知的財産ニュース 特許庁、優先審査対象に高齢者と時限付き患者を追加

2015年8月20日
出所: 韓国特許庁

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(事例)大企業から退職したAさん(67歳)は、長い経験で蓄積された技術を基にビジネスを立ち上げたが、ことごとく失敗し、数億ウォンを失った。Aさんは特許出願で再起を図ったが、特許出願だけでは事業化は難しかった。高齢者であるAさんにとって16カ月にも上る特許審査処理期間は長すぎる上、数十年の知識が蓄積されているAさんの発明は優先審査対象にもならない。今Aさんは、わずか残っている退職金さえすべてなくすことを恐れている。

特許庁は、高齢者と時限付き患者(余命宣告を受けた患者)による特許出願を優先審査対象に追加した特許・実用新案優先審査の申請に関する告示を8月19日から施行すると発表した。

※時限付き患者とは、「健康に重大な異常があり、優先審査を受けなければ、特許決定まで、特許に関する手続きを踏むことができないと予想される者」であり、時限付き患者に関する判断は、医療機関が発行した診断書又は所見書に基づく。

今回の制度改善は「高齢者起業」の環境整備を目指している。最近の統計庁の資料によると、経済活動人口に占める高齢者(65歳以上)の割合は2005年の5.73%から2014年の7.71%へと、その割合が急激に拡大している上、高齢者の特許・実用新案出願件数も2005年に比べ、30.4%(2014年基準)増加した。

※特許・実用新案出願件数(65歳以上出願人):1,556件(2005年)→2,029件(2014年)

いわゆる「100歳時代」を迎えている中、経済活動への旺盛な意欲と能力を持つ高齢者は優先審査制度を通じて、これまで培ってきた知識や経験を早期に権利化できるようになる。

また、時限付き患者の出願に対しても優先審査サービスを提供する予定だ。これは、実際に出された時限付き患者の要望に対する後続措置で、審査結果を長く待つことが困難な出願人を配慮するという趣旨から設けられた。

今後、高齢者と時限付き患者が優先審査を申請すると、一般審査に比べ平均8.8カ月(着手基準)及び10.5カ月(終結基準)の審査処理期間短縮の恩恵を受けられる見通しだ。

※平均着手期間・終結期間:優先審査(2.2カ月・5.4カ月)、一般審査(11.0カ月・15.9カ月)

チャン・ワンホ特許審査企画局長は「優先審査申請対象の拡大を通じて、高齢者の豊富な社会経験や知識を早期に権利化することで経済活動を支援できる他、クリエイティブなアイデアが死蔵されることも防止できると期待している」と述べた。

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