知的財産ニュース 韓国企業に1兆ウォン規模の特許訴訟、本当の狙いは?

2014年7月23日
出所: デジタルタイムズ

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韓国企業に対するグローバル企業のけん制が続いている。韓国産業のステータスを確認できる側面ともいえるが、紛争による経営萎縮が懸念されるだけに、対策が求められるとの指摘も出ている。

22日、関連業界によると、SKハイニックスは東芝とサンディスクが東京地方裁判所に提起した技術漏洩による「不正競争防止法の違反」に関する訴状を受けた。東芝は自社の提携会社であるサンディスクの元従業員がNANDフラッシュに関する技術をSKハイニックスに提供したとして、今年3月、警察に通報し、裁判所に提訴した。

当時、読売新聞の報道直後、警察が四日市市にある東芝工場で勤務していた従業員杉田吉隆氏を技術営業秘密開示の容疑で逮捕した。そして翌日にはすぐ訴訟が提起されるなど、警察と民間、マスコミが組織的かつ有機的な動きを見せた。東芝などはSKハイニックスに対して1兆1,113億ウォンに上る損害賠償およびNANDフラッシュの販売差し止めなどを要求した。1兆1,113億ウォンはSKハイニックスの四半期営業利益に相当する巨額だ。

SKハイニックスは以前、米のラムバスと13年間にわたって特許紛争を続けたあげく、5年間計2,720億ウォンで包括的特許ライセンス契約を締結することに合意し、解決に至った。相次ぐ訴訟は、世界のメモリー半導体市場でシェア2位を占めているSKハイニックスの成長に対する競合企業の危機感が反映されていると見られる。

調査会社のアイサプライによると、今年第1四半期基準で、NANDフラッシュ市場のシェアはサムスン電子が37.4%でトップであり、その次が東芝(31.9%)、マイクロン(20.1%)、SKハイニックス(10.6%)の順だ。SKハイニックスは、市場シェア2位を占めているDRAMを追い風に、グローバル半導体売上げ順位で東芝を抜いて第6位に上った。売上げ規模は前年比42.8%も増加している。

業界では、今回の訴訟によるSKハイニックスへのダメージは限られていると判断している。現代証券リサーチセンターのパク・ヨンジュ研究員は「今の状況で裁判の結果を見越すことはできないが、最悪のシナリオを想定するとしても3,000億ウォン程度の被害額が予想される。SKハイニックスのファンダメンタルに及ぼす影響はさほど大きくないだろう」と述べた。

SKハイニックスのみならず韓国産業に対するグローバル企業のけん制が近ごろ相次いでいる。アップルとサムスン電子間のスマートフォーン特許に関する訴訟はもちろん、デュポンがコーロン・インダストリーを相手に提起した「アラミド」繊維の営業秘密侵害訴訟、新日本製鐵がポスコを相手に提起した高機能鋼板の製造技術開示訴訟、米国の二次電池メーカーであるセルガードがLG化学を相手に提起した特許訴訟などが現在も続いている。米特許庁によると、昨年3月基準で米企業が韓国企業を相手どって起こした訴訟は約100件で、そのうちサムスン電子が43件、LG電子が31件、パンテックが11件、SKハイニックスが7件、現代自動車が6件だった。

ただし、このようなグローバル企業の訴訟によって韓国産業が萎縮すると断定することはできない。デュポンとコーロン・インダストリー間の営業秘密侵害の控訴審において、米裁判所はデュポンのアラミド製造技術がすでに過去の訴訟を通じて公開されただけに営業秘密に該当しないとして、1審の判決を破棄差し戻しにした。

にもかかわらず、グローバル企業の提訴が相次いでいる理由は、競合企業である韓国企業が訴訟費用などのコスト負担による合意または敗訴への懸念による投資萎縮などを狙っている可能性がある。

そのため、韓国企業も積極的な対応に乗り出している。サムスン電子の場合、米国に特許買収専門企業「インテレクチュアル・キーストン・テクノロジー(IKT)」を立ち上げた。サムスン電子とSKハイニックスは昨年、グローバル特許紛争に共同で対応すべく、包括的特許クロスライセンス契約を締結した。

政府レベルでは、公正取引委員会が無差別に特許訴訟を起こすパテントトロール(NPE)を規制する方策を年末まで立てるとの計画だ。

パク・ジョンイル記者

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