知的財産ニュース 気候変動を乗り越える農業技術の特許出願が活発

2016年10月26日
出所: 韓国特許庁

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気候変動による環境ストレスを克服する代表的な方法として、生命工学技術と伝統的農業技術の結合である形質転換植物体に関する研究と作物保護剤の開発があるが、これに関する特許出願が着実に増えている。

環境ストレスに対する農作物抵抗性を増進させる農業技術

農作物を栽培する際、干ばつのような乾燥、梅雨のような過度な湿気、日照量不足や高温又は低温現象のような環境ストレスに対して抵抗性を持つように、効果のある作物保護剤を直接散布したり、遺伝的に形質転換された植物体等の品種開発が地道に続いている。

このような農業技術の開発事例としてアブシシン酸(abscisic acid)の活用が挙げられる。高温と雨不足の環境で植物は自然的にアブシシン酸というストレスホルモンを生成し、このホルモンが植物の葉にある気孔(stomata)を閉めて水分損失を減らすことで、植物の生存に役立つ有益な変化を誘導する。しかし、この物質は光ですぐ不活性化するため農業に利用するのは容易ではない。

このような理由からアブシシン酸の代わりに、これと類似した物質であるフッ素に置換されたアブシシン酸を作物保護剤として開発したり、遺伝学的にアブシシン酸経路を活性化させ干ばつでも作物が生存できるよう形質転換された植物体を開発している。

ストレス抵抗性を増進させる植物保護剤と形質転換植物体(種子を含む)に関する特許出願現況

特許庁によると、2005年~2015年までに環境ストレスに対する農作物の抵抗性を増進させる農業技術の特許出願は計340件だが、作物保護剤と形質転換された植物体(種子を含む)に関する出願がそれぞれ32件と308件で、形質転換された植物体の出願が作物保護剤をはるかに上回っていることが分かった。これは、ストレス信号の伝達メカニズムを理解して形質転換された植物体又は種子を開発することが作物保護剤より利用可能性が高いためとみられる。

また、2010年以降は毎年30件以上の出願されており、このうち韓国人による特許出願は全体の約87%を占めている。注目されるのは、国内研究機関が特許出願を主導している(韓国人による出願の93%)ことだが、これは国内研究機関で蓄積された生命工学技術を基に農業技術を融合した結果と見られる。

特許庁のソン・ヨンウク応用素材審査課長は、「作物保護剤や品種開発等に関する農業分野は、長期的に見て収益性が高い産業分野だ」とし、「農業は急速に発展している生命工学技術又は情報技術との結合により、持続的に成長できる産業になると思う」と強調した。

ジェトロ・ソウル事務所知的財産チーム

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