知的財産ニュース 韓国特許庁と製薬会社の窓口「特許政策協議会」が発足

2013年3月27日
出所: 電子新聞

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韓国特許庁 製薬業界の知財権認識向上と特許中心の発展方向を模索

韓国特許庁は、製薬業界の知的財産権認識の向上と特許中心の製薬産業の在り方を模索するため、製薬業界では初めて、韓国特許庁と製薬会社、韓国製薬業界が参加する政策協議体「特許政策協議会」を3月27日(水曜日)に発足すると発表した。

最近、韓国の製薬会社は、医薬品許可・特許連携制度の導入や薬価の値下げなどにより、厳しい経営環境に直面している。特に、許可・特許連携制度の導入にともない、コピー薬の市場参入が遅れた韓国の製薬企業は、年平均約440億~920億ウォンの売上減少に、多国籍企業と韓国製薬企業間の特許係争も大きく増加すると予想されているため、韓国の製薬企業の競争力強化に向けた特許権の確保が急がれている状況だ。

しかし、ここ10年間(2003~2012)、製薬分野の国内出願において韓国人の出願が占める割合は39.1%で、国内出願全体で韓国人が占める割合76.6%より低く、国内の登録件数上位10社の国内外の製薬企業の保有特許件数だけを比較しても、韓国製薬企業の登録件数は1,204件で、多国籍製薬企業の登録件数3036件の39.6%にすぎず、2020年世界7大製薬大国入りを実現するためには、韓国製薬企業の知的財産権の認識向上と特許競争力の強化が切実に求められている。

韓国特許庁は、昨年の1年間、厳しい状況におかれている韓国製薬会社を支援するため、医薬品の許可・特許連携制度の運営TFチーム(食薬庁運営)に参加し、医薬品特許登載の業務、関連法律の見直し・改正及び医薬品特許関連訴訟の支援などに積極的に取り組み、新薬に関する国内外の特許係争資料を分析・提供することで、韓国の製薬会社が無駄な特許紛争に巻き込まれることなく、特許紛争に適切な対応戦略が確立できるように支援するための案を設けてきた。また、医薬分野の審査実務ガイドの全面的な見直し、特許権存続期間延長制度の見直しの推進など、知財権とR&D連携強化に向けた知財権中心の技術獲得戦略事業の持続的な推進といった韓国製薬企業の特許競争力の強化に向けた取り組みを行ってきた。

また、昨年11月28日には、製薬業界の懸案を議論して韓国製薬会社の支援案を模索するため、韓国特許庁長と韓国製薬協会長、37社の製薬企業のCEOと研究所長など66人が参加して懇談会を開き、製薬企業が厳しい環境に置かれているという認識を共有し、その克服策を議論したほか、その対策として韓国特許庁-製薬企業間では初の政策協議体「特許政策協議会」を発足した。

「特許政策協議会」の構成は、ハンミ薬品のイ・クァンスン社長を委員長に、韓国特許庁化学生命工学審査局長及び柳韓洋行、鍾根堂、ハンオルバイオファーマー、ジョア製薬などの主な製薬会社の重役10人で構成し、韓国製薬協議会の特別委員会の形で運営される。また、これとは別途に「実務協議会」では、韓国特許庁薬品科学審査課長とボリョン製薬、ドンア製薬、緑十字、イルドン製薬、JWジュンウェ製薬などの大手製薬企業の特許チーム長などが参加する特許実務委員会で構成される。

「特許施策協議会」は、特許観点での製薬分野の懸案を議論し、国内製薬企業の特許競争力の強化及び特許紛争の対応に実質的に役立つ、韓国特許庁の支援政策の在り方を提示する役割を果たす。「実務協議会」は、提示された政策方向について実務者で議論し、具体的な方策を導き出す役割を担う。韓国特許庁と製薬業界及び製薬企業間の協力強化に向けた情報共有案も議論される予定だ。

