知的財産ニュース 特許庁、「第4次産業革命時代における知的財産政策の方向」を発表
2017年11月1日
出所: 韓国特許庁
核心内容
- 高品質で強い特許のための「特許創出パラダイムシフト」
- 特許が無効になった場合、既に納めた登録料を特許権者に全額返す。(責任行政の実現)
- 特許品質向上の取り組み:審査段階、審査官中心→R&D、出願、審査など、前段階で産・学・研・官が立体的に参加する
- 第4次産業革命における中核特許を確保するために優先審査および特許登録料を減免する
- 公正・迅速な特許審判(外部の専門審理委員制度の導入、審判官の倫理綱領づくりなど)
- 中小・ベンチャー企業における知的財産を保護するための「制度革新」
- 特許・営業秘密侵害行為に対する懲罰賠償制度を導入
- 中小・ベンチャー企業のアイデアや技術奪取を撲滅するための制度改善
- Kブランドの保護および輸出企業における知的財産紛争に対する支援を充実
- 雇用創出のための「政府事業の民間への果敢な開放」
- 政府が発注する調査事業(特許・商標・デザイン)における民間参加率を5割以上に伸ばす
- 特許データを民間に開放することで知的財産サービス業市場を積極的に育成する
- 知的財産金融(1兆)・取引(3千億)の活性化および税制改善(出願・登録費用税額控除など)
- 第4次産業革命に備える「知的財産エコシステムづくり」
- 先んじてAIなど第4次産業革命における主要技術知的財産保護仕組みを整備する
- 発明人材の成長支援および知的財産が尊重される社会環境づくり
策定背景
韓国特許庁は11月1日、新政権の知的財産分野のマスタープランとして「第4次産業革命時代における知的財産政策方向」を発表した。
この政策は第4次産業革命時代を迎える中で「お金になる強い知的財産」を創出し、市場でそれをしっかり守り、産業で効率的に活用する「知的財産好循環プラットフォーム構築」を通じ、革新成長と雇用創出に貢献するためである。
特に、第4次産業革命という時代の変化に積極的に対応し、新政権の国政方向に符合するよう知的財産政策全般の大枠を決めることに重点を置いた。
特許庁は7月27日にソン・ユンモ庁長が着任した以降、TF(タスク フォース)を立ち上げ、産業界・学界・関連団体などからの意見や現場の声に耳を傾け、この政策を講じた。
基本方向
今回の政策は第4次産業革命時代に見合った「品質中心の責任行政」、「中小・ベンチャー企業におけるIP保護のための制度革新」、「政府事業の民間への開放」、「将来に備えるIPエコシステムづくり」を基本方向に決めた。
具体的に見ると、「知的財産で第4次産業革命を先導する」をビジョンに掲げ、4大推進戦略、14大重点課題を盛り込んだ。
4大推進戦略および14大重点課題
4大推進戦略 | 14大重点課題 |
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革新成長を主導する強い知的財産の創出 |
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公正な経済を支える知的財産保護の充実 |
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質の高い雇用を生む知的財産の事業化を進める |
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将来に備える知的財産の基盤づくり |
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重点推進課題
1.革新成長を主導する強い知的財産創出
特許審査品質を革新し、特許が無効になると、登録料を全額返します。
特許審査1件当たりの審査投入時間を適正化し、世界レベルの審査処理期間を維持することで審査品質の画期的な向上を図る。
*特許審査1件当たりの投入時間(16年):韓国(11.0)、米国(26.0)、日本(17.4)、欧州(34.5)、中国(29.4)
→22年までに20時間に適正化し、このために審査人材を1千人増やす。また、特許が無効になると、既に納めた特許登録料を特許権者に全額返す方策を進めるなど、果敢な革新を起こし、審査品質に対する責任行政を実現する。
*(現行)特許無効審決が確定した翌年からの特許登録料を返している。審査品質向上と共に、無効審決予告制を施行(20年)するなど、更なる努力を重ね、16年の49.1%水準の特許無効審判認容率を22年までに33%に引き下げる。
