知的財産ニュース 皮膚治療機器に関する特許紛争が増加

2014年11月18日
出所: 韓国特許庁

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特許審判院は、「アレキサンドライトレーザー共振器とNd:YAGレーザー共振器を具備した皮膚治療用レーザー装置」の特許(特許第1153382号)に対して提起した特許無効審判で、アレキサンドライトレーザー共振器およびNd:YAGレーザー共振器に放電時の始動および維持電流を供給する放電電流供給部とこれを選択的につなげる選択部を具備したという点で差があると判断し、審判請求を棄却する審決を下した。

同事件の特許は、単一波長のレーザーのみを提供する従来の皮膚治療機器のデメリットを解消するため、それぞれ波長が異なるアレキサンドライトレーザーとNd:YAGレーザーを一体化し、お肌の状態によって使い分けるようにしたもので、お肌の損傷を最小限に止めると同時に安価な費用でも様々な分野に適用できるという点が認められ、2012年5月に特許登録された。

この度の件でもそれぞれ波長が異なるアレキサンドライトレーザーとNd:YAGレーザーを一体化し、選択的にコントロールできるようにしたことで安価でも複合的な治療を一斉に施すことができるという点が認められたという。

一方、レーザーは、その波長によって色素性病変、血管性病変、ピーリング、脱毛などに活用されている。

表:分野別レーザーの分類

アレキサンドライトレーザーは、主に脱毛やシミ、そばかす、くすみなどの色素性病変の治療に使われる一方、Nd:YAGレーザーは、血管性病変やお肌のはり回復に使われる。使用分野が異なるため、症状によって使い分ける必要があるが、最近は複合波長の光を放出するIPL(Intense pulsed light)という新しい概念のマルチ治療機器が普及したことで、色素性病変と血管性病変を同時に治療することができるようになった。

最近は、外見至上主義の蔓延により、美容成形外科をはじめとする眼科、皮膚科などの美容成形分野から、非美容分野である家庭医学科、産婦人科、泌尿器科までその利用範囲が広がっている。近い将来には、医者資格のない美容師や薬剤師も医療用レーザーを利用する可能性があるとみられている。

図:分野別医療用レーザーの導入時期

しかし、韓国では、技術・治験の基盤が不十分だという理由で、応用技術の開発のみに力を入れ、応用技術が求められる医療用レーザー照射器の分野のみ国産化が進められた。技術や治験の基盤が求められる眼科分野はもっぱら輸入に頼っている状況だ。

表:国内の医療用レーザーの市場規模

その結果、最近、お肌のケアに対するニーズの増加に伴って、特許紛争も激化している。これは、技術の先取りおよび主導権競争による現象だといえる。ビューティ・医療産業の育成および国民の暮らしの質の改善に向けて、国を挙げての戦略的な対応が求められている。

図:皮膚治療機器に関する特許紛争の推移グラフ

ジェトロ・ソウル事務所知的財産チーム

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