韓国特許庁化学生命工学審査局のホン・ジョンピョ局長は、「今回発足する特許政策協議会は、製薬業界の懸案を特許庁と製薬企業が共に議論し、特許庁の支援案を導き出す特許庁・製薬企業間では初めての製薬協議会であるだけに、韓国製薬企業が特許を中心とした競争力強化に実質的かつ具体的に支援できると期待している。また、韓国特許庁は、許可・特許連携制度にともなう特許係争の対応支援策も具体的に設ける計画であり、製薬企業の知財-R&D戦略の確立も積極的に支援する考えだ」と述べた。

韓国特許庁と製薬企業が「特許政策協議会」という名前で、初めて窓口を設けただけに、きめ細かな相互協力と真剣な議論を通じて、厳しい環境にある韓国の製薬企業を支援できる政策方向を確立し、2020年世界7大製薬大国入りするうえで一つの礎になることを期待する。

製薬分野特許政策協議会構成および役割

特許政策協議会

構成

所属

名前/肩書

部署

委員長

韓米薬品

イ・グァンスン社長

-

副委員長

ハンオールバイオパーマ

キム・ソンウク代表理事

-

委員

韓国特許庁

ホン・チョンピョ
化学生命工学審査局長

-

委員

韓国製薬協会

カル・ウォンイル専務

-

委員

柳韓洋行

サ・チョルギ常務理事

開発室

委員

鐘根堂

ナ・ソンボム理事

対外協力部

委員

韓国ユナイテッド製薬

チョン・ウォンテ専務理事

グローバル新薬開発本部

委員

ジョア製薬

イム・ギョンムク理事

開発部

委員

韓国コルマー

キム・ジンヨン専務理事

製薬開発本部長

委員

クラクソスミスクライン

キム・ジョンウク常務

法務チーム

共同幹事

韓米薬品

ファン・ユシク理事

特許チーム

共同幹事

韓国特許庁

キム・ヒス課長

薬品化学審査課

役割

  • 特許観点での製薬分野懸案議論
  • 韓国特許庁の協力案議論および政策方向提示
  • 相互協力強化策議論

運営策

  • 韓国製薬協会所属特別委員会で運営
  • 特許政策協議会傘下に政策協議会で提示された政策方向に対する具体的議論のための実務協議会設置
  • 特許政策協議会は年2回会議所集
  • 実務協議会は年2回招集を原則でして、必要時追加招集可能

実務協議会

構成

所属

名前/肩書

部署

共同会長

保寧製薬

キム・グァンボム部長※

特許チーム

共同会長

韓国特許庁

キム・ヒス課長

薬品化学審査課

会員

東亜製薬

パク・インス部長

開発支援チーム

会員

緑十字

キム・ジウォン次長

開発チーム

会員

柳韓洋行

パク・ヘジン チーム長

法務チーム

会員

一同製薬

チュ・ジェグォン部長

特許チーム

会員

JWジュウェ製薬

チェ・ソンピル次長

PD本部IPチーム

会員

韓米薬品

キム・ユンホ チーム長

特許チーム

会員

鐘根堂

キム・リン主(州、株)部長

開発チーム

会員

あるオールバイオパーマ

イ・スンホ次長

特許チーム

会員

新風製薬

イ・ジェヨン課長

開発部

会員

テジュン製薬

イ・ヒジャ部長

R&D本部

会員

三遷当剤薬

ソン・イルチョル次長

開発チーム

会員

韓国コルマー

金星根チーム長

開発本部特許チーム

会員

韓国製薬協会

チャ・テソン部長

医薬品政策チーム

会員

韓国製薬協会

ヤン・ユギョン課長

医薬品政策チーム

幹事

特許庁

キム・ポムス事務官

薬品化学審査課

※製薬分野特許技術協議会(仮称20特約会20)会長

役割

  • 製薬分野懸案に対する実務者級議論
  • 提示された政策方向に対する実務者級議論および政策導き出し
  • 相互情報共有策議論

特許政策協議会および実務協議会構成体系

韓国の製薬業界の現状と韓国特許庁の支援政策

1.韓国の製薬企業が置かれている環境

中小企業水準の企業規模で投資能力の不足及び低い収益性

韓国上場製薬会社の営業利益率およびR&D投資額率はグローバル製薬会社の半分水準

  • 営業利益率
    韓国上場企業vs. グローバル企業、10.0% vs. 20.7%
  • R&D投資額率
    韓国上場企業vs. グローバル企業、9.1% vs. 16.8%

