知的財産ニュース 超高圧直流送電に関する特許出願が急増

2015年10月5日
出所: 韓国特許庁

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電力用半導体を利用し、交流(AC)を直流(DC)に変え送電する次世代電力転送技術である超高圧直流送電(High Voltage Direct Current)システムに関する特許出願が大幅に増加している。

超高圧直流送電は、海底ケーブル送電、大容量長距離送電、周波数が異なる交流系通間連携等活用できる分野が広く、交流送電に比べ電力損失が少ないため効率的で経済的である。また、環境にやさしい建設が可能という特徴もある。

特許庁によると、「超高圧直流送電」に関する特許出願は、2010年の33件から2014年の96件へと、ここ5年間年平均30.6%の高い増加率となっており、特に外国企業によって主導されていた特許出願が2012年からは国内の大企業を中心に急激に増えてきた。

これは2012年のブラックアウト(大停電)をきっかけに国内で節電設備への関心が高まり、交流送電より効率のいい直流送電の経済的効果が評価されたためと考えられる。また、大企業が中心となったのは超高圧直流送電への進入障壁が高く、個人や中小企業による技術開発は難しいためとみられる。

出願動向を細部技術別に見ると、超高圧直流送電の中核要素である変圧器やコンバーター等の返還設備に関する出願が256件と全体の83.1%を占めており、電線や碍子等の送電線路に関する出願は20件(6.5%)と相対的に低かった。

世界的な経済成長に伴い増加する電力需要に加え、超高圧送電網の拡充及び設備容量増大に伴い、高圧送配電への需要は大幅に増加し、2020年になると市場規模は約2,042億ドルに達すると見込まれている。

特に、欧州と北海沿岸国が一つの電力網で結ばれる「スーパーグリッドプロジェクト」の本格化や、中国・インド・アフリカ等、資源大国の電力産業インフラ投資の拡大から、超高圧直流送電の市場規模は着実に成長する見通しだ。

※国家間・地域間の系通連携によりピーク時に電力を融通する電力スワッピング

韓国内では、済州島地域の安定的な電力供給に向け、海南-済州及び珍島-済州間で超高圧直流送電2回線を運営している。2022年まで3カ所に新たな回線を建設・運営することで、超高圧直流送電の運転条件及び最適の運営技術を確保し、海外進出の基盤を整えることができるものと思われる。

特許庁の関係者は「超高圧直流送電分野は、電力需要の増加に伴い今後高い成長が見込まれる一方で、海外の先発企業との特許争いの可能性も高く、これに予め準備しなければならない」と述べた。また「韓国企業が出願した優秀発明を基に電力設備の国産化を成功させれば、国内だけでなくグローバル市場の電力事業にも参加でき、高付加価値の新たなブルー・オーシャンを創出できるようになる」と期待感を示した。

ジェトロ・ソウル事務所知的財産チーム

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