知的財産ニュース 政府、重要IP事業33件に対する投資強化を推進
2014年8月1日
出所: 未来創造科学部
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政府は8月1日(金)、政府果川庁舎で「第11回国家知識財産委員会」を開き、「2015年政府知識財産財源の配分方向」、「2013年国家知識財産施行計画の点検・評価結果」、「知識財産権貿易収支統計の開発方案」について議論・確定した。
「知識財産財源の配分方向」は、来年度の国家知識財産事業において効率的な投資が行われるように投資優先対象の重要事業33件(9省庁、1兆708億ウォン)を選定し、主要分野別に政策改善の方向性も共に提示している。
韓国の知的財産(IP)に関する(IP創出と密接している主要R&D事業も含む)直接・間接的な政府予算全体は、年平均6.3%ずつ着実に増加(2012年7.4兆ウォン、2013年7.8兆ウォン、2014年8.4兆ウォン)する傾向にある。
これにより、特許の出願・登録件数が拡大(2013年のPCT国際出願件数が2001年に比べて5倍以上増加)し、革新集約的な製造業の付加価値の割合(38%、OECD3位)が増加したほか、昨年ソフトウェアの違法コピー率(38%)が初めて40%を下回るなど、目に見える成果が出始めている。
しかし、市場活用性の良いオリジナル・標準特許およびコンテンツなどは不足しており、「知財権使用料収支の赤字」は2012年47億ドルから2013年55億ドルに悪化するなど、IPの質的水準と保護策など基盤の生態系が相対的に脆弱だという指摘が提起されてきた。
そのため、2015年IP8大重点投資分野の中で、投資を戦略的に拡大させるべき分野として、これまで重要性に比べて投資が充分ではなかった(1)IP基盤の創業・事業化・移転などIPの活用、(2)融合・複合商品やサービスなど、市場需要の変化に応じたコンテンツとSW、(3)IP分野における雇用創出および尊重文化の拡散など、IP基盤に対する投資拡大の必要性が示された。
また、それぞれの省庁が所管するIP事業の財政運用および政策改善に向けて、SWコンテンツ産業の生態系作り、IP保護体系の強化、IP・技術の価値評価・金融システムの加速化、機関・官民間および国際協力の活性化を強調した。
さらに政府は「2013年度国家知識財産施行計画の点検・評価」を通じて35件の主要課題について推進業績を評価した上、その結果を基に「2015年施行計画」の樹立および「2014年施行計画の点検・評価」と連携する予定だ。
一方、同会議では韓国の知財権国際取引現況を総合的・体系的に分析して様々な政策立てに活用すべく、特許権・著作権などあらゆる形の知財権と取引類型を包括する「知識財産権貿易収支」の統計を新たに開発することにした。
※特許権、商標権、意匠権、著作権など様々な知財権別に「使用料」および「販売・購入額」を反映したもので、現行の「技術貿易統計」や「知識財産権使用料収支」とは異なり、全てのIP権利の形態と取引類型を包括
ユン・ジョンヨン民間委員長は「知財委が省庁・官民間のコミュニケーションと協力を牽引し、IPを通じた新しい産業や雇用などを創出することで国の競争力強化に貢献するよう、一層力を入れる計画だ」と強調した。
一方、委員会の幹事として初めて参加した未来創造科学部のチェ・ヤンヒ長官は「創意工夫のある韓国のIPは、創造経済の中核資産だ。今後も市場で最大限活用することで、その真の価値が発揮されるよう、委員会の活動を積極的に支援する」と意志を示した。
第11回国家知識財産委員会の案件
2015年度政府知識財産財源の配分方向(案)
政府は、国家知識財産戦略を財政的に後押しし、事業の投資効率を向上させるため「2015年度政府知識財産財源の配分方向(案)」を策定した。
IP事業全体の19省庁365件(2015年予算要求額9兆1,751億ウォン)のうち、重要IP事業を行う9省庁33件(1兆708億ウォン)を選定し、事業別に財源配分の方向性と共に主要分野別に政策改善の方向性を提示した。
財源の配分方向は、国政課題および経済革新3カ年計画などを通じた創造経済の実現に向けて、滞りのない推進が求められる重要IP事業に対する投資方向性を提示したもので、
経済的付加価値を創出するためのIP基盤の創業・事業化・移転取引などIPを活用した分野の事業に対する投資の拡大、
技術、プラットフォームとコンテンツの融合・複合など市場需要の変化に応えるためのコンテンツおよびSW分野の事業強化、
IP分野の政府3.0の実現、IPに関する雇用創出、IP尊重および保護の文化拡散など、政府の政策基調と密接なIP基盤強化に関する内容が盛り込まれており、
主要分野における政策改善の方向性としては、
SW・コンテンツ産業の生態系作りおよび知財権保護の生態系作りの促進、