保険薬の価格引き下げ策施行により、製薬業界の売上額が減少

オリジナル医薬品の特許満了後、コピー薬市場に進入する時に保険薬の価格引き下げ(対象:2012年 1月施行後に登載された医薬品)

  • オリジナルとコピー薬の最初価格の53.6%を引き下げ
  • ただ、施行後1年間、オリジナルは最初価格の70%、コピー薬は59.5%引き下げ

医薬品許可・特許連係制度の導入にともなう売上額の減少

コピー薬の市場進入の遅れにともなう韓国製薬会社の売り上げ減少は、年平均約440~920億ウォン程度と予想

  • 多国籍製薬会社と韓国製薬会社間における特許の満了していない医薬品の特許紛争の割合は、制度導入前の約27%から約40%程度で増加するとの見込み(韓米FTA後の続対策としての製薬産業競争力強化策、保健福祉部、2007年 6月)

2. 製薬分野における知的財産権の現況

国内外における特許出願の現況

製薬分野の出願において韓国人が占める割合は39.1%で、国内出願の全体における韓国人の割合76.6%と比較すると、その水準が非常に低く、コア・基盤特許の大半を外国人が獲得

  • 最近10年間(2003~2012)、製薬分野における韓国人の出願の中で、韓国人出願が占める割合は39.1%に過ぎない(2013年の化学生命工学分野における産業部門別mini白書、韓国特許庁)
  • 製薬分野の合計45,477件のうち、韓国人の出願は17,775件、外国人の出願が27,702件
  • 韓国人の出願17,775件のうち、天然物関連の出願件数は7,739件で43.6%

    図:製薬分野の年度別出願件数グラフ
    ※最近10年間(2003~2012)の国内出願全体において韓国人の出願が占める割合は、76.6% (2004~2012知識財産白書、知識財産主要統計2013. 2月号、韓国特許庁)

  • 1987年以後、コア・基盤特許に該当する特許権存続期間の延長登録出願302件のうち、89%が外国人による出願

20年間、韓国10大製薬企業の主要国に登録した特許件数は1,699件で、グローバル10大製薬企業の34,600件の4.9%水準
※企業別の米国、日本、ヨーロッパ、WIPO特許件数を分析した結果(1991. 1月~2011. 3月)

韓国製薬会社の特許専門担当チームの規模

韓国の10大製薬会社の2012年度特許専門担当人材は、5~9人※で、2007年度に(3~4人)比べて2倍程度増加したが、多国籍製薬会社※※よりは、大変少ない水準
※弁理士は1~3人、重役(理事)は1人のみ
※※(多国籍製薬会社の弁理士数)ファイザー:79人、メルク:61人、イーライリリー:50人

3. 韓国製薬業界のビジョン

厳しい環境の中でもR&D投資を通じて新薬開発を加速化

R&D投資拡大を通じた持続的な新薬および改良新薬の開発で、世界10番目の新薬開発国家として跳躍を果たした

  • 上場企業の売上額におけるR&D投資は、2006年5.3%から2011年9.1%に増加
  • 計19種類の新薬※を開発
    ※チェミグロ錠、ペクティブ錠(以上LG生命科学)、シュペクトカプセル(一洋薬品)、カナブ錠(保寧製薬)等

韓国政府(保健福祉部)が製薬産業発展に向けた策を施行

2020年まで世界7大製薬大国入りを果たす

  • 生産および輸出目標
    10兆ウォンのR&D投資(現在、1兆ウォン)、輸出額目標47兆ウォン(現在、1.9兆ウォン)、世界市場シェア率4.5%(現在1.5%)

グローバルジェネリック企業、専門製薬企業、グローバルメジャー企業など、企業の類型に合わせた形で支援

許可-特許連係制度に対応

許可-特許連係制度の導入にともなう企業類型別に合わせた特許紛争対応戦略の確立が必要
FTAにともなう知識財産権強化のために革新的な新薬、改良新薬、バイオジェネリックなど中核特許を保有するための研究開発戦略が必要

