知的財産ニュース 大学の成果中心の特許出願 改善が急がれ

2013年7月4日
出所: 電子新聞

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大学が提出された特許について検証を行わず、そのまま特許として出願していることが分かった。品質の低い特許が多くなる理由だとの批判が出ており、成果中心の出願から脱し、良質の特許を確保するための対策を求める声が高まっている。

主要大学によれば、特許事業化を担当する「技術移転専門担当組織(TLO)」は、教授から提出された発明申告書の大半を、きちんとした検証を行わず、そのまま出願しているという。 発明申告書とは、特許出願に先立って教授が提出する事前の特許申込書のようなものだ。

韓国特許庁によると、この10年間(2002年~2012年)、特許多出願の順位は、KAIST(9029件)、延世大学(4164件)、高麗大学(4007件)となっている。 主要大学のTLOが先行技術調査などを行い、補完の要請などを理由に断るのは10%も満たしていないことが確認された。 教授によって発明がなされれば、大半が特許として出願されるという意味だ。

KAISTは、年間約1000件の特許を出願し、韓国の大学では最も多くの特許を出願している。昨年までは、教授発明申告書が提出されれば、ほぼ100%が出願となった。今年3月、特許出願審査を強化したため、権利範囲の補完などを理由とした出願拒絶件数が何件かあったが、出願率は、依然として90%を上回っている。 特許出願が多い他の大学も約95%の出願率を示している。 KAISTのTLO関係者は、「出願が多いとして、それが競争力のある特許を確保しているとは限らない。特許価値を質的に評価できるシステムが構築されていない状況だ」と説明した。

特許の出願が積極的に行われることは望ましいが、特許性のない特許も急増しているとことが問題だとして指摘されている。昨年の国政監査の結果、大学が登録した特許のなかで休眠状態となっているのは約70%である。 KAISTが保有している特許の65.6%が休眠特許だ。

こうした分別のない特許出願が特許無効化の高止まりの原因だと指摘する向きもある。あるIPサービス会社の代表は、「出願された特許件数そのものは多いが、技術移転など、利用価値が高い特許は見当たらないのが現状だ。特許紛争が発生すれば、権利が消滅することができるため、技術事業化のネックとなっている」と説明した。

このように、大学が特許の量的増加に力を入れている理由は、特許出願件数が教授の業績や研究成果評価項目になっているためという。教授としては、実績を認められるため、技術の内容よりは、多数の特許出願を獲得しなければならないという圧迫を感じている。 ある大学の関係者は、「国家研究開発(R&D)事業課題を遂行する時、特に特許出願が急増する傾向がある。ところが、その理由や背景が理解できないわけでもないため、特許出願を簡単に断ることもできない」と語った。利用価値の高い特許を分別するシステムの不在も問題として指摘される。

海外の大学では、量的出願よりも特許の品質確保に重点を置いている。東京大学のTLOである「東大TLO」では、提出された発明申告書の半分の出願を断っている。東大TLOの山本貴史代表は、「TLO分析の結果、市場性や特許性がなければ、国のR&D事業課題となっている発明でも断る場合がある。価値のない特許出願を容認してしまえば、低品質の特許が後を絶たないだろう」と話した。ある技術移転の専門家は、「米国のMITの場合も、発明申告書の受付件数に比べた特許出願の割合が韓国よりはるかに低い。韓国の大学では、特許出願の拒絶事例をあげるほうが難しい」と語った。

韓国大学の特許出願の現況(単位:件)

年度

2008

2009

2010

2011

2012

特許件数

8,413

9,760

10,667

11,581

12,233

クォン・ドンジュン記者

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