*無効審決予告制:審判官が無効審決する前に特許権者に事前にその内容を知らせ、特許を訂正する機会を与える制度- 第4次産業革命における主要技術に対する源泉・中核特許の確保に積極的に取り組み、22年までに知的財産貿易収支黒字国になります。
第4次産業革命分野における技術・デザインに対する優先審査を実施し、中小・ベンチャー企業を対象に特許年次登録料の減免を拡大する(18年)
*(現行)1~3年目:70%、4~9年目:30%減免→(改善)1~3年目:70%、4~20年目:50%減免特許をビッグデータで分析し、第4次産業革命分野における政府および民間R&Dの源泉・標準特許を確保する戦略の策定を後押しする。
*(18年)5つの分野、25の有望技術→(22年、累積)25の分野、125の有望技術慢性的な知的財産貿易収支赤字の原因および実態を把握するために知的財産輸出入の内訳を調査・分析した資料を科学技術情報通信部、産業通商資源部などの関連機関に提供し、IP貿易収支の改善策づくりに活用する(18年)
*発明振興法の改正により、IP輸出入に関する外為取引情報の入手・分析が可能になった(17年3月) - お金になる強い特許が作れるように特許創出過程全般における新しい大枠を決めます。
従来の「審査段階で審査官が行う活動」に限られていた特許品質を高める取り組みを、R&D・出願など特許創出の全段階へと拡大し、産・学・研・官のスキルアップを目指す。
質の高い特許を創出するための段階別/対象別主要課題 区分 R&D 出願 審査移転 審査 対象別主要課題 政府 - 国家特許戦略の道筋
- 業種別の特許動向を分析
- 中小企業IP-R&D
- 企業注文型IP-R&D
特許業界 - 自主管理環境づくり
- 特許審査動向を分析
- IP専門投資ファンド
- 特許管理体系を改善
- 特許設計を支援
企業 - 中小・ベンチャー企業を対象に先行技術調査の結果を事前に提供
特許庁 - 審査人材を増員
- 協力審査を拡大
- 先行技術調査を充実
特許品質 発明品質 出願品質 出願品質 審査品質 (政府)18大の産業分野別に特許を分析し、将来に有望な技術と特許を先取りして提示する国家特許戦略の道筋DBの高度化(~22年)
*将来における新技術の融合複合的な特性を踏まえた技術分類体系の見直しおよび中国の特許DB構築(企業)中小企業向け特許R&D連携戦略(IP-R&D(※))策定の支援を拡大
※中核特許および空白技術など特許情報を分析して研究開発の方向を示す知的財産基盤R&D戦略支援事業
*中小企業IP-R&D戦略支援課題(件):(16年)203件→(22年、累積)3,500件(大学・公共研)R&Dと中小企業の需要技術を連携させ、優秀な特許を創出する企業注文型IP-R&D戦略支援を強化
*企業注文型IP-R&D戦略支援課題(件):(17年)23件→(22年)60件(特許業界)自主的な品質管理環境づくりのために出願品質水準に応じ、審査業務量に比例する差等的審査手数料政策を導入(19年~)
*明細書が上手に書けて審査業務量の軽減につながる出願にインセンティブを与える。従来、審査段階で審査官のみ活用していた特許先行技術調査の結果を審査請求時に出願人に提供し、審査選択権(出願書補正、出願取下げ後再出願など)を付与する。
*中小・ベンチャー企業を対象に審査に着手する前に先行技術調査の結果を事前に提供する(18年~) - 特許審判の公正性・専門性・迅速性を高めます。
(公正性)特許庁出身弁理士と同じ部署で勤務した審判官の回避基準などを規定する審判官倫理綱領を制定・施行し(17年)、国選代理人、審判構造制度*を導入し、社会的弱者の権利を保つ。 *基礎生活受給者、次上位階層、小企業などに対し、審判手数料、代理人費用を支援する。
(専門性)外部の専門家が特許審判過程に参加する専門審理委員制度および先端技術分野の審判で審判官を補佐する審判研究官制度を導入(18年)
(迅速性)資金力が乏しい中小・ベンチャー企業が、紛争の長期化で苦しまないよう、審判段階での証拠提出時期を制限し、審判を紛争調停制度と連携させ、特許紛争が迅速に終わるように取り組む(~19年)
2.公正な経済を支える知的財産保護の充実
中小・ベンチャー企業における知的財産保護の実効性を高めます。
悪意のある特許・営業秘密侵害行為に対し、懲罰賠償制度(3倍以内)を導入し、処罰可能な営業秘密侵害類型を拡大する(18年)下請けからの、あるいはビジネスを提案する段階でのアイデア奪取や使用行為などを不正競争行為の類型に新設(18年)するなど、中小・ベンチャー企業のアイデア・技術奪取を撲滅するために取り組む。
