知的財産ニュース 特許・知財権問題、ADR制度で解決

2016年7月27日
出所: デジタルタイムズ

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すべてがインターネットでつながる超連結社会が到来している今、国民生活の多くの部分がインターネットで行われている。それに伴い情報通信技術(ICT)に係る紛争も同時に増加している。以下では、韓国インターネット振興院(KISA)が運営するICT紛争調停支援センターの4つの紛争調停委員会を通じて最近の主な紛争事例と解決方法について解説する。

ICT世界の紛争、このように調停する

情報保護産業紛争調停

小規模情報保護会社A社は、次世代ファイアウォールの開発に成功し、同技術に対する国内特許を登録した。製品の発売後好評を得て販売量が増えていた中、情報保護関連大手のB社がA社の製品と類似した特許を出願した後、これを基にファイアウォール製品を開発して販売し始めた。これによって販売量が減少したA社は、B社のファイアウォール技術が自社の特許を侵害したと判断して、B社に損害賠償を請求した。これについてB社が盗用の事実を否定すると、情報保護産業紛争調停委員会に仲裁を申請した。

セキュリティ、特に情報保護が重要性を増しており、情報保護産業分野の紛争も増加している。また、情報保護に関する被害は非常に速いペースで広がっており、被害が広範囲で原状回復が難しいという点で、他の種類の被害とも違う様相を見せている。

政府は、このような被害の予防及び対応に向け情報保護産業の投資拡大を計画するとともに、今後情報保護関連紛争が頻発する状況に効果的に対処するため、昨年12月23日から施行されている情報保護産業法に基づき「情報保護産業紛争調停委員会」を発足させた。

同委員会は、事業者間又は事業者と利用者間の被害の救済と紛争を調停するために設置した法定機関で、情報保護製品やサービスの開発・利用に関して発生し得る様々なタイプの紛争を迅速かつ公正に解決することに注力する。関連産業に関する知識や経験が豊富な学界、法曹界、産業界、利用者機関・団体、公務員等22人からなる委員会を構成して運営している。

主に扱われる問題としては、コピー商品による特許侵害の救済、発注者のメインテナンス代価の未払いの被害救済等、主に小規模情報保護会社の被害救済が多くの割合を占めている。例えば、ブラックボックス等のセキュリティ製品を使用する中で発生する被害の救済、ソフトウェアに関する下請紛争の調停、特許権等の知的財産権(IP)の侵害に関する紛争の調停が対象となる。

同委員会は「代案的紛争解決制度(ADR)」を適用している。この制度は、紛争が発生した場合、第3者が関与するか、又は関与なしで当事者双方の自律的意思及び合意により紛争を解決する方法であり、裁判所の訴訟制度による紛争解決方式を補完する役割を担う。韓国では代案的紛争解決制度として和解、調停、仲裁、斡旋等、様々な制度が各種の法律に基づいて運営されている。

インターネット振興院は、委員会の紛争調停を通じて、国家安保のための防衛産業であり、次世代の高付加価値未来志向産業である情報保護産業の育成を促進するという計画だ。 特に不合理な慣行を改善し、海外に比べ脆弱な国内産業界の成長のためにも努力するとしている。情報保護産業紛争調停委員会のイ・ジョンヒョン事務局長は「訴訟による紛争解決は処理期間が比較的長く、費用も多すぎるため、零細な小規模情報保護企業の技術開発を妨害し、利用者の製品選別の判断力を鈍らせる問題点があり、これを解消するための調停機関が必要となる」と話した。

図1:情報保護産業の成長率グラフ、図2:情報保護企業の営業利益率・負債率グラフ

イ・ジェウン記者 jwlee@dt.co.kr

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