知的財産ニュース 頭脳が資源である韓国、知的財産を基盤とする雇用創出・革新成長に乗り出す

2018年9月11日
出所: 韓国特許庁

知的財産分野で1万1,000人の直接雇用、3万5,000人の間接雇用を目指す

無形の経済の時代における核心成長エンジンである知的財産分野で良質の雇用創出を拡大する方策を推進する。

韓国特許庁は9月11日(火曜)7時30分〜9時00分、韓国プレスセンターで開催された第7回雇用委員会で「知的財産(IP)を基盤とする民間主導の雇用創出対策」について報告した。

韓国は世界4位の知財大国(特許出願件数基準で、年間約20万件)であり、特許、デザインなどの知的財産を雇用創出・革新成長に積極的に活用するために、今回の対策を講じた。

米商務省、欧州連合知的財産庁(EU IPO)などによると、知的財産権集約型産業(1人当たりの知的財産権の数が全産業の平均以上の産業)の雇用割合は米国18.2%、EU 27.8%、韓国17.9%に達しており、賃金水準も非集約型産業に比べて40〜50%高くなっている。また、特許を保有するスタートアップの成功率はそうでないスタートアップの2倍になるなど、知的財産は企業の成長や起業の成功、良質の雇用創出において重要な役割を果たしている。  

特許庁は今回の対策を実施し、2022年までに知的財産分野で1万1,000人の直接雇用、企業の成長に伴う3万5,000人の間接雇用創出を目指し、4つの戦略を推進する。

Ⅰ.知的財産分野の若手人材を養成し、雇用創出を拡大する

  • 学生‐大学‐企業が三者協定を締結し、大学は知的財産教育を実施し、企業は資格を取得するなど、一定の条件を満たした学生を採用する、「就職連携型知的財産人材育成事業」を展開して2022年までに6,200人の雇用を創出する。 現在、3つの自治体(大田、江原道、釜山)とその地域の大学、企業などと協力して事業を行っているが、これを2022年までに全国に拡大する。
  • 現在、教育部の指定を受けた発明・特性化高校は6校あるが、これを2022年までに12校に拡大し、発明・特性化高校生向けの知的財産教育と企業連携就職プログラム(注1)を運営し、高卒採用2,100人を計画している。
  • 知的財産教育先導大学の運営拡大(現在16校、2022年には57校)、知的財産教育先導高校(2022年までに200校を新規指定)の運営開始など、大学・高校の教育課程に知的財産を編成し、教員養成を支援するなどして知的財産の若手人材育成システムを強化する。  
  • 教育環境に恵まれていない青少年向けの発明教育も拡大する。現在運営している発明教育センターを拡大(201カ所→231カ所)し、地域の児童教育専門人材を補充するとともに、全国5つの広域拠点に発明教育統合支援センターを新設して400人の雇用を創出する。

*(発明教育センター)個々の学校を中心に、小規模な発明教育課程を実施、(発明教育統合支援センター)発明体験館、教育機材、教員向け研修など体系的な支援を実施

Ⅱ.知的財産サービス業(注2)の成長を支援し、雇用を拡大する

  • 2022年までに政府が発注する特許先行技術調査に占める民間のシェアを32%から50%以上に引き上げて民間市場を拡大し、特許分析関連で200人の雇用を創出する。
  • 公共資源およびデータを開放し、新事業創出・海外進出も支援する。政府で運営するSMART3評価モデル(注3)の海外サービスを開発し、多数の知的財産サービス業者がそれを活用して海外に進出できるように支援する計画である。

AI学習用のIPデータ、審査文献などの付加価値の高い知的財産データをさらに開放(90種から115種へと)し、起業家、起業したばかりの会社(初期段階)などを対象に知的財産データを無償で提供する「IPデータギフト制度」も拡大(資格条件の緩和を3年以内の起業家から7年以内の起業家にし、無償提供機関も3年から5年にする)し、新事業への進出を支援する。

