知的財産ニュース 中国半導体市場の成長、国内人材流出への懸念も

2016年8月15日
出所: デジタルタイムズ

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中国2位のディスプレイメーカー、チャイナスター(CSOT)は、最高経営者(CEO)にLGディスプレイの副社長出身のキム・ウシク氏を選任した。彼はLGディスプレイ、坡州7世代LCD生産工場の建設と量産を総括した中核的な人物だ。

中国最大のディスプレイメーカーのBOEがこれまで100人以上の韓国人人材をスカウトしたことが分かった。2003年、韓国のLCDメーカーであるハイディスを買収して核心技術や人材を手に入れ、今やディスプレイ産業の強者に成長している。同社は、国内装備メーカーのエンジニアを継続してスカウトし、技術格差を減らしている。

中国が「半導体・ディスプレイ崛起」を宣言し、昨年から今年まで75兆ウォン以上の設備投資を大々的に進め、国内装備メーカーが久しぶりに高い実績を上げている。しかし、中国の市場規模が大きくなっただけに、莫大な資金力を基に装備だけでなく、国内の中核的な人材まで引き抜いていくという懸念の声が高まっている。

業界によると、中国発の半導体・ディスプレイ装備の発注が相次ぎ、韓国装備メーカーは数年ぶりに好調を続けている。実際、国内装備メーカーのディエムエスは、中国のBOEが福州に建設中の8.5世代液晶表示装置(LCD)工場と10.5世代LCD工場に425億ウォン規模のディスプレイ製造用装備を供給する。シンソンエフエーも今年、997億ウォン規模の工程自動化装備を供給した。中国2位のディスプレイメーカー、チャイナスター(CSOT)も8.5世代LCD工場を作っており、今後2~3年間国内の装備メーカーの受注はさらに続く見通しだ。

国別半導体装備出荷額の推移及び増減率(単位:10億ドル)

区分

2016年第1四半期

2015年第1四半期

増減率

台湾

1.89

1.81

4%

韓国

1.68

2.69

-37%

中国

1.6

1.16

39%

日本

1.24

1.26

-2%

北米地域

1.01

1.47

-32%

その他地域

0.51

0.43

18%

欧州

0.35

0.69

-49%

全体

8.28

9.5

-13%

(資料:国際半導体装備材料協会)

このように、中国発の追い風に国内の装備メーカーは実績を挙げているが、喜んでばかりにはいられない状況だ。当面は売上が発生するが、中国への人材流出等、脅威が存在しているためだ。 中国メーカーは、韓国発注の経験がある人材や装備メーカーの人材をスカウトし、韓国のノウハウと技術を確保するという戦略だ。特に中小企業の人材は、半導体工程の進行順序等について把握しているため、短期間で韓国を追撃できる良い資源となる。

実際、昨年中国の半導体関連業種に就職した韓国人材は1,000人を超える。中国のBOEに就職した国内中小企業の人材は現在100人余りで、チャイナスターにも数十人の韓国人従業員が努めていることが分かった。

サムスン電子とSKハイニックス等国内の大手企業は、これに対応して同種業界への転職制限、退職幹部の管理等のシステムを導入した。しかし、これも全体退職者の10%だけを管理している水準だ。処遇が劣悪な中小の装備会社の場合は、これすら難い。ある半導体装備会社の関係者は「中国が莫大な資本力を武器に装備メーカーのエンジニアに高額の年収を提案して誘ってくるというが、強い使命感や愛国心がない限り、誘いに乗ってしまうのが現状だ」と話した。

実際に、最近中国2位のディスプレイメーカーであるチャイナスター(CSOT)は、LGディスプレイ副社長出身のキム・ウシク氏を代表取締役に選任した。これに先立って、サムスン電子とSKハイニックスで副社長を務めた後、STXソーラー・社長を経て、ハンファキューセルでCTOを務めた半導体専門家も昨年末、台湾で半導体関連のコンサルティングをすることになっている等、半導体業界に人材流出の恐怖が広まっている。

このような人材流出を阻止することは容易ではない。産業技術流出防止法等があるが、子会社に入社する等、法の網を巧妙にくぐり抜ける。大企業は中国への人材流出に備えて年収の引き上げや教育機会の提供等、核心人材に対する管理を強化している。一方、中小装備メーカーは、中国顧客会社の要求を断ることが容易ではなく、従業員の待遇を改善することも難しいため、無策でやられざるを得ない状況だ。

このような状況を受け、政府は大手企業と共同で共生協力システムを構築し、人材や研究開発を支援する形で問題を解決するとしているが、このような対策が通用するかどうかは疑問だ。

産業通商資源部の関係者は「サムスン電子やSKハイニックス等、企業と協議して人材流出を防ぐ対策について意見をまとめている。敏感な事案であり、企業別の状況が異なるため、細部の対策がまとまるまでは時間が必要だ」と話した。

キム・ウン記者 silverkim@dt.co.kr

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