知的財産ニュース 特許法院への管轄集中、中途半端という指摘も

2015年12月23日
出所: 電子新聞

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特許法院への管轄集中に仮処分抗告は含まれていないことが確認された。

新年から特許法院が特許侵害訴訟を集中管轄することになるが、仮処分抗告は今までのように高等法院が管轄する。特許法院管轄集中の適用対象は民事本案事件で、仮処分事件は除外された。この場合、特許侵害事件では本案審理より仮処分事件の比重が大きいため特許法院管轄集中の効果が限られる恐れがある。

仮処分抗告、今後も高等法院が管轄

最近開かれた「韓国知識財産学界・産業技術保護専門委員会・情報通信技術振興センター共同セミナー」にて、弘益大学のアン・ウォンモ教授と太平洋法律事務所のクォン・テクス弁護士は、「特許法院管轄集中によるメリットは多いと思う」としながらも「仮処分抗告が特許法院に移管されなかったのは残念だ」との考えを示した。

「仮処分」とは、法廷で争う本案審理に先立ち、裁判所が特許侵害被疑者に暫定的に侵害禁止命令を出すことをいう。「仮処分抗告」とは、1審裁判所が下した仮処分決定に不服し、再度2審裁判所に仮処分申請をすることをいう。

アン教授は「特許侵害事件で、本案審理より仮処分事件で激しく争い、仮処分事件で終結されるケースが多い」と指摘した。クォン弁護士も「一部の訴訟代理人が仮処分申請・抗告で特許侵害事件を誘導する可能性が大きい」と予想した。

同セミナーで発表を行った特許法院のハン・ギュヒョン首席部長判事は「大田にある特許法院まで行かなければならないので、司法へのアクセスという面から立法過程で仮処分抗告が含めなかったものと考えられる。ただ、民事本案1審管轄集中の効果はあると思う」と述べた。特許侵害訴訟の本案審理を5つの地方法院が行う場合、当該地法で仮処分事件の処理が可能となり、管轄集中効果が生じるとの話だ。

特許侵害訴訟1審、5つの地方法院への配置も懸念材料

特許侵害訴訟1審を5つの地方法院に配置したことも問題として指摘された。

アン教授は、経験豊富で技術に詳しい判事が5つの地方法院のそれぞれに配置できないと、判決の一貫性は落ちてしまうと指摘した。特許法院管轄集中により「特許審判院-特許法院-大法院」と「地方法院-高等法院-大法院」に分かれていた特許紛争は、特許審判院(行政)又は5つの地方法院を経た後「特許法院-大法院」という段階に簡素化されたため「判断の不一致」問題がかなり解消し、「迅速な裁判」も期待できるようになったが、判決の一貫性を一層向上させるためには1審法院の数をさらに減らすべきだったというのだ。2005年に知的財産高等裁判所を設置した日本は、1審法院を東京と大阪地裁の2カ所に管轄集中させた。

判決が下される際に重要な役割を担う技術審理官や技術調査官を5つの地法に適切に配置することも課題とされる。現在、特許法院が契約職員として技術調査官の募集を進めているが、選抜に困難を抱えているという。

大田特許法院の集中管轄適用対象は特許実用新案商標品種保護の5つ部門における民事本案時間となる。民事仮処分事件と刑事事件は担当しない。1審はソウル中央地方法院と大田、大邱、釜山、光州地法の5カ所が、2審は全て特許法院が管轄する。1審においてソウル中央地方法院は選択的に重複管轄することができる。

イ・ギジョン記者 gjgj@etnews.com

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