知的財産ニュース 3D立体音響技術に関する特許出願が増加傾向

2016年7月9日
出所: 韓国特許庁

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ステレオシステムを基盤とした立体音響実現技術に関する研究開発が着実に行われ、これに関する特許出願も増加傾向にある。

特許庁によると、過去3年間立体音響技術関連の国内特許出願は2013年342件、2014年329件、2015年382件と、計1,053件と集計された。

出願技術をオーディオ再生装置の観点から区分すると、二つのスピーカー(2チャンネル)に出力するステレオシステム技術が393件、追加的なスピーカー(マルチチャンネル)が必要なサラウンドシステム技術は243件出願された。 二つの技術を含む共通技術は417件だ。

これは、事実上立体音響の標準規格である5.1チャンネルオーディオが普及した後も、2チャンネルオーディオを活用して立体音響を実現しようとする研究開発が活発に行われていることを示唆する。

特許技術の多出願人はサムスン(168件)、フラウンホーファー(ドイツ、116件)、クアルコム(米国、88件)、ドルビー(米国、63件)、韓国電子通信研究院(59件)の順だった。次いで国内大学(58件)と中小企業(40件)が加勢し、韓国人出願の割合は60%水準へと次第に増えている。

特許出願の技術動向を見ると、立体音響実現技術は、3次元実空間で感じる音源の方向と距離感をスピーカーを通じてそのまま再現するための方向に発展した。

そのために、ソフトウェア的に仮想音源を出力する2チャンネル方式は、ダミー・ヘッドを利用したバイノーラルレコーディング技術、音波の空間伝達関数(RTF[1])を適用した音長模擬技術、頭部伝達関数(HRTF[2])を使って360°全方位で仮想音源を演出する認知的再生技術等が改良発明されている。

一般人が安価で手軽に楽しめる2チャンネル方式は、対話型放送コンテンツ、仮想現実、増強現実、ゲーム、医療産業等により適しており、さらに、難聴者を対象に個人対応型立体音響を提供することも可能だ。

また、スピーカーを通じて実質音源を出力するマルチチャンネル方式は、音客体別分離録音技術、7.1チャンネル又は9.1チャンネルから256チャンネルに至る高チャンネル化技術、スピーカー配置技術、チャンネル別特徴パラメータを利用したアップ・ダウンミキシング技術、雑音・クロストーク[3]除去技術等が改良発明されている。

マルチチャンネル方式は、多くのスピーカーを必要とするためコストが高い上、設置時に熟練した専門家が必要となり映画館や公演場、オーディオマニアを中心に普及される。

特許庁のマ・ジョンユン電子部品審査チーム長は「実際にバイノーラル方式の2チャンネルの試作品で実感音響を鑑賞して見ると、その技術力に感心する。多様な分野における活用性が高いだけに、関連技術はさらに発展するだろう」と述べた。


注記

[1] RTF(Room Transfer Function) : 実際空間で発生した音について、特定の位置でインパルス応答を録音して時間軸を周波数軸に変換した値で、これを利用すれば、録音された音源に空間感を与えることができる。
[2] HRTF(Head Related Transfer Function):音は、人間の頭の形と聴覚期間である耳の形状によって違う音に聞こえるが、音の発生位置を360°の方位角と180°の高度角の間を特定の間隔に分け、それぞれの位置で発生した音が両耳に到達する時点でインパルス応答を求めた値
[3] クロストーク:構造上、二つのチャンネルが近くにあると、片方のチャンネルの信号が他方のチャンネルに流れ込むが、そうすると音の明瞭さが低下する。このようにチャンネル間の干渉により信号が歪曲されることを意味する。

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