知的財産ニュース 特許法改正‐損害額の立証に係る証拠提出の強化

2016年3月25日
出所: 韓国特許庁

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これからは特許を侵害すれば、大金を弁償しなければならなくなる見通しだ。特許庁は「特許侵害及び損害額の立証を容易にする特許法改正案が3月22日国務会議を通過し、3月29日に公布される予定であり。これによって、特許侵害者の損害賠償責任が大幅に強化される見通しだ」と発表した。 改正法は公布後3ヵ月後の6月30日から施行される予定だ。

今回改正された特許法の主な内容は次のとおり。

  • 第一に、侵害及び損害額の立証に必ず必要な証拠であれば、当事者の営業秘密に該当する資料であっても閲覧制限を条件に提出を強制できるようになった。特許侵害訴訟においては、侵害者の生産マニュアルや売上帳簿等、企業の営業秘密に該当する資料が必要な場合が多くある。これまでは、企業が営業秘密だと主張すると提出を強制することが難しかったが、今回の改正により、判事、弁護人等に閲覧者を制限するという条件付きで関連資料の提出を強制できるようになった。
  • 第二に、侵害者が資料提出命令に応じなければ裁判部は特許権者が主張する事実をそのまま認められるようにした。例えば、侵害者が売上利益が記載された帳簿の提出命令に応じない場合、特許権者が主張する侵害者の売上利益額をそのまま認めて損害賠償を認めることができるようになる。
  • 第三に、損害額の算定と関連して裁判所が鑑定を命じた場合、関連資料を提出した当事者は鑑定人に資料の内容について説明しなければならない義務が新設された。証拠資料が提出されるとしても、その資料の内容を把握するためには、作成者の説明が必要となる。特に複雑な会計帳簿の場合は、作成者でないと分からない表記や暗号があり、なおさらだ。
  • 第四に、デジタル資料も資料提出命令の範囲に属するように明文化した。

これまで、特許侵害の立証が難しく、損害賠償額が低かったため、中小企業が技術を奪い取られても実質的な補償は難しいという指摘があった。また、低い補償額は、特許を担保にする技術金融が活性化できない要因ともなり、企業が技術の取引よりは技術の横取りを狙う原因となってきた。遅ればせながら、今回の法改正により、知的財産権における好循環構造が定着し、ベンチャー起業と創造経済がさらに活性化するものと評価されている。

※特許侵害訴訟における損害賠償額の中央値: 韓国5千9百万ウォン(2009~2013年)、米国49億ウォン(2007~2012年)

特許庁のパク・ソンジュン産業財産保護協力局長は「法律の改正より適用がより重要なので、裁判所は改正法の趣旨を生かして積極的に適用してくれることを望んでおり、さらに、この3年間法改正のためにご尽力くださった国会の世界特許(IP)ハブ国家委員会や学界、業界、法曹界等、各界の専門家の方々のご協力に感謝を申し上げる」と述べた。

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