知的財産ニュース 第17回国家知識財産委員会

2016年7月1日
出所: 未来創造科学部

5403

政府は6月29日(水)第17回国家知識財産委員会※(以下知財委)を開催し、
「2017年度政府知的財産財源配分方向」
「海外進出中小企業知的財産権(以下、IP)戦略支援特別委員会構成・運営計画」
「発明者と使用者の共生に向けた職務発明制度改善案」
「2015年度国家知的財産施行計画の点検・評価結果」
等、計4つの案件を議決した。
※国家知識財産委員会:「知的財産基本法」に基づく大統領所属委員会
委員(計33人):共同委員長(国務総理ファン・ギョアン・クジャヨル)長官(13人)、民間委員(20人)

案件1:「2017年度政府知的財産財源配分方向」

政府の来年度の知的財産分野事業(2016年約3.2兆ウォン規模)に対する財源配分方向と投資戦略を下記のように提示した。

3大基本方向を「(1)世界的な高付加価値知的財産の創出強化、(2)知的財産権保護の実効性向上、(3)知的財産の生態系強化」に設定し、成果を最大化するための投資戦略を提示した。

第一に、「世界的な高付加価値知的財産の創出」のために、人工知能(AI)・3次元(3D)プリンティング・モノのインターネット(IoT)等、第4次産業革命を主導する新技術開発の投資を拡大し、技術や環境変化に予め対応するための新知識、ソフトウェア(SW)、コンテンツ、デザイン、ブランド等、高付加価値知的財産の創出支援を強化する。

第二に、知的財産権保護の実効性向上と関連し、知的財産紛争の急増に対応した知的財産保護制度の改善及び定着支援を強化し、特に紛争への対応能力が脆弱な中小・中堅企業の知的財産権保護を向けた協力・連携を拡大する。

第三に、知的財産の生態系を強化するために、知的財産の創出・保護・活用生態系の好循環を牽引する知的財産の管理及びサービス人材の養成に加え、市場適合型の価値評価体制及び金融支援との連携等、市場中心の知的財産ビジネスの活性化に向けた投資を拡大する。

同案件は対内外経済環境や知的財産関連動向、事業実績に対する評価結果等を分析して各界の専門家の検討を経て策定したもので、
企画財政部及び未来創造科学部に通知して来年度政府予算編成(案)に反映させる計画だ。

案件2:「海外進出中小企業IP戦略支援特別専門委員会の構成・運営(案)」

海外に進出する韓国中小企業の知的財産紛争への対応を支援するための特別専門委員会を知財委内に構成・運営することにした。

韓国中小企業の海外進出が急速に増加しているが、知的財産権に対する認識・準備不足で技術の流出はもちろん、国際的知的財産紛争の危険にさらされる等、困難を抱えている。
※中小企業の海外直接投資推移(百万ドル):('13)2,651→('14)2,987→('15)4,124

特に、特許出願世界1位の国に浮上した中国は最近、「懲罰的損害賠償制度」の導入を検討する等、自国の知的財産権の保護に向けた取り組みを強化している。
※(中国の知的財産権紛争) 韓国企業が経験した235件の紛争のうち86件が中国で発生

これを受け、知財委では、海外ビジネス・知的財産の専門家で構成された「海外進出中小企業IP戦略支援特別専門委員会」を運営し、韓国中小企業が海外に進出する前に点検すべき知的財産戦略をビジネス段階別※に開発し、「知財戦略案内書」の形で年内に発行して配布する予定だ。
※市場調査-競合会社分析-知的財産獲得-現地パートナー合弁-現地知的財産紛争-出口

案件3:「発明者と使用者の共生に向けた職務発明補償制度改善案(案)」

現行の職務発明補償制度で指摘されてきた「職務発明の二重譲渡の憂慮」、「企業負担」等の問題点を改善することで、職務発明制度を活性化させるとともに発明者と使用者の権益調和を図るという内容だ。

主な内容

企業内に予約継承規定がある場合、当該発明の完成時点で特許を受ける権利を直ちに使用者に承継させ、
※(現行)発明後4ヵ月以内に使用者が文書により継承の意思を通知しなければならない
職務発明が企業の費用で行われることを考慮し、職務発明補償制度を導入していない企業にも通常実施権は保障し、
政府研究開発(R&D)事業に参加する企業に対し職務発明補償制度の導入を制度化する一方、
職務発明の認定対象を現在の発明、考案、創作から、「半導体配置設計」及び「植物新品種」まで拡大する。

特許庁は、このような内容の発明振興法改正案を7月頃立法予告する予定だ。

案件4:「2015年度国家知的財産施行計画の点検・評価結果」

16の中央行政機関及び17の広域地方自治体で2015年に推進した主要課題に対する実績を評価し、示唆点や優秀事例、改善・補完事項等を示した。

評価結果・主要示唆点

中央行政機関の場合、IP-R&D戦略、技術価値評価及び金融、IP侵害対応等の支援体制は一層堅固になった反面、
知的財産教育及びソフトウェア著作権保護の認識、生物資源を始めとする新しい知的財産の管理等は補完が必要だと評価された。

広域自治体の場合、これまで特許費用の支援、企業対象のコンサルティング、教育・人材養成等の取り組みが活性化されたが、
IP専門人材の拡充、関連機関との協力、地域企業の特性を踏まえた支援を強化する必要があると評価された。

課題別には、優秀課題7つ、改善必要課題6つを選定した。
秀課題事例は、機関に共有・配布してベンチマーキングするようにし、改善必要課題については広域自治体等を対象にコンサルティングを提供する一方、改善計画を策定して履行状況を点検する計画だ。

一方、会議を主宰したク・ジャヨル委員長は冒頭発言で、
「全世界が第4次産業革命の流れの中で、革新的技術が従来の産業と市場の秩序を崩壊させる転換期を迎えている状況にあり、優秀な知的財産の創出・保護・活用がいつにも増して重要だ」と強調し、
「今年は、知財委の発足から5年目の節目となるだけに、今年末まで韓国知的財産政策の青写真を構築することに全力を尽くしたい」と述べた。

さらに、知識財産戦略団(知識財産委員会事務局)のホン・ナムピョ団長は、
「韓国中小企業が中国等海外に進出する際、知的財産関連紛争により大きな被害を受けている。知財委中に中小企業の知的財産紛争の対応を支援する特別委員会を設置して7月から毎月開催し、今年中に韓国企業が満足するような成果を挙げたい」と話した。

ジェトロ・ソウル事務所知的財産チーム

ジェトロ・ソウル事務所 知的財産チームは、韓国の知的財産に関する各種研究、情報の収集・分析・提供、関係者に対する助言や相談、広報啓発活動、取り締まりの支援などを行っています。各種問い合わせ、相談、訪問をご希望の方はご連絡ください。
担当者:大塚、柳(ユ)、李(イ)、半田
E-mail:kos-jetroipr@jetro.go.jp
Tel :+82-2-3210-0195