知的財産ニュース 静電気を活用する自家発電装置の特許出願急増

2016年10月10日
出所: 韓国特許庁

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冬になると、ふわふわのセーターを着るときに静電気でパチパチとした経験は一度ぐらいはあるだろう。このように静電気は日常生活で邪魔になるものとされてきた。ところが最近、ウェアラブル機器の登場で自家発電装置であるナノ発電機[1]が注目を受けており、静電気に対する認識が見直されつつある。

※ナノ発電機はバッテリーの交換や外部充電の必要がない半永久的電源装置であるため、無線ネットワーク等に装着される各種のセンサーやウェアラブル機器のための未来の代替電源として大きな期待を受けている。

自家発電装置であるナノ発電機を主導した技術の流れが圧力を活用する「圧電型」技術から静電気を活用する「摩擦型」技術へと変化している。

特許庁によると、ナノ発電機に関する特許は過去5年間(2012~2016.9)計382件出願されており、このうち「摩擦型」が111件、「圧電型」は243件という。

出願の割合では圧電型が64%と大きいが、分野別出願の推移をみると「摩擦型」の特許出願が2012年0件から2015年42件へと急増している。一方、「圧電型」は2012年78件から2015年39件に激減したことが確認される。

これは「摩擦型」が「圧電型」より相対的に製作しやすいだけでなく、発電素子の構造を制御することでさらに大きな出力が得られるためと分析される。

※ナノ発電機は、大きく二つに分けられるが、圧電素子[2]に微細な圧力を加えると電気が発生する圧電効果を利用する「圧電型」と異なる二つの物質が摩擦するとき静電気が生じる静電効果を利用する「摩擦型」がある。

特許出願が急増している「摩擦型」ナノ発電機の過去5年間(2012~2016.9)の細部出願動向を見ると、学界の出願が73%と、産業界の出願(9%)を遥かに上回る。これは、現在の「摩擦型」ナノ発電機技術の水準が商用化ができる段階までは到達していないことを示唆する。

また、韓国人による出願の割合は96%に達しており、国内出願を基盤とした国際出願の割合は9%に過ぎない。開発の初期段階にあり、各国において海外特許の確保戦略がない今こそチャンスになり得ることを考えると、残念である。

一方、摩擦面積を増やすための発電素子の物理的構造や配置に関する出願は90%であるのに対し、発電素子の素材そのものに関する出願は10%にとどまる等、基礎技術の研究は不足していることが分かった。

ネットワーク装備会社のシスコによると、モノのインターネット(IoT)の発達により2020年まで数兆(trillions)のセンサーが地球の隅々に設置されると予測されるところ、自家発電装置に対する需要もそれ分だけ急増するものとみられる。

特許庁のソン・ベクムン電力技術審査課長は「韓国の産業界もこれから摩擦型ナノ発電機の市場潜在力に注目し、既に研究能力を高めてきた各大学の産学協力団等学界と連携して積極的な特許確保戦略を推進していく必要がある」と話した。


注記

[1] ナノ発電機は、ナノサイズ(髪の毛の厚さの10万分の1)の物質を利用して人体の動き等のように日常生活でよく発生する機械的エネルギーから電気エネルギーを収穫(Harvesting)する先端技術である。
[2] 圧電効果とは、個体に外部の力を加えたとき、結晶の表面に電気的分極が起こる現象を意味し、圧電素子とは、酸化亜鉛等のように圧電効果を出す素子のことをいう。

ジェトロ・ソウル事務所知的財産チーム

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