知的財産ニュース 太陽電池技術に関する特許出願が増加

2015年12月1日
出所: 韓国特許庁

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次世代太陽電池技術であるペロブスカイト太陽電池[1]の特許出願が急増している。

特許庁によると、ペロブスカイト太陽電池に関する特許出願は2012年まで5件に過ぎなかったが、2013年の15件を機に2014年には36件に急増し2015年10月時点では45件が出願される等、ここ3年間の出願増加率が年平均120%に達することを明らかにした。このうち90%の特許出願が国内研究者によるものであり、韓国においてペロブスカイト太陽電池に関する技術開発が活発に行われていることがうかがえる。

韓国出願人別に見ると、大学及び研究所が全体の79%、企業が19%を占めており、大学及び研究所が技術開発を主導していることが分かった。特に、研究所では韓国化学研究院が16%、大学では成均館(ソンギュングァン)大学が13%、企業ではLG電子が13%の出願シェアを占めている。

世界における太陽電池の累積設置量は2014年時点で177GWに達しており、2014年1年間40GW(240億ドル規模)が新たに設置される等、急成長を遂げている。このうち、シリコン太陽電池が90%、薄膜太陽電池が10%を占めており、ペロブスカイト太陽電池はまだ商用化できていない。

しかし、2009年に始めて登場したペロブスカイト太陽電池はわずか7年後の2015年に20%を突破する等、結晶シリコン太陽電池が数十年かかったことと比べると非常に急速に進んでいる。

ペロブスカイト太陽電池はこのような高い効率に加え低い材料費・製造コストにより、結晶シリコンを代替できる未来の太陽電池として注目されている。

こうした見通しからペロブスカイト太陽電池関連の特許出願が急増してはいるものの、最近に入ってはペロブスカイト太陽電池に関する研究結果が主に論文として発表されており、特許出願にはつながっていない。特に2015年には特許出願件数が論文発表件数の半分に止まっており、研究結果が特許出願につながらないということは喫緊の課題となる。

特許庁エネルギー審査課のオ・ジェユン課長は「ペロブスカイト太陽電池技術は、米サイエンス誌が選定した10大有望技術の一つで、未来太陽電池市場を取り込むための中核技術となる。90%以上を占めているシリコン太陽電池を代替できるペロブスカイト太陽電池の技術開発努力に加え、研究結果物を早期に特許出願し特許権を確保する戦略、企業の積極的な参加等が求められる」と強調した。


注記

[1] 19世紀のロシア鉱物学者であるペロブスキが発見した天然鉱物の結晶構造物質をペロブスカイト化合物といい、この物質を利用した太陽電池を利用したペロブスカイト太陽電池という。

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