4. 製薬産業育成のための韓国特許庁の支援政策

強い特許創出を支援するため、迅速かつ高品質の審査・審判サービスを提供

2015年度まで審査処理期間を10ヶ月に短縮
無効にならない強い特許創出のための、審査品質の向上努力を強化

製薬企業群別のオーダーメード型知識財産権戦略の確立を支援

1st TRACK(グローバルメジャー・専門製薬企業)

  • R&D初期段階から強力な知的財産権ポートフォリオ構築を支援
    知的財産権中心の技術獲得戦略、政府R&D特許動向の調査など

2nd TRACK(グローバルジェネリック企業)

  • 多国籍製薬会社の特許戦略克服および特許挑戦を支援
    企業別の特許紛争オーダーメード型コンサルタント、国際特許紛争事例のDBを提供

医薬品許可-特許連係制度の早期定着を支援

市販防止措置(協定文(b)項)関連の立法案作りに積極的に参加

  • 許可自動遅延期間、市販防止争訟の種類、1stジェネリック独占権者の選定など、市販防止措置関連の立法案作りに積極的に参加

特許紛争の迅速な処理

  • 許可-特許連係制度関連の無効審判、権利範囲確認の審判請求時に迅速・優先審判の対象にし、特許紛争の長期化によるジェネリック医薬品の市場進入遅れを防止

国際特許紛争の対応戦略確立を支援

  • 海外の許可-特許連係制度にともなう特許障壁の解決に向けた特許紛争オーダーメード型コンサルタント、国際訴訟保険支援および国際特許紛争事例のDBを提供

※医薬品許可・特許連係制度

ジェネリック医薬品が許可申請された場合、

  1. 許可申請事実を特許権者に通知し(2012. 3. 15. 施行)
  2. 特許権者が同ジェネリック医薬品が自分の特許を侵害しているのかどうかの判断を受ける手続きを用意(2015. 3. 15. 施行)

5. 製薬分野の審査基準先進化への取り組み

医薬・化粧品分野における審査実務ガイドを全面的に見直し(2012. 1月)

  • 不明確な記載の修正、重複した記載の削除および技術関連性が高い医薬分野と化粧品分野を統合
  • 最近、特許法改正事項および審判決例を反映して、出願人を配慮した見直しを実行
  • 産業の部分別審査基準の法的拘束力が弱く、審査指針書より法的地位が低いことを踏まえ、名称を審査実務ガイドに変更

医薬用途発明の審査基準改正を検討

国内外の医薬用途発明審査基準の比較検討および国内外の製薬企業の意見聴取過程、韓国製薬産業に及ぼす影響をきめ細かく分析し、改正の有無を決定する予定

特許権存続期間延長登録出願制度の見直し

  • 医薬品特許権存続期間の延長制度
    薬事法など他の法律により、許可などを受けなければ、特許発明が実施できない医薬品農薬の発明などに対し、許可などに必要とされた期間だけ (5年以内)特許権存続期間を延長する制度
  • 協議体の審査を通じた審査の一貫性を確保(2011. 11月施行)
  • 医薬品農薬の許可登録を主に担当する部署(食品医薬品安全庁、農村振興庁および農林水産検疫検事本部)の協力を得て、延長期間の算定により、正確性が向上(2011. 10月施行)
  • 現行の審査実務を反映した関連法の見直しを予定(2013年)

※改正予定法案主要内容

  • 特許権存続期間の延長回数を1回に制限
    韓国特許庁告示の規定を上位法の特許法に明確に規定
  • 特許権存続期間延長対象の発明を「新物質医薬品/農薬」に規定
    韓国特許庁告示の規定を上位法の特許法施行令に明確に規定
    「新物質(薬効を現わす活性部分の新しい化学構造の物質)を有効性分として製造した医薬品であり、最初に品目許可を受けた医薬品」

ジェトロ・ソウル事務所知的財産チーム

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