知的財産ニュース 韓国大企業の甘い特許戦略...登録料未払いによる消滅率が海外より高い

2018年8月23日
出所: 電子新聞

韓国の主な大企業は特許権利の維持に消極的であることが明らかになった。海外に比べ、韓国国内で特許紛争が少ないとはいえ、特許戦略の見直しが必要である。

知的財産サービス企業WIPSが1998年9月から今年7月までの韓国国内の特許出願情報を分析した結果、韓国大企業が拒絶査定不服審判で取得した特許の消滅率が海外に比べて高いことが分かった。拒絶査定不服審判とは、出願特許に対する特許庁の拒絶決定に不服として控訴する審判である。拒絶査定不服審判によって登録した特許は、企業が戦略的に管理する特許といえるだろう。

同期間、韓国で行われた拒絶決定不服審判件数は計9万7,000件である。そのうち、大企業の申請が26%を占めている。上位3つの企業はサムスン電子、LG電子、LGディスプレーの順である。全体に占める3社の割合は12%に達し、1万2,000件となっている。

最初の判定を覆し、登録決定が下りた特許件数は、サムスン電子3,743件、LG電子2,909件、LGディスプレー1,673件である。このうち、1,686件(45%)、1,484件(51%)、103件(6%)は特許料の未払いにより、消滅した。これは、LGディスプレーを除けば、同期間、韓国で請求された拒絶決定不服審判で登録決定となった6万件余りの消滅率38%よりも高い数値である。

サムスン電子とLG電子の海外登録特許の現状と比較しても韓国国内での消滅率は高い。サムスン電子は同期間、日本で3,500件の拒絶決定不服審判を請求し、62%の登録決定を受けた。米国では770件を請求し、そのうち48%が登録決定を受けた。登録維持を放棄した特許の割合は、日本で33%、米国で14%となっている。 

LG電子は日本と米国でそれぞれ1,000件、100件の拒絶決定不服審判を請求した。登録率はそれぞれ62%、77%となっている。登録維持を放棄した特許の割合は、日本で 29%、米国で10%となっている。

その背景には特許紛争、特許登録料などの影響があるだろう。特許紛争は韓国国内より米国、日本でよく起きる。韓国では一定期間後、特許を再登録すると、費用は倍近くなる。

WIPSのチーム長は、「拒絶査定不服審判を請求してまで権利の維持に励んだ特許は、その企業の戦略において重要なものだ」とし、「審判制度まで活用して権利の維持を希望する特許については、綿密に考える必要がある」と強調した。また、「不服手続きまで経て確保した特許の消滅率が高いのは残念だ」と付け加えた。

ジェトロ・ソウル事務所知的財産チーム

ジェトロ・ソウル事務所 知的財産チームは、韓国の知的財産に関する各種研究、情報の収集・分析・提供、関係者に対する助言や相談、広報啓発活動、取り締まりの支援などを行っています。各種問い合わせ、相談、訪問をご希望の方はご連絡ください。
担当者:大塚、柳(ユ)、李(イ)、半田
E-mail:kos-jetroipr@jetro.go.jp
Tel :+82-2-3210-0195