知的財産ニュース スマートグリッド、井戸の蛙に終わるのか

2014年5月27日
出所: 韓国特許庁

4613

季節は夏場が近づき、猛暑とともに、電力需給問題が懸念されている。昨年、官公役所の冷房制限や店舗の開門営業の取締まりまで行って電力消費を抑えようとしたが、期待通りの成果は挙げられなかった。電力生産と消費を最適化させるスマートグリッドが注目される理由だ。

スマートグリッドは、エネルギー管理システムやエネルギー貯蔵設備、電気自動車、電力網、家電、建設など、産業全体に及ぼす波及効果が大きいため、この分野で先行している米国や欧州、さらには後発参入国の中国も国をあげてスマートグリッドの構築に拍車をかけている。

だが、韓国は、低炭素グリーン成長の基盤構築の一環として2030年までに国レベルのスマートグリッド構築を目標に掲げ、政府と民間に27兆5000億ウォンを投資する計画を打ち立てて推進をはじめたが、思わぬ伏兵が現れた。

韓国電力の遠隔メンテナンスインフラ(AMI)構築事業に関連して通信チップの互換性と特許侵害が浮上し、4年も足踏み状態が続いている。最近になって、韓国電力とジェルラインの特許使用料の合意がなされ、スマートグリッドに向けた最初の一歩がやっと進められた。

韓国特許庁によると、同庁の政府3.0のDBを分析した結果、2007年までは緩やかな増加基調を辿っていた遠隔メンテナンスのインフラ技術の特許出願が2008年の22件から2011年には145件に大幅増えたが、2012年81件、2013年24件と、減少に転じた。これは、スマートグリッドの国によるロードマップが確定された2010年を前後に、特許権の獲得のため特許出願が積極的に行われていたところで、遠隔メンテナンスインフラの構築事業の遅れや、スマートグリッド市場の開花の遅延への懸念が出願の減少に響いたと分析されている。

一方、スマートグリッドの世界市場は、2011年289億ドルから2017年1,252億ドル規模に、年平均28%の成長が見込まれている分野だが、遠隔メンテナンスインフラ市場は、欧州と米国の4社が市場の7割を握っている。そのため、韓国企業が特許という「槍と盾」を備えていない状況で、海外市場で特許トラブルに巻き込まれれば、無防備にやられてしまうと懸念される。

さらに、LS産電がイラクで536億ウォン規模の遠隔メンテナンスインフラ事業を受注するなど、韓国企業の海外進出が増えている状況で、米国や欧州をはじめ、スマートグリッド主要国における韓国企業と研究所の特許出願の割合は、国内出願8件に1件にすぎないという。これは、韓国の企業と研究所が「自国」という狭い井戸に閉じられ、急成長する海外市場への参入準備は後回しにしてきたことを意味する。

韓国特許庁の関係者は、「遠隔メンテナンスインフラの構築事業が正常の軌道に乗ってきている。今後の韓国における特許出願の増加が見込まれている。」と述べながらも、「韓国企業が海外市場の進入障壁を突破して参入していくためには、国内で特許係争のことで計画が遅延してしまったことの二の足を踏まないように、海外での出願を増やし、トラブルに対応するための戦略確保の努力も必要だと考えられる」と述べた。

ジェトロ・ソウル事務所知的財産チーム

ジェトロ・ソウル事務所 知的財産チームは、韓国の知的財産に関する各種研究、情報の収集・分析・提供、関係者に対する助言や相談、広報啓発活動、取り締まりの支援などを行っています。各種問い合わせ、相談、訪問をご希望の方はご連絡ください。
担当者:大塚、柳(ユ)、李(イ)、半田
E-mail:kos-jetroipr@jetro.go.jp
Tel :+82-2-3210-0195