知的財産ニュース サイドミラーのないミラーレスカー時代が迫っている
2017年5月15日
出所: 韓国特許庁
韓国特許庁によると、韓国国内における車両視界(視野確保)装置に関する特許出願件数は2013年までは毎年減少していたが、ここ3年間はカメラ技術を利用した視界装置に関する出願件数が年平均55件増加し、全体の出願件数が増加したことが分かった。
年度別の出願件数を見ると、2014年52件、2015年66件、2016年48件と、2013年を起点にカメラ技術を利用した視界装置に関する出願件数が増加した。
カメラ技術を利用した視界装置に関する出願件数(2007~2016年)を出願人別に見ると、大企業144件(28%)、個人110件(22%)、中堅企業75件(15%)、中小企業75件(15%)、大学・研究機関など44件(9%)、外国人58件(11%)であった。
出願メーカー別の出願件数を見ると、現代自動車51件、現代モービス41件、エスエル21件、LGイノテック17件、サムスン電気13件、LG電子12件の順であった。
最近、カメラ技術を利用した視界装置に関する出願件数が増えた背景には、先端カメラ・ディスプレイおよびIT技術を早期に車両に融合したや自動車メーカーだけでなく、ITメーカーまでが車両用カメラと映像処理技術を確保するために激しく競争していることがある。
また、自動車に関する国際安全基準を実質的に決定する国連自動車基準調和世界フォーラム(UNECE/WP29)が、カメラとモニターでミラーレベルの映像を提供すれば、サイドミラーの設置義務を廃止できるよう既に安全基準を緩和したことも背景にある。
実際、日本も2016年にミラーレス車両の道路走行を合法化した。こうした国際的な傾向に合わせ、韓国も今年1月にミラータイプのサイドミラーをカメラモニターシステムで代替できるように自動車に関する規則を改正(*)した。これは国内外における車両の安全基準をめぐる環境変化によるものとみられる。 *「自動車および自動車部品の性能と基準に関する規則」改正(2017年1月9日に一部改正)
カメラ技術を利用した視界装置出願の技術分野は、従来のミラー装置の補助・支援技術(死角地帯の解消)、カメラ制御技術(車両機器との連動制御など)、映像ディスプレイ技術(映像合成、表示など)、障害物の認識・警報技術、従来のミラー装置の代替技術に大きく分けられる。
こうしたカメラを利用した技術を車両に多数取り入れたのが、最近関心を集めている「ミラーレスカー」といえ、完成車業界はミラーレス技術を適用したさまざまなコンセプトカーをお披露目している。
サイドミラーをカメラモニターシステムで代替したミラーレスカーのメリットは、これまで約100年間、運転者が後方を確認する時に使ってきたミラー(鏡)がなくなることで、1.風切音の減少に伴い静かな運転が可能になる、2.空気抵抗の減少に伴い燃費効率が高まる、3.視野角が拡大し、死角地帯を最小限にすることができるため、事故発生を有効に防止できることである。
特許庁自動車審査課長は「ミラーレスカーにはメリットも多いが、カメラに雨水などの異物がついた場合は視野確保が困難になり、電気部品の増加により故障率が上がるなどのデメリットもあるだけに、カメラモニターシステムの安全性や耐久性の確保が大衆化のカギとなる」とし「こうした課題を解決するための特許出願は続くだろう」と見込んだ。
ジェトロ・ソウル事務所知的財産チーム
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