IP・技術の価値評価・金融システムの加速化および省庁、官民、国家間の協力体系の強化などを提示した。
今回策定された「2015年度政府知識財産財源の配分方向(案)」は、企画財政部および未来創造科学部に告知し、来年度の政府予算編成(案)への反映を呼びかける計画だ。
8大重点投資の方向性 |
重要知識財産事業33件(2015年度要求額) |
---|---|
高付加価値産業財産権の |
|
著作権など創出基盤の造成 |
|
IP紛争および侵害への対応強化 |
|
IP活用戦略の極大化 |
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IP情報連携の強化 |
|
IP専門人材の育成強化 |
|
IP文化の構築 |
|
新しいIPの育成および活用 |
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2013年度国家知識財産施行計画の点検・評価の結果
政府は国家知識財産戦略を最後まで有効に推進するために、中央行政機関と地方自治体が取り組んできた2013年度「国家知識財産施行計画」の推進業績を評価した。
「2013年度施行計画」によって15カ所の中央行政機関および17カ所の広域地方自治体で推進した主要課題35件を選定し、28人の民間専門家で構成された政策評価団において評価を実施した。
中央行政機関の課題18件のうち、R&D事業にIP管理システムを取り入れ、生物資源の体系的な管理を行うなど、優れた推進成果を上げた課題4件を優秀課題として選定した。
所管省庁の自主努力だけでは限界があるため、省庁間の協力強化および参加機関間の有機的な連携、制度の補完が求められる推進課題2件は「改善必要課題」として選定した。
地方自治体の課題17件のうち、各地域のIP政策の差別化、機関長の意志、地域内の協調システム構築など、推進成果の高い4件の推進課題を「優秀課題」として選定した。
その他地域に比べて相対的に強みのある地域内のIPインフラを積極的に活用し、地域特性に合わせた政策を掘り起こすことが求められる2件の推進課題については、「改善必要課題」に指定した。
第11回知財委審議・議決の後、改善必要課題について、関係機関は改善履行計画を樹立し、知財委は履行状況を点検することにした。
分野 |
中央行政機関の評価対象課題(18件) |
担当機関 |
評価ランク |
---|---|---|---|
創出 (2件) |
IP中心のR&D管理強化 |
未来部 |
優秀 |
次世代コンテンツの集中育成 |
未来部 |
普通 |
|
保護 (4件) |
現地における侵害対応の支援 |
外交部 |
普通 |
IPに関する法律サービスのグレードアップ |
法務部 |
改善必要 |
|
著作権の違法流通防止システムの構築 |
文体部 |
普通 |
|
産業財産権の審査制度改善および高度化 |
特許庁 |
優秀 |
|
活用 (5件) |
多様なIPビジネスの育成 |
産業部 |
普通 |
保健産業R&D成果のIP管理および取引活性化の推進 |
福祉部 |
普通 |
|
IPの民間投資活性化 |
金融委 |
普通 |
|
主体別の事業化支援システムの拡大 |
中企庁 |
優秀 |
|
大企業・中小企業間のIP公正取引の推進 |
公正委 |
普通 |
|
基盤 (3件) |
IP活動の高度化基盤の確立 |
教育部 |
改善必要 |
IP分野の人材育成 |
文体部 |
普通 |
|
IPを尊重する文化作り |
特許庁 |
普通 |
|
新IP (4件) |
品種保護権の侵害紛争への対応強化および実効性の向上 |
農食品部 |
普通 |
生物資源の発掘拡大およびリスト構築 |
環境部 |
優秀 |
|
生物資源の発掘・確保とIP創出の支援 |
海水部 |
||
伝統資源の発掘および管理システムの構築 |
文化財庁 |
普通 |
分野 |
自治体の評価対象課題(17件) |
担当機関 |
評価ランク |
---|---|---|---|
自治体 (17件) |
社会的・経済的弱者の知財権へのアクセシビリティ向上 |
ソウル |
普通 |
地域中小企業のIP力量の強化 |
釜山 |
優秀 |
|
中小企業の技術情報支援の強化 |
大邱 |
普通 |
|
特許技術の事業化および活用促進の強化 |
仁川 |
普通 |
|
IP経営支援サービス |
光州 |
普通 |
|
創意工夫のIPが生まれる環境作り |
大田 |
改善必要 |
|
中小企業の産業財産権創出の集中支援 |
蔚山 |
普通 |
|
IPに対する認識向上を通じた創出活性化 |
京畿 |
改善必要 |
|
中小企業のIP経営支援 |
江原 |
優秀 |
|
各地域における知財権認識の拡散 |
忠北 |
普通 |
|
IP力量強化 |
忠南 |
普通 |
|
グローバル・ブランド価値の創出力量の強化 |
全北 |