  • 未就職卒業者、R&D退職人材などを知的財産調査・分析の専門人材として育成し、2022年までに知的財産サービス関連企業と提携して1,000人を採用する。  

Ⅲ.スタートアップ・中小企業のIPを基盤とする革新成長を促進する

  • K‐ユニコーン企業8社の排出を目的に、有望なスタートアップを選定して知的財産の創出・保護・活用をフルパッケージで支援(国内外IPの権利化、特許調査・分析、特許技術価値評価、技術移転(ライセンス)仲介など)し、知的財産を基盤とするスタートアップおよびアクセラレーターに投資するファンドを150億ウォン規模で運営(2019年から)する。
  • 中小・ベンチャー企業の知的財産ベースの成長を支援するために、母胎ファンド(fund of funds)および民間資金で2022年まで8,000億ウォン規模のIPベースの中小・ベンチャー企業投資ファンドを造成・投資し、5,600人の雇用を創出する。
  • 中小・ベンチャー企業が知的財産を担保に事業資金の融資を受けられるよう、技術価値評価への支援を拡大(年間450件→2022年2,000件)し、融資後、担保に問題があることが明らかになれば、その担保を買取・収益化する回収支援システムも導入(2019年に発明振興法に法的根拠を設けた後、2020年に政府・銀行による共同拠出を推進)するなどして、IP金融を活性化していく計画である。
  • 中小・ベンチャー企業が共同で資金を積み立てて海外出願やIP紛争に巻き込まれた際、必要資金を借りる特許共済事業も運営(2019年から)する。2025年までに2万6,000社を登録し、5,000億ウォン規模の積立額を造成する計画である。

Ⅵ.企業の成長・雇用創出を後押しするIPインフラを構築する

  • 韓国の特許審査処理期間は世界最高水準(10カ月)であるが、審査への投入時間が不足しているため、審査品質は比較的に低いレベルにとどまっている。
    区分 韓国 日本 米国 中国 欧州
    1人当たりの特許審査処理件数(2016) 217 171 77 68 58
    特許無効審判の認容率(%、2016) 49.1 25.1 28.5(2012.9~2016)
  • これを改善するために、特許審査人材を増員し、審査官の審査への投入時間を適正化(2018年に13.0時間、2020年に17.4時間、2022年に20.0時間)し、公衆審査(産業現場の技術情報と知識を審査に活用)、審査官による協議審査なども拡大する。さらに人工知能ベースの特許行政情報システム(知能型IP検索・相談・翻訳)を構築(2019〜2023)し、審査の効率および品質を高めていく計画である。
  • 中小企業の技術保護システム強化に向けた制度改善および専門人材の補充も推進する。

    政府が直接、技術・アイデア奪取行為に対する調査・是正勧告、知的財産権の侵害捜査を実施するための法整備(アイデア奪取・営業秘密侵害に対する調査、特許・デザイン・営業秘密侵害罪の捜査など(法案を国会に提出))および専門人材の拡充を推進し、優越的地位者などによる悪質な特許・営業秘密侵害が発生すれば、損害額の最大3倍までと損害賠償責任を拡大する懲罰賠償制度も導入する計画である。

  • キャリアが途絶えた女性、低所得層などを採用して「オンライン模倣品在宅モニタリング団」も運営(2019年に100人、2022年には200人)する。また、政府R&Dにおける特許連係技術開発(IP‐R&D)の導入を拡大し、大型R&D事業団(50億ウォン以上)が特許専門官を採用するなどして470人の雇用を創出する計画である。
特許庁次長は「S&P 500企業が保有する無形資産の割合が87%に達するなど、無形の経済の時代が到来しているなか、知的財産の重要性は増している」とし、「今回の対策に盛り込まれた知的財産を活用した青年雇用事業、スタートアップ・中小企業への支援事業などを滞りなく推進し、民間での良質の雇用創出を拡大し、革新成長を後押しするために万全を期したい」と述べた。

ジェトロ・ソウル事務所知的財産チーム

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