知的財産ニュース リチウム二次電池の正極活物質に関する研究開発が活発

2016年5月30日
出所: 韓国特許庁

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携帯電話やタブレット等の小型IT機器分野と自動車分野において共通して注目される技術がある。最近、グローバル自動車メーカーテスラが2018年まで年間50万台の電気自動車を生産するという計画を発表し、高容量/高エネルギー密度の二次電池の開発に多くの関心が集まっている。

リチウム二次電池は、正極と負極の間でのリチウムイオンの移動により充電と放電が数百回以上繰り返し可能で、従来の鉛蓄電池やニッケル電池より優秀な作動電圧及びエネルギー容量を実現できるため、今後も市場規模はさらに急成長すると予測されている。これを構成する中核部品素材は、正極活物質及び負極活物質、分離膜、電解液に分けられるが、4代の素材のうち、原価の割合が最も高いものが正極活物質及び(36%)※であり、実際の二次電池の最終性能にも大きな影響を与えるため、関連技術の開発が非常に重要となる。

※正極活物質又は素材(cathode material):リチウム二次電池において正極電極に使用される活物質を意味し、コバルト、ニッケル、マンガン等の複合酸化物にリチウムイオンが保存された物質で構成されている。

特許庁によると、リチウム二次電池の正極活物質の製造(合成)に関する特許出願件数は1997年以降計216件あり、2008年以降から徐々に増加し2014年には45件だったという。

正極活物質を金属塩の構成成分(決定構造)によって見てみると、層状構造のLCO系5.1%(11件)、NCM系30.1%(65件)、NCA系5.1%(11件)であり、スピネル構造のLMO系16.2%(35件)、オルリビン構造のLFP系27.8%(60件)、その他リチウム系15.7%(34件)に区分することができる。

※LCO(二酸化コバルトリチウム)、NCM(ニッケルコバルトマンガン酸化物)、NCA(ニッケルコバルトアルミニウムの酸化物)、LMO(リチウムマンガン酸化物)、LFP(リチウムリン酸鉄) 

LCO系は、商業化初期から広範囲に使われてきたが、主な合成材料であるコバルト(Co)が高価で埋蔵量が限られているため、新規開発が進まず出願件数が少なく、相対的に価格と安全性に優れているNCM系は、電気自動車市場の拡大とともにその代替材料として開発され、出願が増加している。 また、LFP系は、オルリビン構造の化学的特性のために過熱/過充電の状況でも安全性が高く、寿命の特性も優秀であることから2010年以降からは最も注目されている素材だ。

国別では、韓国(133件、61.6%)と日本(79件、36.6%)が主流となっており、企業別でも(1)LG化学(59件、27.3%)、(2)サムスンSDI等のサムスン系列会社(28件、13%)、(3)住友(日、17件、7.9%)、(4)三井(日、11件、5.1%)の順となっている。従来の素材の国産化により、2010年以降からは全体の出願件数においても日本を追い抜いた。日本は、いまだにNCM系に重点を置いている反面、韓国は、高容量化、低価格化及び大型化を満足させる最適の素材であるLFP系とNCM系いずれにも関心を持って出願しており、素材企業(正極活物質製造)と需要企業(電池メーカー)も共に開発している等、独自技術の確保や共同協力を通じて、市場変化に備えているものと把握される。

特許庁の関係者は「従来のモバイルIT中心の市場から電気自動車/エネルギー貯蔵装置用二次電池等、中大型中心に市場が拡大しており、新しくて優秀な特性を持つ正極素材の源泉特許の確保が必要とある。特に、さらに安くて長続きし、安全なリチウム二次電池を開発するためには、4代の素材のうち正極活物質が最も核心であるため、今後需要と供給企業間の協力を緊密に維持しつつ、日本企業と競争できる基礎素材技術を持続的に確保する必要がある」と話した。

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