知的財産ニュース 香辛料の医薬用途の特許出願が増加傾向

2016年9月2日
出所: 韓国特許庁

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最近シェフが出演したり、芸能人が美味しい店を紹介する「グルメ番組」が人気を集めている。このような人気の背景には、視聴者の食欲をそそぐ香辛料の役割も大きいと思われる。香辛料は英語で「スパイス(spice)」だが、「薬品」という意味のラテン語「species」から由来した言葉から、昔は単に料理の味や香りを増進させる用途より医学的な使用の意味が大きかったことがうかがえる。

※代表的な香辛料としてはコショウ、マスタード、シナモン、ウコン、生姜等がある。

特許庁によると、過去10年間、生姜科植物素材の医療用途出願は計232件であり、2006年、2007年には各6件で少なかったが、2008年以降は毎年25~35件と大きく増加している。

生姜科植物に関する出願は大きく、実を漢方薬で使用する草果属、根の部分を香辛料や薬用で使える良薑属、ウコン属、生姜属に分けられる。出願件数では、ウコン属植物が104件と最も多く、次に生姜属(93件)、草果属(20件)、良薑属(15件)植物の順だった。

出願人の国籍を分析してみると、韓国人が大半を占めており(87%)、他の新薬開発分野に比べて国内での研究が活発であることが分かる。また、国内出願のうち、大学・研究所による出願は45%と、企業(29%)や個人出願(13%)に比べ高かった。

食欲をそそぐカレーの主材料であるウコンの場合、特有の黄色い色を作り出す主要成分である「クルクミン(Curcumin)」が糖尿や肥満等のような代謝性疾患(18%)、肝臓疾患及び二日酔いの解消(17%)に効果的である。特許出願された104件のうち、これに関する出願が多数を占めており、抗菌・抗ウイルス(13%)、炎症や腫瘍の成長を抑制させる抗炎(12%)、抗がん(11%)等の医療用用途で出願された。

生姜は、古代ローマ人の食中毒の解毒剤として利用され、3世紀の日本の貴族の風邪薬として使われた他、紀元前500年頃、孔子も食事時に一緒に食べたという。ジンジャーロール(Gingerol)と生姜オール(Shogaol)等を含む生姜は、アルツハイマーの最大の原因であるベータアミロイドという毒性物質から神経細胞を保護する効能があることで知られており、これに関連する出願が93件の出願のうち14%を占めている。また、抗炎(14%)、代謝性疾患(13%)、抗がん、抗菌・抗ウイルス等に関する医薬用途で出願された。

このように、同一の生姜属植物であっても、ウコンは肥満や糖尿等の代謝性疾患と二日酔いの解消に対する出願が相対的に多く、生姜は認知症の予防及び抗炎に対する出願がもっと多く見られた。

特許庁のイ・ユヒョン薬品化学審査課長は「ウコン、生姜等は、食材の味を引き立てるだけでなく、立派な薬にもなり得る。その香りの中に隠れている様々な薬理活性を利用した新薬開発に関心を傾ける必要がある」と述べた。

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