知的財産ニュース 欧米における早期特許取得手続きが簡素化

2013年3月22日
出所: 韓国特許庁

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米国・欧州特許庁と特許審査業務の連携を強化

韓国特許庁は、今年から、1.韓国から米国に特許出願した件について、見直されたPPH(特許審査ハイウェイ、Patent Prosecution Highway)を施行するほか、2.韓国から欧州特許庁に出願した件について審査書類の提出義務免除、3.韓国・オーストラリア間にPPH施行など、韓国の出願人(企業)が欧米でさらに簡単かつ迅速に特許登録ができるよう、特許庁間の合意によって関連手続きを簡素化し、審査業務連携を強化すると発表した。

1. 韓国→米国の特許出願に対しPPH2.0施行

これまで米国特許商標庁(USPTO)は、韓国との間でPPHを施行してきたが、出願人の利便性をさらに向上させるため、1月29日からPPH申請の要件と必要な書類を大幅簡素化したPPH2.0に移行することを決めた。
韓国特許庁とUSPTOは、2008年1月から両国に出願された件について、PPHルートを利用した場合には、優先審査を通じて早期に特許登録するかどうかを判断している。
しかし、PPH制度のメリットにもかかわらず、米国に出願する韓国出願人は提出すべき書類が多く、PPHの利用要件と手続きが複雑で利用に不便を強いられていた。
こうした問題を解決するため、USPTOが米韓特許庁間での合意に基づいて今年から従来のPPH制度を見直し、韓国出願人がPPHを通じて米国に優先審査を要請した場合の手続きを緩和するとともに提出すべき書類を減少する、見直されたプログラムPPH2.0を施行することとなった。

利用要件の緩和の具体的な内容

従来では、韓国で先に出願した後、同一の発明を優先権主張して米国で後に出願した場合のみPPH申請の対象だったが、
PPH2.0では、米国で先に出願し、韓国に出願した場合であっても韓国特許庁が米国特許庁より先に審査を始めた場合には、米国にPPHサービスを申請できる。
これは、先後願とは関係なく、先に審査を始めた特許庁の審査結果を相手国の特許庁が最大限活用するためだ。

準備すべき書類

従来では、韓国特許庁が特許可能性を確認した請求項と英語の翻訳文、及び翻訳文の正確性についての陳述書、韓国特許庁から受けた意見提出通知書と英語翻訳文、及び翻訳文の正確性についての陳述書、請求項の対応関係の説明表などの提出を求めていたが、PPH2.0では、意見提出通知書と英語翻訳文、請求項対応関係の説明表を除いた他の書類の提出義務を免除した。
PPHを利用して米国での早期特許取得を希望する韓国出願人(企業)には、翻訳料の負担軽減、書類の準備期間短縮など、利便性が大きく向上すると予想されている。
2012年から米韓FTAが発効し、米国で先願主義が導入されるなど、米国の知財権環境が大きく変化し、米国内における韓国企業の特許出願が増加すると予想されているなか、米国に進出する韓国企業が見直されたPPHを積極的に利用すれば、米国での特許獲得戦略に役立つと考えられる。韓国から米国に出願する特許件数は、2万7千件(2011年ベース)で日本、ドイツに続き3番目の多出願国だ。
米国特許庁にPPH2.0を申請するための詳しい手続きと要件は、下記の米国特許庁ウェブサイトにて確認できる。
http://www.uspto.gov/patents/init_events/pph/pph_kipo.jsp

2. 韓・欧州の審査協力を強化:韓国→欧州の特許出願の際、書類提出の義務の一部免除、及び共同先行技術調査を実施

欧州特許庁(European Patent Office:EPO)は、韓国に対し、4月1日から欧州特許条約規則第141条2項(EPC R141(2))を適用することを決めた。
現在は、韓国出願に基づいて欧州特許庁に優先権主張の特許出願を行う際に、韓国特許庁の審査結果のコピー※を書面で提出する必要があるが(EPC R141(1))、来月からは、同規則第141条2項の適用により、書類提出の義務が免除される。
※審査結果のコピー:a copy of the search results

こうした措置は、韓国出願人の書類提出の書類提出義務の負担を解消するため、韓国特許庁が欧州特許庁に要請したもので、昨年、ドイツのミュンヘンで開かれた韓・欧州特許庁長会談(2012.12.3)の合意のフォローアップとして行われる。
これまで、韓国の中小企業などは、韓国特許庁から審査結果のコピーを受け取り、それを再び欧州特許庁に提出していたが、こうした手続きがオンライン書類交換に変わったため、それだけの時間的、コスト的な面でメリットになる。
また、今年からは、韓・欧州両庁に共通して出願された特許について、共同先行技術調査を行う予定だ。両国に共通して出願された特許出願と該当技術分野を選定し、選定された出願について個別審査を行い、その結果を相互比較・検討する。韓国特許庁は、米国、日本、中国を含めた9ヵ国主要貿易相手国の特許庁と共同先行技術調査を推進してきており、今年は欧州特許庁と初めて推進する予定だ。欧州特許庁との取組は、両国間の特許出願の増加と両庁間の協力が積極的に行われつつある流れを反映したもので、特許庁間の審査品質に対する相互信頼を構築し、今後、審査結果を相互で認めるための基盤を作るためだ。
韓国から欧州特許庁に出願した件数は、5千7百件(2012年ベース)で、6番目の多出願国だ。

3. 韓国→オーストラリアPPH及びPCT-PPH施行

韓国特許庁は、オーストラリア特許庁と3月1日付からPPH及びPCT-PPHの施行を始めた。施行により、オーストラリアでの早期特許登録を希望する出願人は、韓国に先に出願して登録の可能性を確認した後、オーストラリア特許庁にPPHを申請することで、オーストラリアにおいてより迅速に特許登録が可能になった。
また、オーストラリア特許庁は、韓国特許庁が作成した肯定的なPCT国際調査報告書の結果に基づいたPPH申請も認めたため、PCT国際出願の手続きを通じてオーストラリアでも早期登録を希望する韓国企業に大いに役立つとみられている。
キム・ヨンミン特許庁長は、「今回の海外特許取得の手続きの見直しにより、米国や欧州などに出願する韓国企業の早期の特許取得に役立ち、韓国のグローバル知財権競争力がさらに強化されるだろう」という見方を示した。

※お問い合わせ:PPH(キム・スンオ事務官 042-481-8177)
EPOとの協力(クォン・ボラム事務官 042-481-5065)

ジェトロ・ソウル事務所知的財産チーム

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