知的財産ニュース 「パテントトロール」、特許訴訟の脅威として浮上

2014年9月30日
出所: デジタルタイムズ

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グローバルIT産業における主要企業間の「特許戦争」について、最近は特許を利用してロイヤルティを受け取る「パテントトロール」が主導する構図になってきたという分析が出た。

韓国情報通信政策研究院(KISDI)のソン・サンヨン研究委員は、先月30日、「スマートフォン特許戦争の結末と新しいリスク」という報告書を通じて「アップルとグーグルは訴訟を終結させ、アップルとサムスンが米国での訴訟を縮小させるなど、アップルとアンドロイド陣営の特許戦争は沈静化している。グーグルとマイクロソフト(MS)間の争いもレノボによるモトローラ・モビリティの買収が完了し次第、終結する可能性が高い」と予測した。

グローバルIT企業間の特許争いに端を発したのは、2009年、アップルが自社の特許を侵害したと主張したノキアの提訴だった。

その後、グーグル‐サムスンのアンドロイド陣営とアップル‐MSの反アンドロイド陣営間の大規模訴訟にまで拡大したが、最近になって対立は解消されつつあるとのことだ。

ソン委員は、IT企業間の特許訴訟が沈静化した後の新しい脅威として「パテントトロール」の活発な動きを挙げた。パテントトロールは、企業や組織の特許権を大量に買収し、これを生産に利用せず、同様または類似した特許技術を使っているメーカーを対象に特許訴訟を起こして過度なロイヤルティを要求する企業のことだ。

ソン委員は「パテントトロールが提起する訴訟は、毎年平均33%ずつ増加しているが、米国の場合、2012年ベースで特許訴訟全体の約62%がパテントトロールによるものだった」と指摘した。

2013年上半期ベースでアップル(171件)、HP(137件)、サムスン(133件)などの企業が特許侵害に関する訴訟を提起された。

また、ソン委員は、パテントトロールが新しいリスク要因として浮上したことで、IT企業がお互い訴訟争いを中断し、協力する必要性を感じることになったのもこれまでは見られなかった変化だと評価した。

グーグル、SAP、SAS、レッドハットなど9企業は、7月に「特許使用料や損害賠償を目的とした不当な訴訟を阻止するための企業連合(License on Transfer Network)」を設立するなど、共同の取り組みに乗り出した。

パテントトロールとの訴訟に敗訴したケースは、訴訟全体の1%にも及ばないくらいだが、訴訟にかかる法務コストが増えるのを避けたい大多数のIT企業がパテントトロールと合意したり、防御のための特許を購入したりしている状況だ。

ソン委員は「パテントトロールの動きが活発になり、韓国のアプリケーション開発者、個人ユーザーも訴訟の標的になりかねない」と見ている。

ソ・ジョングン記者

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