薬を指す。アルツハイマー病に関わるアミロイドβ(ベータ)、タウタンパク質などに対する標的化された薬物送達技術を取り入れた造影剤が開発され、早期診断がさらに容易になっている。

韓国特許庁によると、アルツハイマー病の診断に使われる造影剤に関する特許出願が増えている。2008年から2017年までのアルツハイマー病診断用の造影剤に関する特許出願件数は計110件となっている。1年に少なければ4件、多ければ22件が出願され、毎年、平均11件が出願されていることが分かった。

国籍別に見ると、過去10年間、外国人による特許出願は75%(82件)と多数を占めている。これは、先に高齢化が進んだ外国でアルツハイマー病をはじめ、退行性脳疾患に対する医学的関心が高まったためであろう。注目すべきは、韓国人による出願件数は2008年に1件に過ぎなかったが、2017年には12件に達していることである。この背景にはアルツハイマー病診断用の造影剤に関する業界と学界の研究活動が増加していることがある。

臨床で使われているアルツハイマー病診断用の造影剤には、米国FDA(食品医薬品局)で初めて臨床承認されたアミロイドβ(ベータ)標的映像用のアミヴィッド(一般名「florbetapir」、2012年)、ビザミル(一般名「flutametamol」、2013年)、ニューラチェック(一般名「florbetaben」、2014年)などがある。国内ではFuture Chem社(放射性造影剤の専門企業)が世界で4番目、韓国食品医薬品安全処の初承認を受けたAlzavue (「florapronol」、2018年)がアルツハイマー標的診断用の造影剤として使われている。

特許庁薬品化学審査課の課長は、「高齢化が進んでいるなか、認知症高齢者とその家族を助けることができるアルツハイマーの早期診断剤の開発は、家庭の幸福はもちろん、老後の健康と上品で美しい生活に欠かせない」とし、「研究所と業界はアルツハイマー診断用の造影剤開発がどれだけ重要であり、市場で価値があるのかを見極め、新技術の確保と知財権の先取りにさらに注力する必要がある」と述べた。

ジェトロ・ソウル事務所知的財産チーム

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