知的財産ニュース 仮想、拡張現実が選んだ有機ELディスプレイ

2017年10月16日
出所: 韓国特許庁

韓国特許庁によると、仮想現実(VR)・拡張現実(AR)用有機ELディスプレイの出願件数は毎年、増加傾向にあり、特にこの3年間の関連出願が大幅に増加したことが分かった。

出願件数を年度別に見ると、2014年240件、2015年263件、2016年439件と、2014年を基点に仮想・拡張現実用有機ELディスプレイ技術に関する出願件数が急増した 。

仮想・拡張現実用有機ELディスプレイ分野に関する出願件数が最近、増加してきた理由には、

まず、仮想・拡張現実機器の本格的な普及には解像度や応答速度、活用性、フィット感、価格など、さまざまな条件の向上が欠かせない。有機ELディスプレイは実感が湧く映像を実現することができる上、フレキシブル設計が容易という点で、従来の液晶ディスプレイに比べ、そうしたニーズに応えられることが挙げられる。  

次に、2020年頃には仮想・拡張現実の市場規模が約800億ドルへと大幅に拡大すると見込まれている。これを受け、仮想・拡張現実機器に適した有機ELディスプレイがフレキシブル、ローラーブル、ベンダブル・ストレッチャブルディスプレイなど、さまざまな形で開発されることから仮想・拡張現実用有機ELディスプレイ技術に関する出願件数は、今後も増え続けると見られる。

この5年間(2007年~2016年)の特許出願の内訳を出願人別に見ると、

大手企業774件(60%)、中堅・中小企業142件(11%)、大学‧研究機関72件(6%)、個人70件(5%)、外国人が237件(18%)を出願したことが分かった。

出願メーカー別に見ると、LG電子465件、サムスン電子216件、マイクロソフト社51件、サムスンディスプレイ29件、SK PLANET20件、クアルコム17件、LGディスプレイ17件の順であった。これで仮想・拡張現実用有機ELディスプレイ関連技術が韓国国内企業により支配されていることが分かる。

仮想・拡張現実用有機ELディスプレイの応用分野別の出願現況を見ると、

個人向けエンターテイメント(ゲーム、テーマパーク、体験館)426件、国防(戦争シミュレーション、武器開発、戦闘機操縦)169件、広告141件、医療(3次元シミュレーション、仮想内視鏡、模擬手術)131件、ヘルスケア123件、映画117件の順であり、仮想・拡張現実用有機ELディスプレイ技術は、ゲームや国防産業分野で最も多く活用されていることが分かった。

特許庁のディスプレイ機器審査チーム長は「TVや携帯電話などの個人用製品を中心に進歩した有機ELは、優れた映像を提供する力に基づき、仮想・拡張現実だけでなく、新たな産業分野へと活用領域が拡張すると見られる」とし「有機ELディスプレイの寿命延長と使用温度範囲の拡大など、性能向上に向けた技術に関する出願件数が増加するだろう」と見通した。

特許庁は有機ELディスプレイ分野における特許競争力を高めるために、産業界と共同で「IP Together」を定期的に開催してきた。今後は「改正特許法説明会」などを通じ、関連情報を継続的に提供していく予定である。

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