知的財産ニュース 職務発明補償制度、企業の負担を減らし補償対象を拡大

2016年6月30日
出所: 韓国特許庁

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職務発明の活用を促し、発明者と使用者の権益がより調和する方向へと職務発明補償制度が変わる。

特許庁は、6月29日午後3時にLタワーで開かれた「第17回国家知識財産委員会」において「職務発明補償制度の改善方策」が確定したことを明らかにした。

職務発明補償制度は、従業員が職務を遂行する課程において行った発明に対する権利を使用者に承継する代わりに一定の補償を受ける制度である。現行の規定は、職務発明の承継に係る企業の行政的負担が大きい反面、職務発明の活用機会が過度に制限されているという批判を受けていた。また、国家研究開発参加企業の職務発明補償規定の不備、職務発明と類似な知的財産に対する補償規定の不備等の問題もあった。

今回の案に含まれる制度改善の主な要点は、以下のとおりである。

  1. 職務発明の承継手続きを改善する。

    現行の規定によると、当事者間の職務発明を事前に会社が承継することになっている約定があっても、会社は4カ月以内にその多くの発明についていちいち文書で承継意思を通知しなければ職務発明を承継することができない。これは、従業員が約定に従わず職務発明を第3者に譲渡できる余地をつくることになり、国際共同研究及び海外企業誘致の障害となっているとの指摘が多かった。よって、使用者と従業員が事前に職務発明を会社に承継するということを約定することになれば、職務発明の完成と同時に会社が承継を受けられるよう関連規定が変わる。

  2. 職務発明に対し、企業の通常実施権を確保するようにする。

    現行の規定によると、中小企業と違い大・中堅企業が事前に職務発明を会社が承継するという規定を保有してない場合、職務発明に対する通常実施権の確保が制限されている。これについて会社が従業員を雇用し給与及び研究費、設備等を提供する点等を鑑みると過度な規制であり、また、職務発明が活用の機会までも制限されるという批判があった。よって、職務発明に対する企業の通常実施権の保有制限規定を緩和する。

  3. 国家研究開発参加企業の職務発明補償規定(事前承継の規定)の導入を制度化する。

    国家研究開発事業に参加する企業が、職務発明補償規定を保有してないため、所属の研究員が個人名義で特許を出願する事例が多数発生している。これに関する管理の必要性が持続的に提起されてきた。よって、国家研究開発事業の協約締結時に「職務発明に対する機関承継」を必ず含ませるよう研究管理標準マニュアルにこれを反映することにした。

  4. 職務発明の対象を半導体配置設計、植物新品種まで拡大する。

    現行の規定は、特許、実用新案、デザインのみ職務発明の対象として限定しており、職務発明と類似な性質の他の知的財産については別途の補償関連の規定がない。それで法律要件及び効果面において職務発明と類似な半導体配置設計、植物新品種まで職務発明の対象にし補償金請求権を認めることにした。

今回の職務発明補償制度の改善により、職務発明に対する権利の迅速な確定ができ、法的安全性が向上し、使用者による職務発明活用も活発になる見通しだ。また、政府研究開発成果の私的流用及び流出を防止でき、新知的財産に対する従業員の発明意欲を高め、国家産業発展に大きく寄与できるものと見られる。

チェ・ドンギュ特許庁長は、「職務発明補償制度は、企業のR&D投資と従業員の研究意欲を高め、核心技術及び人材流出を防止できるかなり効果的な制度である。同制度が合理的に運用され、企業と従業員間の利益が調和され共存できる関連制度を持続的に改善していきたい」と述べた。

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