知的財産ニュース 特許庁、知財権虚偽表示の是正に注力

2015年7月23日

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特許庁は、7月22日、ファン・ギョアン国務総理主宰で開催された第14回国家知識財産委員会に「健全な取引秩序の確立に向けた知識財産権表示改善案」という案件を想定し、発表した。

最近、オンラインショップ等において、知財権を虚偽表示し広告するケースが増えていることから、特許庁は、これに対応するとともに公正且つ透明な知財権表示秩序を確立するため、今回の対策をまとめた。

知財権表示は、製品に使われた知財権に関する情報を第3者が分かるように、対外的に表示することを意味する。特許の場合、特許法関連規定(特許法第223条、特許法施行規則第121条)には、「特許」という文字と当該特許番号を物、又は物の容器、包装に表示することが定められている。

このような知財権表示は、製品の品質に対する消費者の信頼に大きな影響を及ぼすだけでなく、不要な知財権紛争の予防や、当該技術分野への重複投資の防止、改良発明の促進等の効果があり、非常に重要な意味を持っている。

しかし、韓国の場合、知財権表示に対する認識や活用が十分でない状況だ。最近、特許庁が実施した知財権表示に関するアンケート調査によると、知財権を表示している企業は32.4%に止まっており、知財権表示への企業の関心が低いことが分かった。これは、知財権表示の活性化に向けた環境整備や政策の後押し、さらには国民の認識も足りないからだと考えられる。

※105企業を対象にアンケート調査を実施した結果、32.4%が知財権の表示を行っており、67.6%は行っていないことが分かった。

知財権を表示している場合であっても、オンラインショップ、新聞・雑誌、広告紙等において、誤った表示事例が多数発生し、問題となっている。オンラインショップにおける知財権表示実態調査の結果、特許が表示された広告の中で、正しく表示された件は57%であるのに対し、虚偽表示6%、残りの37%は、不十分な表示※※であることが明らかになった。虚偽表示や不十分な表示は、製品の技術や品質について、間違った情報を提供し、被害をまねきかねない。

※出願中の製品を登録されたように表示したり、拒絶されたものを特許登録されたように表示する等、知財権を虚偽表示するケース
※※特許番号が不明確又は、特許番号が表示されていないケース

韓国の主なオンラインショップにおける特許表示現況

全体

正しい表示

虚偽表示

不十分な表示

特許番号不明確

特許番号未表示

28,123件

(100%)

15,998件

(56.9%)

1,689件

(6.0%)

2,535件

(9.0%)

7,911件

(28.1%)

特許庁は、知財権表示制度の活性化策の一つとして、米国、英国等が採用しているネット特許表示制度を導入することを決めた。ネット特許表示制度は、製品又は製品の容器、包装にネット住所を表記し、当該ネットページに製品の特許番号を掲載する制度だ。製品に直接特許番号を表記する従来の方式より時間と費用が軽減できる上、ネット環境がしっかり整っている韓国にとっては活用しやすい制度とされる。

知財権の虚偽表示への国民の認識向上に向けた政策も進める計画だ。正しい知財権表示に関するガイドラインを策定・配布し、関連教育とPRも強化していくとしている。

知財権虚偽表示の防止対策としては「知財権虚偽表示通報センター」を設置・運営し、虚偽表示に対する行政・司法措置を強化する予定だ。通報センターでは、虚偽表示に関する通報の受付や相談、虚偽表示モニタリング・実態調査等の役割を担当する。通報された虚偽表示については、特許庁が積極的な行政指導を行い、同一の虚偽表示が3回以上摘発される場合には刑事告発措置も取る計画だ。

一方、国民の誤解を招く知財権出願の表示方法を変更する案も検討することにした。「出願」という用語は、知財権を獲得するために願書を出すという意味だが、国民は、知財権が登録されたことと誤解する傾向があった。このような問題を解決するために、知財権出願の表示をする際には、「審査中」という文句を含むよう、関連法令を整備する計画だ。また、国民の理解を助けるために「出願」という用語を「申請」に変更する案も検討するとしている。
※表示例:特許出願(審査中)第10-2014-0012345号

チェ・ドンギュ特許庁長は「知財権表示は、ネットショッピングのような国民の生活に身近なものに係わっているにもかかわらず、これまではあまり重要視されなかった。今回の対策をきっかけに、国民に混同・被害をもたらす知財権の虚偽表示を是正し、公正な知財権表示文化の定着に向け改善していきたい」と述べた。

ジェトロ・ソウル事務所知的財産チーム

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