知的財産ニュース 特許庁、海外における知財権紛争の実態調査結果を発表

2015年6月24日
出所: 韓国特許庁

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特許庁は、輸出企業が海外で巻き込まれる知財権紛争の現況を把握するために実施した海外における知財権紛争の実態調査(調査機関:2014年10月~2015年4月)の結果を発表した。

今回の実態調査(韓国知識財産研究院が遂行)は、知財権を有している輸出企業12,000社を対象に1次電話調査を実施し、その中で知財権紛争経験のある101社に対して2次アンケート調査を行うことで紛争に関する細部実態を調査した。
※アンケート調査に回答した101社は、中小企業56.4%、中堅企業21.8%、ベンチャー企業14.9%、大企業6.9%となっている。

1. 輸出企業の海外知財権紛争の36%が中国で発生

調査結果によると、輸出企業の知財権紛争が最も多く発生した国は中国だった。調査対象企業101社が経験した全体の知財権紛争件数は235件(被侵害紛争1)131件、侵害紛争2)104件)だが、このうち86件(36.3%)が中国で起きており、米国では59件、欧州で31件、日本で21件が発生した。

中国で起きた知財権紛争を権利類型別にみると商標権紛争が65件で最多となっており、中国における商標権紛争への対応が急がれる。これは、韓国企業による中国進出の拡大に伴い、中国企業の模倣品が増加した結果だとみられる。
※中国で発生した知財権の権利類型別紛争件数:特許10件、実用新案1件、商標65件、デザイン10件

輸出企業は海外における知財権被侵害に対応するために、抗議状・警告状の発送(62.7%)、訴訟の提起(35.8%)などを活用していると回答した。特に中国においては、行政措置を通じて対応すると応えた割合も39.8%に上った。中国の場合、各自治体に知財権侵害物品に対して行政取締りを行う機関(共商行政管理局)が別途にあるためだと推定される。

2. 米国では、パテントトロールによる知財権紛争が30%を超え

韓国企業が外国企業の知財権を侵害して発生した紛争の51.9%は米国で起きており、特許紛争(68.3%)が多くを占めている。企業類型別にみると中小企業が57.7%を占めており、業種別では電気電子、機械、科学の順となっている。
※国別: 知財権侵害紛争件数:米国54件、欧州23件、日本16件、中国7件、その他4件
※知財権類型別: 知財権侵害紛争件数:特許71件、実用新案1件、商標28件、デザイン4件
※企業類型別: 知財権侵害紛争件数:大企業5件、中堅28件、中小60件、ベンチャー11件
※業種別: 知財権侵害紛争件数:電気電子35件、機械24件、科学20件、その他25件

特に米国では、パテントトロール3)によって提起される紛争の割合が31.6%と高いため、これへの対応が求められる状況だ。また、米国における知財権訴訟費用の平均額は1億1千6百万ウォンに上っており、知財権紛争訴訟保険4)などを利用した事前の対応もさらに強化しなければならない。

3. 中小・ベンチャー企業の海外知財権紛争への対応は依然として脆弱

一方、紛争を経験した101社の中で、中小・ベンチャー企業の割合は81.3%と非常に高くなっており、知財権紛争による中小・ベンチャー企業の困難が大きいことがうかがえる。
※中小企業56.4%、ベンチャー企業14.9%、中堅企業21.8%、大企業6.9%

中小・ベンチャー企業の場合、大企業・中堅企業に比べ知財権担当部署を設けている割合が低い上、知財権業務の担当者数も少ないため、知財権紛争への対応力強化に向けた政府支援がさらに強化されなければならないと思われる。
※大企業57.1%、中堅企業50%、中小企業26.3%、ベンチャー企業20.0%
※大企業2.7人、中堅企業2.6人、中小企業1.8人、ベンチャー企業1.5人

4. 海外展示会など、輸出過程における知財権紛争も相当

海外の展示会で発生する知財権紛争も相当であることが分かった。知財権侵害紛争を経験した67社のうち、約10%に当たる企業が展示会紛争を経験したという。展示会紛争は欧州で57.1%、中国で42.9%が発生しており、欧州と中国で開催される展示会を参加する際には事前に知財権紛争に備える必要性が高まっている。

また、輸出交渉過程において特許保証5)を要求されるケースも多いことが明らかになった。調査対象101社のうち15.8%は特許保証を要求された経験があり、14.9%は特許を侵害しているか否かを証明するよう求められた経験があると応えた。
特許保証契約の内容も韓国企業にとって負担となるケースが多く、これに対するコンサルティング支援の強化が必要になる。特許に関わる損害をすべて補償しなければならないケースが56.3%と、製品の販売額内で補償することになっている場合(43.8%)より高かった。特にベンチャー企業の場合は、特許保証の要求をそのまま飲み込んだケースが66.7%と、交渉を通じて調整したケース(33.3%)を上回った。

5. 韓国政府、知財権紛争対応の支援策をさらに強化

特許庁のクォン・オジョン産業財産保護協力局長は「海外での知財権紛争に悩まされている韓国企業が増えている中、中小・ベンチャー企業を中心に、IP-DESKを通じた海外現場支援、知財権紛争コンサルティング、知財権訴訟保険支援などの企業支援策を強化していく方針だ」と述べた。


注記

1) 外国企業が韓国企業の知財権を侵害することで発生する紛争
2) 韓国企業が外国企業の知財権を侵害することで発生する紛争
3) 特許技術を利用して商品の製造や販売、サーボスの供給はせずに、特許を実施する者などに対する特許権の行使を通じて収益を創出することを事業活動とする事業者
4) 知財権訴訟にかかる費用を保障する保険であり、特許庁が中堅・中小企業を対象に保険料の一部を支援
5) 納品する制品に適用された特許が他の特許を侵害する等、特許に関わる損害について納品した企業が負担することにする契約
6) 海外進出した韓国企業の知財権紛争の解決を目的に運営する支援センター。中国、タイ、ベトナム、米国、ドイツ、日本などに設置

ジェトロ・ソウル事務所知的財産チーム

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