知的財産ニュース 国家情報院、半導体・ディスプレイ技術の流出防止に取り組む

2015年10月13日
出所: 電子新聞

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海外企業に技術が流出しても、過度な訴訟費用と時間への負担から積極的に対応できない中小企業を支援するため、国家情報院(以下「国情院」)産業機密保護センターが企業・市場状況の調査に動き出した。技術流出を速やかに把握し、主要技術を保護するのが目的である。最近中国が半導体・ディスプレイ産業の育成に取り組んでおり、国内の関連部品・装備技術が持ち出されていることを受け、新たな流出を防ぐという狙いがあるものと見られる。

国情院産業機密保護センターは、最近国内半導体・ディスプレイ分野の部品・装備メーカーを訪問し、企業と市場状況の調査を始めた。技術流出問題の発生有無や管理実態を調べるとともに、問題発生時には産業機密保護センターを積極活用することを勧めるためである。国情院が直接企業を訪問し、現況を把握するのは異例のことだ。

業界によると、最近ディスプレイ分野を中心に、中国に主要技術を持ち出すケースが多数発生している。規模の小さい零細な部品企業が関連技術を中国に流出させ、会社が存亡の危機にさらされる等、困っている中小企業が多いことが明らかになった。

国情院産業機密保護センターは、「産業技術の流出防止及び保護に関する法律」に基づき、国家中核技術に指定された産業技術が海外へと流出することを防止する。国家中核技術には、40ナノ級以下DRAM関連技術、30ナノ級以下NAND型プラッシュ関連技術、第8世代級以上LCD(液晶)パネル技術、30ナノ級以下ファウンドリ技術、能動型有機発光ダイオード176(AM OLED)パネル技術、モバイルアプリケーションプロセサー(AP)技術等は電気電子分野等がある。

韓国政府と企業は、特にOLED技術の流出について懸念する。中国企業のLCD生産技術力が相当なレベルに上がった上、OLED需要の拡大を受け、直接生産の準備を加速化しているからだ。OLED技術の難易度が高いだけに、韓国がディスプレイ競争力を維持するには、OLED技術のセキュリティを強化することが重要だという判断から、国内のディスプレイ装備メーカーも中国輸出に制約を受けている。

メモリ半導体も状況は同様だ。メモリ半導体の国産化を進める中国は、素子・設計・生産等の関連技術を猛烈な勢いで確保しており、専門人材や技術を守ることが重要となった。台湾では、現地のメモリメーカー、イノテラとナンヤテクノロジーのチャールズ会長が中国のチンファ・ユニグループ(Tsinghua Unigroup)に移るという噂が出回る等、人材と技術が中国に流れ出る様子が見られる。

産業機密保護センターはまず、主な半導体・ディスプレイ装備メーカーが保有している技術や人材の状況を把握する予定だ。技術流出の状況が見つかれば、センターに通報するよう呼びかけた。また同センターは、技術流出の通報が寄せられた際、検察と連携して捜査できる体制も整えた。

また国情院は、中国現地の企業に部品や装備を輸出したいが、技術流出への懸念から積極的に事業を進められない状況についても調べる。グローバル装備・部品企業が中国に製品を販売しているだけに、国内市場に影響力の小さい技術を中心に、中国輸出問題への対応ができると見られる。

ある関係者は「表に現れてはいないが、中小部品・装備企業のうち、主要技術の中国流出で困っている企業が多い」とし、今回の国情院の動きについて「中小企業が個別に対応するより、産業機密保護センターが捜査した方が迅速で効率的という認識から、保護すべき技術を守りつつ、徹底した輸出対策を講じる等、市場環境の変化に対応するための措置だと思う」と説明した。

ペ・オクジン記者  withok@etnews.com

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