知的財産ニュース 後発医薬品メーカー、先発医薬品メーカー克服が困難

2018年3月14日
出所: 韓国特許庁

医薬品許可‐特許連携制度の施行3年、審判請求の統計を分析

医薬品許可‐特許連携制度(2015年3月15日)施行の3年間、特許挑戦(注1)に乗り出した後発医薬品メーカーと特許障壁を強化しようとする先発医薬品メーカーとの競争が激しい。

韓国特許審判によると、医薬品許可‐特許連携制度の施行後、昨年末までの審判請求件数は2,928件であった。審判請求件数を年度別に見ると、施行1年目の2015年に2,222件と最も多く、2016年には311件、2017年には395件あった。

医薬品許可‐特許連携制度

医薬品許可‐特許連携制度とは、医薬品許可制度に特許制度を連携させたもので、韓米FTAにより韓国に導入された。後発医薬品(ジェネリック)の販売差止めと優先販売品目許可が中核である。

後発医薬品の販売差止めは、特許権者(先発医薬品メーカー)を保護するためのものである。後発医薬品メーカーが食品医薬品安全処にジェネリックの許可を申請すると、特許権者にその事実が通知される。特許権者がジェネリックの発売について特許侵害訴訟を提起すると、ジェネリックは9カ月間、販売を差し止められる。  

優先販売品目許可は、後発医薬品メーカー(ジェネリック医薬品メーカー)のためのものである。後発医薬品メーカーが、特許権者に最初に特許審判を請求(無効審判、消極的権利範囲確認審判)して勝訴すると、9カ月間優先的に後発医薬品(ジェネリック)を販売することができる。

過去3年間、特許挑戦者が勝訴したのは、無効審判(注2)265件(成功率24%)、存続期間の延長無効審判1件(成功率0.2%)、消極的権利範囲確認審判(注3)(以下、消極確認審判)465件(成功率74%)であった。

韓国の製薬会社が源泉特許の無効化より、特許を迂回する「回避戦略」を主に使用していることが分かる。

特許審判院は、医薬品許可‐特許連携制度に関連する審判請求件数2,928件のうち、2,248件の手続きを終えた。

審判請求件数も2015年には無効審判(存続期間の延長無効審判を含む)1,801件、消極確認審判410件であったが、2017年には無効審判22件、消極確認審判372件となっている。これは、後発医薬品メーカーの戦略が変わっていることを裏付けている。

一方、糖尿病治療薬である「ダパグリフロジン(フォシーガ錠など)」が、後発医薬品メーカーからの特許審判請求(97件)が最も多いことが明らかになった。

特許審判院の企画審判長は「施行初期のダメもとで審判請求をする戦略から脱し、医薬品メーカーごとに特許戦略を持って特許挑戦に取り組んでいる」とし「今後、医薬品許可‐特許連携制度をめぐる製薬業界の頭脳戦はさらに激しくなるだろう」と見通した。

審判長は続いて「制度施行に伴い、医薬品専門審判官5人を増員して運営しており、長期間待機状態にある審判事件を解決するために、さらなる審判官増員が必要だ」とも述べた。

特許審判院は、医薬品許可‐特許連係制度の導入3周年である3月15日(木曜)に開催される化学生命分野の専門弁理士との懇談会でこれまでの施行経過について説明し、関係者から意見を聴取する予定である。

ジェトロ・ソウル事務所知的財産チーム

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