知的財産ニュース 大企業の商標管理に懸念、正常化に向けた商標審査指針が発表

2014年11月21日
出所: 韓国特許庁

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特許庁は、大企業グループの商標に対する審査指針を発表し、大企業グループの非正常的な商標管理の慣行を積極的に改善していくと発表した。

商標法上、他者が先行して登録した商標と類似した商標は、類似した業種では登録することができない。同じグループの系列会社間でも法人格が異なれば、商標法上の他者に該当するため、類似した業種に類似した商標を使用できないのが原則となっている。

しかし、実際には多くの大企業の系列会社がグループ名称を入れた商標を使用している。ほとんどの場合、まず持株会社が商標権を登録し、系列会社からライセンス料をもらうケースとなっているが、系列会社が直接グループ名称に関する商標権を有しているケースも少なくない。

この場合、いくつかの問題が発生する。第一、系列会社が直接グループ名称に関する商標権を有する場合、買収合併などによって系列関係が変更された後も引き続きグループ名称を商標として使うことができるため、消費者に誤認・混同をもたらしかねない。消費者は、大企業グループの系列会社だと認識して選択するが、実際には全く無関係の会社の可能性もある。実際、ロッテ観光は、現在ロッテグループの系列会社ではないが、依然としてロッテという商標を使用している。

第二、数十に上る系列会社がグループ名称に対する商標権を獲得して使用することによって、長期的にはブランドの希薄化および商標価値の下落が懸念される。例えば、現代を代表する8大グループ(現代自動車グループ、現代重工業グループ、現代グループ、現代百貨店グループ、現代海上火災保険グループ、現代産業開発グループ、KCC、ハルラ)のうち、「現代」の名称を使っているところは6社で、その傘下に100余りの系列会社が「現代」という商標を使用している。こうした傾向が続く場合、「現代」という商標は、誰もが使用する名称となり、結果的にブランド価値の低下というダメージを受けかねない。「ロッテ」グループも74の系列会社のうち、12社に商標権が分散されているなど、商標管理に難航している。日本では、株式会社ロッテが「ロッテ」の商標権を一元化して管理しているのと対照的だ。

第三、ひいては、こうした状況が大企業の商標権争いの火種となっている。「大成グループ」から分離された「株式会社大成合同持株」と「大成ホールディングス株式会社」は、競って「大成」という商標を特許庁に出願・登録した後、お互いに商標使用差し止めを申し立てるなど、14年間法的紛争を続けている。

第四、新規企業が大企業グループの名称を商標として使用し、中小企業と競争するのは不正競争に当たる。認知度の高いグループ名称を商標に使う場合、比較的に短期間でシェアを拡大できるが、その使用料さえも支払わないとすると、中小企業の立場からは非常に不利な条件で競争するしかない。

こうした問題は、財閥グループの第2世、3世経営に伴う支配構造の複雑化によって、さらに加速化すると見られていて、政策的な決断が求められる状況だ。幸いなことに、サムスンやSK、LG、新世界、GSなど多くの大企業グループは、以上の問題を認識しており、商標権の一元化に向けた取り組みに力を入れている。しかし、一部では商標権の一元化が程遠い状況だ。

以上の問題の解決に向けて特許庁は、大企業の商標審査指針を発表し、これから大企業グループの名称が含まれた商標は、一つの商標管理会社または持株会社が一括して管理しつつ出願しなければ、登録を受けられないという方針を決めた。ただし、すでに登録して使用中の商標と同一性が認められる商標は、法的安定性を踏まえて引き続き登録を許容する予定だ。

例えば、ロッテ製菓、ロッテホテル、ロッテフードなど、多数の系列会社を有しているロッテグループが「ロッテ航空」という会社を立ち上げる場合、ロッテグループの系列会社の商標権が一つの持株会社として一元化されている上、その持株会社の名称で商標出願が行わなければ、「ロッテ航空」は商標登録を受けることができない。ただし、ロッテグループの各系列会社が従来からそれぞれの名義で登録・使用していた商標(例:ロッテ製菓、ロッテフード)と同一性が認められる商標(例:ロッテ製菓マフィン、ロッテフード・チキン)を出願する場合、法的安定性を考慮して、登録を許容する。

商標デザイン審査局のパク・ソンジュン局長によると、同審査指針の確定に向けて、この1年間、大企業の登録商標について徹底した実態調査を実施し、3回にわたる企業懇談会を開催した。直ちに企業の商標権をひとまとめにすることが容易ではないが、長いスパンで考えて特許庁の趣旨を理解し、有効な商標管理ができるように企業側の協力を呼びかけた。

さらに、企業が商標権を一元化する過程で、不当な税金が賦課されたり、不公正行為として摘発されたりするなどの被害が発生しないよう、国税庁や公正委とも足並みをそろえていく計画だ。

ジェトロ・ソウル事務所知的財産チーム

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