知的財産ニュース 学位論文の提出システムが特許登録の足かせに

2015年2月27日
出所: 韓国特許庁

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卒業シーズンを迎えて修士・博士予備軍は、これまで熱心に作成した研究結果をオンラインの学位論文提出システムに登載することで論文提出のプロセスを終え、それと同時に研究結果を特許出願する計画を立てる場合もある。だが、卒業生が必ず済ませなければならない学位論文の提出プロセスが一歩間違えると自身の研究結果の特許登録を妨げるおそれがあるという事実が最近、特許審判院の無効審判事件によって明らかになった。

博士過程の卒業を予定しているA氏は、学位論文の提出システム(dCollection)に論文を提出する過程で1年間の非公開を要請し、同期間内に特許出願を済ませて特許登録を受けたが、B氏が書誌事項である抜き書きは非公開の対象ではないため、特許出願前に発明が公開されたものだとして、特許登録の無効審判を請求したのだ。

同事件(2014当1581)においては、抜き書きが実際に非公開要請期間である特許出願前に公開されたものか否か、万が一公開されたとすれば発明者の意思に反する公開とみなされるか否かが争点になったが、特許審判院は、提出された証拠資料だけでは、抜き書きの特許出願前の公開有無に対する立証が足りず、発明者が特許出願を理由に論文の非公開を要請した以上、発明の中核的な内容を記載した抜き書きを公開する、または公開を容認する意思があったとは見難いとして特許権者の勝訴を言い渡した。

論文の抜き書きの公開は、公益の立場からすると新しい知識を共有することで技術発展を促すプラス効果が得られる一方、システムの不備や本人の不注意などによって公開された場合には特許の確保が難しく、個人の立場からすると不利に作用することもある。本人の意思に反して公知された場合であっても、実際、その事実を立証することは容易ではなく、自身の論文によって特許出願が拒絶されるおそれもある。

現行の学位論文入力システムが発明の中核的な内容を記載した抜き書きなどを必須入力事項として設定し、非公開要請の際にもこれを公開対象としているとすれば、万が一、これによって優れた発明の特許登録が拒絶されるおそれがあるため、システムを詳細に点検する必要がある。

特許審判院のチュ・ヨンシク審判長は、学位論文や研究結果などは、登載システムに載せる前に特許出願をすることが最も望ましく、不可避な事情によって公開された場合には、公知例外制度を活用すべきだとアドバイスしている。

※公知例外制度:発明が出願前に公知されたとしても、一定の要件を備えて公知された日から1年以内に特許出願すれば、公知されたものとみなさない規定(特許法第30条)

また、前述の事件と類似したケースとして、自身が研究費申し立てシステムに登載した内容によって本人の特許登録が台無しになる場合も多々発生しているため、研究費の支給機関も研究内容を出願前に徹底的に守秘するシステムを備える必要があり、研究者もより事細かく注意を払う必要があると強調した。

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