知的財産ニュース 産業財産権紛争調停制度の利用が増加

2015年10月28日
出所: 韓国特許庁

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特許庁は、産業財産権紛争の迅速・低廉な解決に向けた代替的紛争解決手段[1](ADR:Alternative Dispute Resolution)の一つとして運営している産業財産権紛争調停制度[2]の利用件数が最近増加していることを明らかにした。

産業財産権紛争調停制度とは、産業財産権や職務発明を巡る紛争が発生したときに、専門家からなる産業財産権紛争調停委員会[3]が調停案を提示する制度である。これにより当事者間の和解を誘導する制度として1995年から運営してきたが、調停や仲裁のような代替的紛争解決手段への認識が足りなかったため、これまではあまり利用されなかった。

これまで、産業財産権紛争調停制度の利用件数は年5件以下で、非常に低迷していた。しかし、2014年に計11件の紛争調停の申請があり、今年第3四半期時点でも前年度を上回る12件の申請があり、制度導入以来最も多い年間申請件数となる見通しだ。

このような紛争調停の利用増加は、知的財産権専門機関である特許庁が運営する紛争調停制度の認知度が全般的に高まっているからだ。また、今年から実施中の検察に係留中の産業財産権関連の刑事事件を特許庁の産業財産権紛争調停制度を通じて事前審議する検察事件連携調停がスムーズに定着しているからだと考えられる。

産業財産権紛争調停制度は別途の申請費用がかからず、申請日から3カ月以内に調停手続きが終わるので、審判や訴訟より迅速且つ簡便に紛争を解決できる。さらに、調停が成立すると調停調書は確定判決のような裁判上和解の効力を持つため、合意事項が履行されない場合、強制執行手続きを踏むこともできる。

特に、今年は申請件数とともに、調停が成立し両当事者が和解をする割合も上昇している。退職した職員が前職の会社を相手取って職務発明補償金の支給を請求した事件では、過去最高の金額で調停が成立した。また、デザイン侵害を理由に刑事告訴や審判請求等で争っていた中小企業が告訴や審判を取下げ和解をする等、産業財産権紛争調停制度を利用し、紛争を円満に解決するケースが増え続けている。

特許庁のクォン・オジョン産業財産保護協力局長は「韓国では、知的財産権を巡る紛争が刑事事件に発展する傾向が大きいが、特許法違反事件に対する検察の起訴率は10%にも満たない。知財権紛争が発生したとき、刑事手続きよりは紛争調停制度を通じて円満に解決する文化が定着することを期待する」と述べた。


注記

[1] 裁判所の厳格な訴訟手続き及び裁判所の裁判を通じて紛争を解決するのではなく、裁判(訴訟)以外の方法により紛争を自律的に解決することを言う。
[2] 産業財産権を巡る紛争が起きた場合、訴訟や審判にかかる費用や時間の節約を目指して特許庁が設置した「産業財産権紛争調停委員会」が当事者間の和解を導く制度。
[3] 特許庁が直接運営する制度であり、産業財産権紛争解決において専門性が高く、無料で利用できる。

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