知的財産ニュース 2016年から特許権等の侵害訴訟の管轄集中が施行

2015年11月18日
出所: 韓国大法院

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概要

  • 国会は、2015年11月12日午後2時に開催された本会議にて、(1)民事訴訟法一部改正法律案、(2)法院組織法の一部改正法律案を可決
  • 両法案により、2016年1月1日から特許権等の侵害訴訟の管轄が集中する予定

改正案の概要

1. どのような種類の事件の管轄が集中するのか

適用対象

  • 特許権、実用新案権、デザイン権、商標権、品種保護権の侵害による民事事件(特許権等、侵害を原因とする損害賠償請求侵害禁止請求等→以下「侵害訴訟」という)
  • 上記5種類の知的財産権は専門性が求められる上、産業財産的性格を持つため相対的に保護の必要性が高い事件
  • 上記5種類の知的財産権に関する審決取消訴訟(※特許権等の有効無効に関する特許審判員の決定に対する不服訴訟)は、すでに特許法院が担当

期待効果

特許法院が審決取消訴訟に加え、侵害訴訟の控訴審まで担当することになると、審決取消訴訟と侵害訴訟の二元化による判決の矛盾や不合理性非効率性訴訟遅延等の副作用が解消できるようになる他、当事者は一層専門性の高まった判断を受けられるという肯定的な効果も期待できる

2. どのような種類の事件の管轄が集中するのか

1審専属管轄→全国高等法院所在地の地方法院5カ所(ソウル、大田、大邱、釜山、光州)

  • ソウル中央地方法院に限っては「選択的重複管轄」を認める
    当事者はだれでも「ソウル中央地方法院」に提訴可能
    (例)釜山に住む原告の特許権を光州に住む被告が侵害した場合、原告は「釜山地方法院」や「光州地方法院」だけでなく、専門性の高い「ソウル地方法院」に侵害訴訟の提起可能

控訴審の専属管轄→特許法院

  • 1審が合議事件であるか、単独事件であるかは関係ない
  • 1998年3月1日、アジア初で知財権に関する審決取消訴訟を専属的に担当する専門法院として設立された特許法院は、これまで蓄積してきた技術専門性を最大限活用し、侵害訴訟の控訴審まで一括して担当することで専門性や迅速性を高めるとともに、国際社会で一層成長する重要なきっかけとなる

変更前後の比較

変更前

変更後

侵害訴訟1審

全国58地方法院・支院

全国5地方法院

侵害訴訟控訴審

23高等法院・地方法院

特許法院

審決取消訴訟

特許法院

3. 地域住民にとってアクセスが低下する恐れはないか

  • 1審は高等法院範囲内で専属管轄を規定し、「移送制度」により専属管轄による短所や副作用を防止する仕組みを整備
    土地管轄法院への移送制度 → 零細業者小規模自営業者等を保護するとの趣旨
    (例)専属管轄法院へのアクセスが低く、損害額が非常に小さい事件又は専門性があまり要求されない事件
    目的:顕著な損害又は遅延を避けるため
    方式:法院の直権又は申請により、訴訟の全部又は一部を移送可能

  • 特許権等、知的財産関連訴訟の場合、電子訴訟の割合が非常に高いという特徴があるため、アクセスに関する懸念は大きくないと予想される。
    特許法院の電子訴訟の割合は約97%に達する(2015年2月28日時点)

  • 特許権等、侵害訴訟を提起する場合、現在特許法院が担当している審決取消訴訟も並行して提起することが一般的であるため、特許法院による紛争解決は事実上、必需的な手続きとして予定されている。
    従って、特許法院が特許権等の侵害訴訟の控訴審を担当しても、他地域の住民にアクセスの面で追加の負担をかけることになるとは言えない

4. 施行時期

1審管轄集中

2016年1月1日以降、訴状が受付られる事件から適用

控訴審管轄集中

特許権実用新案権商標権デザイン権品種保護権の侵害に関する民事事件のうち、2016年1月1日以降、1審判決が言い渡された事件から適用

改正案の施行による司法部の対応

大法院は2016年1月1日から特許権等の侵害訴訟の管轄集中の施行に備え、専門性のある補助人材を確保する一方で、対象事件の規模・範囲等を綿密に分析し、適正な裁判部数や裁判官の配置等を検討した後、2016年1月に予定されている法院公務員人事及び2016年2月に予定されている裁判官定期人事により、適正な人材配置を完了する予定

ジェトロ・ソウル事務所知的財産チーム

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