知的財産保護の執行力を強化するために商標権侵害のみを担当する特許庁所属の特別司法警察隊の業務範囲をデザイン盗用・侵害行為*捜査まで拡大する。
*不正競争防止法上の商品形態模倣行為、デザイン保護法上のデザイン権侵害行為- 輸出企業に対する支援を拡大し、知的財産分野における国際協力を主導します。
海外で人気を博しているKブランド保護を強化するために海外知的財産センター(IP-DESK)をさらに設置し、韓流コンテンツ知的財産保護コンサルティング((18年)26件→(22年)100件)を提供する。
*IP-DESK:(17年)中国、米国など8カ国14カ所→(22年)シンガポールなど16カ国22カ所世界5大特許庁(IP5)間の協力を強化し、優秀性を認められ海外に輸出している韓国型特許行政サービスを拡充し、輸出企業に有利な環境を作る。
*IP5間の特許共同審査(※)など、知的財産制度の標準化を進める。
※2カ国に同一発明が特許出願された場合、審査に必要な先行技術の文献情報を共有して審査結果の正確性・一貫性を高める制度であり、2015年9月から韓国と米国間で施行中
*UAEへのサービス輸出(450万ドル、16年)に続き、システム維持メンテナンスおよびIP総合コンサルティング契約(126万ドル)を推進し、成功モデルを世界に拡大(18年~) - 非首都圏、女性などに対する経済・社会的な知的財産格差を解消するために取り組みます。
27カ所の地域知的財産センターでIP関連相談・教育を行い、IP経営支援団が訪問して地域の中小・ベンチャー企業が抱える悩みを解決する。
*非首都圏における特許出願:(05年)20.7%→(09年)32.7%→(16年)37.6%→(22年)39.2%キャリアが途絶えた女性が知的財産分野で再就職できるよう支援する、広域拠点別「女性知的財産振興センター(仮称)」を新設するなど、女性の知的財産に関するスキルアプを図る。
中小・ベンチャー企業、学生などによる知的財産をめぐる審判・訴訟時に公益弁理士の直接代理サービスを拡大((17年)120件→(22年)300件)
*知的財産権出願人に占める女性の割合:(16年)23.7%→(22年)30%
3.質の高い雇用を生む知的財産の事業化を進める
民間中心の知的財産サービス業の育成により5年間で1.2万(18年~22年)の質の高い雇用を創出します。
公的機関が主導していた特許・商標・デザイン調査サービスを民間に段階的に50%以上開放し、公的機関は管理・評価・教育に集中できるよう改善する。
*特許先行技術調査発注量に占める民間の割合:(17年)25%→(22年)50%以上知的財産サービス業の投資ファンド、IP投資ファンドなどを助成して知的財産サービス業に対する投資を強化(18年700億ウォン規模の新規ファンドを助成する予定)し、特許管理専門会社の育成を積極的に支援する。
*特許管理専門会社(NPE)型IP投資ファンドの助成を拡大:(17年)11個→(22年)20個また、中小企業における特許費用の負担軽減と技術取引活性化に向けて知的財産分野の税制改善も持続的に進める方針である。
*中小企業の特許出願・登録費用税額控除の新設、技術取引課税特例の拡大など- 中小・ベンチャー企業IP能力の強化およびIP基盤の創業を促進します。
中小企業の知的財産費用負担を分散・軽減し、リスク管理を支援するための民間中心の特許共済制度を導入(2019年)する。
*加盟企業は共済賦金を毎月納入し、海外出願、国内外の審判・訴訟などの事由が発生した時に費用を先に借りて一定期間で分割返済する。スタートアップが求める時期に希望するIPサービスを選択して支援を受けられる新規「特許バウチャー事業」を施行(18年)100件→(22年)500件
未来の創業者が持つアイデアの知的財産化(5年間で1万件)および創業企業に対する知的財産コンサルティング(5年間で5,500件)の支援を拡大する。
- IP金融・取引の活性化により知的財産の事業化を積極的に支援します。
従来の知的財産保証・担保貸出中心から、創業企業・スタートアップが将来の価値に基づいて資金を調達できるよう投資型IP金融を拡大し、知的財産金融を22年までに1兆ウォン規模に拡大する。
IP需要者・供給者・投資家・仲介者間の知的財産活用ネットワークを、VR(仮想現実)などの第4次産業革命における中核技術を中心に強化し、大学・公共研の優秀な特許取引を促し、知的財産取引規模を現在の2千億ウォンから22年までに3千億ウォンへと拡大する。
*IP金融規模:(17年)3,500億ウォン→(19年)6,500億ウォン→(22年)1兆ウォン
