知的財産ニュース 特許庁、未活用特許診断モデル事業を実施

2016年2月29日
出所: 韓国特許庁

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政府出捐研究機関のA研究所は、最近悩みに悩んでいる。近年活用されていない特許(未活用特許)が増え、特許維持費の負担が急増したからだ。しかも、いざ未活用特許を整理しようとすると、研究者らの反対も激しく、どのような基準でどう整理しなければならないのかが分からず、戸惑っている。

特許庁は、公共機関保有特許の活用度を高めるとともに、未活用特許は最小化するため、大学・公共研究機関が保有した特許を診断し、特許管理戦略に関するコンサルティングを提供する「公共機関保有特許の診断支援」を今年から試験的に実施すると明らかにした。

知的財産活動実態調査(特許庁、2015年)によると、大学、政府出捐研究機関の特許活用率は32.9%と、企業の40~50%水準(活用率77.1%、事業化率57.0%)に過ぎない。こうした特許活用率を高めるためには、需要のある企業を発掘して移転させる等、技術移転・事業化支援も重要だが、活用可能性の低い特許を事前に整理・診断する体系的な特許管理も必ず必要となる。

このように大学・公共研究機関は、定期的に保有特許を調査・分析・評価し、維持するか放棄するかを決定し、有・無償技術移転戦略の構築等をしなければならないが、これを体系的に行う知的財産専門人材が非常に不足しており上、客観的な判断指標や手続きも整っていない状況だ。

このような点に着目し、膨大な特許情報と専門人材、多様な特許分析のノウハウを持っている特許庁は、今年から政府R&D特許を多数保有している機関を中心にまず10カ所の機関を選定して試験的に支援を行い、この結果を基に今後、大学・公共研究機関全体へと拡大する計画だ。

保有特許の診断は、公共機関が保有中である特許の質的優秀性と活用可能性を基に、管理等級を診断(1段階)し、機関レベルでの総合的な特許管理・活用戦略を構築(2段階)する手続きで進められる。 特に、OECD特許品質指標(PQI)、特許価値自動評価システム(SMART)、技術別特許移転率、企業の需要技術情報、技術寿命周期等、検証された特許指標の分析や特許・技術専門家のアドバイスも提供される予定だ。

特許庁のキム・テマン産業財産政策局長は「現在韓国では、特許登録までの作業ばかり重視されており、登録後の定期的な分析・評価等、体系的な特許管理の努力は多少足りないのが現状だ。特許庁の専門性とノウハウを活用して、不要な特許費用は最小化しつつ、未来有望な特許権は戦略的に確保する特許管理文化が研究現場に定着するように努力する計画だ」と述べた。

ジェトロ・ソウル事務所知的財産チーム

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