知的財産ニュース 商標法、26年ぶりに全部改正

2016年2月25日
出所: 韓国特許庁

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特許庁がこの3年間各界からの意見を聞き入れ、準備してきた商標法全部改正法律が来週公布される予定だ。 改正商標法は公布後6ヵ月が経過した9月1日から施行される。これに先立ち、商標法全部改正法律は2月4日、国会の本会議を通過した。

今回の商標法全部改正は1990年の全部改正以降26年ぶりに行われるものであり、その意味は大きい。1990年以降、商標法は実に23回の改正があり、それによって枝条文が過度に羅列される等、体系の統一性が落ちており、内容も日本語からそのまま取り入れた表現が多く、国民が法を理解するのに困難があった。

今回の全部改正法律は、(1)商標の定義を国際的な流れに合わせ簡潔に整備、(2)使用していない商標に対する商標登録の取消審判を誰でも請求できるように請求人の範囲を拡大、(3)先出願登録商標の類似可否の判断時点を登録可否の決定時点に変更する等、出願人の利便性向上や商標法の国際的調和に重点が置かれた。

まず、現在限定的に表現されている商標の定義を例示的に表現することで、国民が商標とは何かを分かりやすいようにした。これは、米国・欧州等の表現方式と同じものであって、商標が商品の出所を示し本来の機能をするのであれば、その表現方式に制限を設けず、全て商標として認められるようにした。

改正前

改正後

  1. 商標とは、商品を生産・加工又は販売することを業として営む者が自己の業務に係る商品を他人の商品と識別されるようにするために使用する標章
    1. 記号・文字・図形、立体的形状又はこれらの結合(色彩結合を含む)
    2. 色彩又は色彩の組合、ホログラム、動作又はその他に視覚的に認識することができるもの
    3. 声・匂い等視覚的に認識することができないもののうち、記号・文字等の視覚的方法により写実的に表現したもの
  1. 「商標」とは、自己の商品と他人の商品を識別するために使用する標章をいう。
  2. 「標章」とは、記号、文字、図形、音、匂い、立体的形状、ホログラム、動作又は色彩等によって、その構成や表現方式に関係なく、商品の出所を示すために使用する全ての表示をいう。

次に、これまで使用していない商標に対する商標登録の取消審判を「利害関係人」のみ請求することができたのを「誰でも」に拡大した他、取消審判の審決が確定すれば、その審判請求日に遡及して商標権が消滅するようにし、登録を受けたのに実際には使用せず、他人の商標選択権や企業の営業活動を制限するという問題点を解消した。

改正前

改正後

請求人の適格:
出願人又は商標権侵害者等「利害関係人」
※利害関係人の証明必要

請求人の適格:誰でも
※利害関係人の証明不要

権利消滅時点:

図:改正前の権利消滅フロー

権利消滅時点:

図:改正後の権利消滅フロー

また、これまでは出願人が商標を出願する当時に同一又は類似した先登録商標があると、審査過程において先登録商標が消滅しても登録を受けることができず、不利益が生じていた。

しかし、今回の改正により、最終登録可否を決定する際に当該先登録商標が消滅したならば、登録を受けられるようにした。また、商標権が消滅した後1年間他人の同又は類似した商標の登録を排除していた規定を削除することで、出願人が新たに出願することによって発生する時間と費用を削減し、迅速な権利化ができるようにした。

改正前

図:改正前・先登録商標がある場合の商標出願フロー

改正後

図:改正後・先登録商標がある場合の商標出願フロー

さらに、商標が最終登録されれば、登録事実を商標公報に公告するようにして、国民が商標に関する情報にアクセスしやすくした他、出願人の細かい記載ミスを審査官が職権で直すことを可能にし、やむを得ない事由により手続きを逃した場合、救済期間を14日から2カ月に延長する等、これまで提起された出願人の不便を解消するための改善事項も全部改正に反映した。

特許庁のチェ・ギュワン商標デザイン審査局長は「今回の商標法全部改正法律は、学界、企業の専門家らからの意見収集の上、法制処及び国会等で3年余りの準備期間を経てできたものである。国民の商標選択機会を拡大する等の規制緩和や出願人の利便性向上に重点を置いて推進したものであるだけに、国民の商標法に対する理解の向上及び企業の営業活動の支援に貢献できると思われる」と期待を示した。

ジェトロ・ソウル事務所知的財産チーム

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