*IP-PLUG技術分野:(17年)8→(18年)AI、 IoT、VRなど10→(22年)16
4.将来に備える知的財産の基盤づくり
第4次産業革命に先んじて対応するために知的財産法・制度を改善します。
デジタル・ネットワーク環境で特許技術が含まれたソフトウェアのオンライン上での流通も侵害行為に含めることで保護を受けられるよう法改正を進める(18年)
*(現行)他人の特許技術を無断で使用したソフトウェアを記録媒体(CDなど)に保存して流通すると、特許侵害であるが、同一なソフトウェアをオンライン上で流通(伝送)する行為は侵害であるか否かが明確ではない。AI・ビッグデータなど、新しく登場した技術を知的財産権で適正に保護するために知的財産法・制度を整備する(~20年)
*産・学・研の専門家が参加し、AIによる発明、3Dプリンティングファイルの保護、創作性のないデータの保護・活用などについて議論する「知的財産未来戦略委員会」が発足(17年7月)- AI、ビッグデータなどの未来技術を活用して特許行政を効率化にする。
知能情報技術を活用する特許情報システムの高度化5カ年戦略を策定(2018年)し、機械学習に活用される特許DBを試験的に構築するなど、特許ビッグデータ蓄積の基盤を作る(17年~19年)
- 発明人材の成長に向け、インフラを拡充します。
199カ所の発明教育センターの創造・融合型の発明教育を支援するために17の広域自治体に「広域発明教育支援センター」を設置(~22年)するなど、青少年発明教育に向けた基盤を構築する。
*青少年が受ける発明体験教育の割合:(16年)5.7%→(22年)30%に伸ばす「知的財産教育先導大学」を増やし、知的財産学を単位銀行制で持続的に拡大すると共に運営科目数も増やす。
*知的財産教育先導大学数:(17年)17の大学→(20年)35の大学→(22年)50の大学 - 発明の奨励および知的財産を尊重する文化を作ります。
職務発明補償対象を植物新品種に関する研究などに拡大し、職務発明補償金の非課税限度額の引き上げなど、税制改善*を進め、R&D従事者の発明意欲を高め、企業の職務発明制度の導入を拡大する。
3Dプリンターなどの新技術を活用し、アイデアの具現化を支援する「私も発明家」キャンペーンを国レベルで繰り広げ(18年)、発明の日にちなんで選定する有功者を発明家中心に改編(18年)するなど、発明に親しむ環境を作る。
*企業における職務発明制度の導入率:(16年)60.2%→(22年)75%
*関係省庁と協議を行い、職務発明補償金の非課税限度額(現行、年300万ウォン)の引き上げを進める。
期待効果
第4次産業革命時代における知的財産政策方向」の着実な移行により、知的財産集約産業(※)3の競争力が強化され、国全体で年間12.6兆、5年間で計62兆ウォンの付加価値が生まれる。
※知的財産権を集中的に投入することで経済的富および雇用を生む産業で、GDPに占めるIP集約産業の割合は米国38.2%(2014)、欧州42.3%(2011~13)、韓国は37.2%(2015)である。
産業財産権に関わる知的財産サービス業の売上高は2.1兆ウォン(17年)から2.7兆ウォン(22年)へと5年間で6千億ウォンが増加(計27.4%、年平均5%)し、1.2万人(18年~22年)の雇用が生まれる効果が発生する。
質の高い知的財産権の創出や活用の効率性の増加、海外における知的財産保護の強化により22年までに知的財産貿易収支が黒字国に転換すると期待している(知的財産貿易収支:(16年)△19.1億ドル)
今後の取組計画
ここに盛り込まれた核心的事項は産業通商資源部、科学技術情報通信部、第4次産業革命委員会などの関係省庁・委員会と緊密な協議を行い、政府レベルでの政策として具体化させる予定である。
施行過程においても中小・ベンチャー企業をはじめ、産・学・研の関連機関と緊密な疎通と協業を通じて迅速に進める方針である。
韓国特許庁長は「英国、米国など、これまで3度にわたって産業革命を主導した国は、全て特許制度を積極的に活用した国であるため、第4次産業革命時代における勝者の条件は特許と知的財産になるはず」とし「今後、知的財産を通じて革新成長と雇用創出をけん引できるように多角的に取り組んでいきたい」と訴えた。
ジェトロ・ソウル事務所知的財産チーム
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担当者:大塚、李(イ)、半田(いずれも日本語可)
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