知的財産ニュース 電子書籍に関する商標出願が着実に増加

2015年10月22日
出所: 韓国特許庁

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「読書の秋」という言葉があるように、秋は読書に最高の季節である。近年、指でページをめくる紙の本より電子書籍の人気が向上し、電子書籍の商標出願もここ10年で着実に増加している。

※電子書籍:本の内容をデジタル情報に加工し、貯蔵した出版物の通称

特許庁が発表した過去10年間(2005~2014年)の商標出願動向に見ると、電子書籍の商標出願は2005年に1,246件だったが、2014年には2,345件が出願され、わずか10年で88.2%増という大幅な成長を記録した。それに対し、紙の本は2005年2,192件、2010年2,156件、2014年には2,125件と、大きな変動なく同じ水準を維持していることが分かった。

特に昨年は電子書籍出願が前年比184件(8.5%)増加した。今年上半期時点でも1,092件出願され、紙の本(1,023件)の出願を上回っており、その差は少しずつ広がっているという。

このような電子書籍の人気の背景には、まず外部環境の要因がある。2000年代後半から始まった「スマートフォンの革命」により、小説や外国語、ウェブトゥーン等、多様なジャンルのコンテンツをアプリに取り込む読者層が増え、電子書籍産業に対するニーズが大幅に増加した。

ウェブトゥーン:webとCartoonの合成語

電子書籍の長所としては、制作費と流通費の削減により手頃な価格が実現できる、在庫への負担が少ない、品切れになった本もいつでも手に入れられるということ等がある。さらに、本の内容のアップデートが容易であるだけでなく、音・映像等を入れることで多様な感性を満足させることができる点も電子書籍の成長要因とされる。

一方、過去10年間(2005~2014年)出願された電子書籍及び紙の本の出願類型を見ると、電子書籍は、全体17,731件のうち英文字商標が9,431件、ハングル商標が5,809件(32.8%)、英文字とハングル文字の複合商標が2,491件(14.0%)出願されており、英文字商標が半数以上を占めている。

それに対し、紙の本は全体22,381件のうち、ハングル文字商標が10,043件(44.9%)、英文字商標が8,037件(35.9%)、英文字とハングル文字の複合商標が4,301件(19.2%)と、ハングル文字商標の割合が高い。これは、電子書籍が英語に慣れている若者を狙っているのに対し、紙の本は英語よりハングルを身近に感じる中高年層が主な読者層であるからだと考えられる。

また、書籍出版業関連のサービス標の出願は2005年に2,459件だったが、2014年には2,803件と344件(13.9%)増加した。今年6月時点現在は1,474件と、去年より若干増加傾向にある。これは、出版業界の低迷や紙の本の苦戦にもかかわらず、電子書籍に対する需要が増えているからだと考えられる。

※サービス標:自分のサービス業を他人のサービス業と区別するために使う標章

特許庁のチェ・ギュワン商標デザイン局長は「電子書籍の発売初期は、近いうちに電子書籍が紙の本に取って代わるのではないかという懸念があったが、現時点では電子書籍と紙の本が良きライバルとして競い合いながら、消費者のデジタル及びアナログへのニーズを満足させるため努力しているようだ」と評価した。さらに、「電子書籍、紙の本、出版業関連商標及びサービス標の間では、商標及びサービス業の属性と取引実情が同一又は類似しており、同一又は類似した先出願もしくは先登録がある場合は登録を受けられないため、出願前に交差検索を十分に行わなければならない」と述べた。

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