普通 |
|
中小企業によるIP創出の活性化 |
全南 |
普通 |
|
特許情報総合コンサルティングの支援強化 |
慶北 |
優秀 |
|
グローバルデザインの創出基盤作り |
慶南 |
普通 |
|
各地域におけるIPインフラ構築および認識向上 |
済州 |
優秀 |
|
IP政策の推進システム構築 |
世宗 |
対象外 |
※世宗市は、新生自治体として政策基盤作りの初期段階にあることを踏まえて、初年度の評価ではランク以外の内容評価のみ実施
「知識財産権貿易収支」統計の開発方案
韓国の知財権国際取引の全般的な実態をきちんと把握・分析することで、今後国のIP政策の樹立・執行などに活用できるように「知識財産権貿易収支」統計が新たに策定される。
政府は2014年8月1日(金)に開催された第11回国家知識財産委員会において、『「知識財産権貿易収支」統計の開発方案』を確定した。
そのため、政府は今年中に実務の準備作業(特許庁、文体部、韓国銀行、知財委などが参加)を完了し、2015年度から「知識財産権貿易収支」の統計を調査・発表する計画だ。
現在、IP貿易に関する統計としては、国際通貨基金(IMF)の基準で発表する「知識財産権使用料収支」と経済協力開発期間(OECD)の基準で算出する「技術貿易統計」が活用されている。
ただし、いずれの統計も特許権・著作権などあらゆる類型の権利および取引形態を包括していないため、知財権輸出入の現況を正確に示すことができず、様々な政策需要に対応するに限界があった。
一例として、現行の「知識財産権使用料収支」には国内企業と海外企業間で移転・実施される知財権使用料は含まれているが、特許権、商標権など知財権の販売額および購入額は含まれておらず、
「技術貿易統計」には著作権(SWおよび各種コンテンツ)に関する輸出入の内訳が含まれていない反面、知財権以外に技術サービス(技術研究、エンジニアリング作業、技術指導)などが含まれている。
今後、「知識財産権貿易収支」統計が新たに作成されれば、
特許権、著作権などあらゆる知財権の類型に対する使用料、販売額、購入額など、多様な取引形態を包括する貿易収支の動きを一括で確認できるほか、
産業別・交易国別の知財権貿易収支に関する体系的な分析情報を提供するため、政府が知財権貿易収支の改善に向けた戦略を樹立・推進していく上で役に立つと見られている。
さらに、これから韓国の「知識財産権貿易収支」統計をOECD、IMF、WIPOなどの国際機関に新たな国際統計法として提案する方法も検討する予定だ。
IPに関する貿易収支の統計別概念
知財権使用料収支
韓国銀行がIMFの国際収支作成指針に基づき、国際収支の中でサービス収支の下位項目として発表(年間月間統計)
独占権使用料 |
1. フランチャイズおよび商標権の使用料 |
---|---|
2. R&D結果物として創出された知財権(特許権、産業工程など)の使用料 |
|
複製・頒布権費用 |
3. コンピューターSWの複製・頒布権の費用 |
4. 音響映像および関連知財権の複製・頒布権の費用 |
技術貿易統計
未来創造科学部(旧国科委)がOECDの技術貿易統計作成指針に基づき、韓国産業技術振興協会に委託して調査(年間統計)
技術貿易収支反映 |
|
---|---|
技術貿易収支除外 |
|
知識財産権貿易収支
韓国銀行、特許庁、文体部が特許権・商標権・意匠権・著作権など、あらゆる形の知財権に関する項目を全て反映
IP類型 |
知識財産権使用料収支 |
技術貿易収支 |
(新規)知識財産権貿易収支 |
---|---|---|---|
特許・実用新案権 |
使用料(○) |
使用料(○) |
使用料(○) |
販売・購入額(×) |
販売・購入額(○) |
販売・購入額(○) |
|
(産業)意匠権 |
使用料(○) |
使用料(○) |
使用料(○) |
販売・購入額(×) |
販売・購入額(○) |
販売・購入額(○) |
|
商標権 |
使用料(○) |
使用料(△※) |
使用料(○) |
販売・購入額(×) |
販売・購入額(△※) |
販売・購入額(○) |
|
著作権および 著作隣接権 |
使用料(○) |
使用料(×) |
使用料(○) |
販売・購入額(×) |
販売・購入額(×) |
販売・購入額(○) |
※製造法など技術知識の移転を伴う商標の取引およびライセンシングのみ技術貿易収支に反映
ジェトロ・ソウル事務所知的財産チーム
ジェトロ・ソウル事務所 知的財産チームは、韓国の知的財産に関する各種研究、情報の収集・分析・提供、関係者に対する助言や相談、広報啓発活動、取り締まりの支援などを行っています。各種問い合わせ、相談、訪問をご希望の方はご連絡ください。
担当者:大塚、柳(ユ)、李(イ)、半田
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